稽古なる人生

人生は稽古、そのひとり言的な空間

No.72(昭和62年6月21日)

2019年10月06日 | 長井長正範士の遺文


胸をおどらせる。胸をこがす。胸を借って。胸算用。肩をもつ。肩で風をきる。
肩入れ。肩を並べる。背をむける。背に腹は変えられぬ。腕前。腕がなる。腕によりをかける。
腕をふるう。腕をこまねく。手腕。手を貸す。手ごわい。奥の手。その手に乗るな。
手を加える。手にあまる。手をやく。秘密を握る。爪をとぐ。爪に火をともす。
爪の垢を飲ませたい。爪をかくす。指をくわえて見る。肘鉄砲。腹太い。腹黒い(悪い)。
腹を合わせる。腹が立つ。腹をさぐる。腹にいちもつ。腹の虫が納まらぬ。腹を割って話そう。
へそ曲がり。へそくり。へそで茶を沸かす。本腰。腰が低い。腰を入れる。腰を据える。
腰くだけ。腰が軽い(重い)。尻が軽い(重い)。尻が長い。尻にしく。尻ぬぐい。
尻の穴が小さい。膝詰め談判。脛に傷もつ。親の脛かじり。足が出る。足を洗う。足をとられる。
足並みそろえる。等々挙げて見ると澤山あることに気ずく。

又内臓についても、一層精神的な会話にその名前をつかった。
例えば、脳裏にひらめく。肺腑をえぐる。肝に銘ず。肝が太い。肝をつぶす。肝を冷やす。
肝いり。肝胆相照らす。心臓弱い(強い)。脈がある。血気盛ん。血が通う。
血を血で洗う。血をわける。息が合う。息き詰る。息ぬき。息巻く。断腸の思い。
等々がある。次に武士の刀剣類も生活用語に今もとけこんでいる。即ち鍔ぜり合い。
目ぬき通り。せっぱつまる。鎬をけずる。刃が立たぬ。鞘あて。鉾先をむける(かえる)。
真剣になる。槍玉にあげる等。

○ユーモア感覚と国民性について。
1)フランス人は冗談を半分も聞かずに笑う。
2)イギリス人は最後まで聞いてから笑う。
3)ドイツ人は一晩考えてから笑う。
4)日本人はにこにこ笑っているが全然わかっていない。
5)アメリカ人は決して笑わない。
なぜなら、大抵の冗句は既に知っているからだそうである。
然しこのような憎い冗句を作るのはアメリカ人だそうだ。

でもこの中でイギリス人のユーモアは仲々味があって面白いのが多い。
さすがゼントルマン紳士の国と自認するお国柄である。
いつかサンケイ抄に書いてあったが、その1~2を拾ってみると。

イギリスの議会で、ある独眼の大臣が「世界見渡せば云々」と演説を始めた途端に、
野党議員の中から、すかさず「片眼で何が見える?」というやじが飛んだ。
するとその大臣は落着いて「一目瞭然」と答えたので、議場はどっと沸き、
やがて万雷の拍手が起こったという。

これが日本の議会だったらどうであろう。差別用語も甚だしいではないか。
チャールズ皇太子が日本へこられた時もユーモアのセンスを巧みに発揮された。
又、議会で獣医を開業する国会議員が、演説中、反対派の議席から「獣医」とヤジが飛んだ。
それを受けた議員、やおらヤジの席を向いてやさしくほほえみ乍ら
「あなたも診察いたしましょうか」と切返したそうだ。

駅のトイレの落書きにも冗句が光るそうだ。
「もし君がこれを読んでいるなら、君は正しい方向に向いていない。
初心者よ!両手でもってせよ!清掃係より」
「小便するところに、なぜたばこを捨てるのか。
湿って火がつきにくいではないか!貧乏人より」。

前駐日英大使、サーヒュー・コータッチのご指摘じゃないが、
どうも日本では、むやみと悲壮がったり、深刻ぶったりする論調があふれている。
善くも悪くも“マジメ過剰”のあらわれ、これでは川柳、狂歌のもつ輝かしい伝統が泣くだろう。
最近の新聞投稿欄からのを一つ。「数年前、奥さんを亡くしたA君からの法要の案内が来た。
「亡妻○年忌」とある。近頃うわさがあって、その心境は分かるんですがね。
ユーモアは日本では悲しみ?の戯画だと。

続く
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