”珠壓腰衱穏稱身”と杜甫が三月三日の上巳節の行事を歌っています。それくらい、華やかに着飾った若者たち、特に、女性たちのための初春の行事なのです。
しかし、此の「麗人行」を杜甫が歌った「大宝十三年の上巳節」は、例年にまして、特別に、豪華でしかも豪壮な行事になっていたのです。それがいかに壮大であったかを言い表すために杜甫が工夫した書き出しなのです。その書き出しの歌を、もう一度、書いてみます。この日、長安の曲江畔で繰り広げられた上巳節の場に居合わせたはでやかな乙女たちの出で立ち姿形を歌っています。
態濃意遠淑且真
肌理細膩骨肉勻
繍羅衣裳照暮春
蹙金孔雀銀麒麟
態は 濃く 意は 遠くして 淑 且(かつ) 真に,
肌理(きり)は 細膩(さい ぢ) にして 骨肉は 勻(ひと)し。
繍羅(しう ら )の衣裳は 暮春に 照(はゆ)る,
蹙金(しゅくきん)の孔雀 (く じゃく) 銀の麒麟( き りん)。
と。初春の、なんて あでやかな乙女達の出で立ち姿でしょうか。杜甫ならではの書きっぷりですね。私は、これ等、詩人の豊富な言葉の多様性に感心して、次ヘ読み進めて行くのが惜しいような気分に、何時も不思議なのですが、何か魔法の力にさいなまれる様な気分にさえ、させられます。
さて、それはそれとしてですが、しかし、同じ所に何時までも留まっているわけにはまいりません。次に進みます。
此処まで杜甫は、「8句52字」で、その場の雰囲気を十二分に表現しています。文章の構造から言うと、この52字が「承」です。ちなみに、「起」は
“三月三日天気新 長安水辺多麗人”
です。
此処で、杜甫は、此のあでやかな乙女たちの居る「場」である「承」を、突如として、次なる「場」へ大転換させて、「転」としております。此の「承」と「転」を繋ぐ言葉として使ったのが、「就中」の2字です。・・・・・・・・
どう読んだらいいでしょうか???<ナカンズク> その意味は「その中でも。とりわけ。ことに。」と、辞書にはあります。でも、これを、私の持っている本では、「就ゝ中<ナカニアリテ>」とわざわざ「レ点」を付して読ましております。どちらに軍杯かというと、私は<ナカンズク>でなく、<ナカニアリテ>と呼んだ方が、日本人の語感として和語的な感じがして、その場によりぴったしの読み方ではと思うのですが。あなたならどうでしょうか????