「兵車行」の結末です。
”武皇開辺意未巳” 皇帝は、人々の苦しみ嘆きなどは無視するようにして辺地の防衛のために国民を駆り立てて派遣しています。その地が如何なる状況に陥っていることも知らないで。「皆さんもご存知ですか。いま東の国境で起きている状況を。」と、詩形を、インパクトのある「六言」に、敢て、変え、改めて、この詩の読者に問いかけております。「転」の書き出しの”君不聞”に対して、「結」の部分での”君不見”に連動させております。それだけ杜甫のこの詩を構成する上での技巧を十分に窺がい知ることができるのです。それがー
”君不見青海頭” <君見ずや青海 の ほとり>
です。
ここにある「青海」とは、当時の「吐蕃」の地のことです。チベット族(騎馬民族)で、馬を戦術にした戦いを進めており、歩兵を主たる戦術にしていた唐の軍事力(兵力)より強靭な戦力を持つ戦略を繰り広げており、しばしば、唐軍の惨敗に終わることが多かったののと言い伝えられております。そのための融和策として、先にあげた「王昭君」の故事もあったのです。その時の辺地での戦いに結果の状況を詩人は哀しくも憐れみをもって次のように歌い上げます。
古来白骨無人收 <古来、白骨 人の収むる無きを>
新鬼煩冤旧鬼哭 <新鬼は 煩冤<ハンエン>し 旧鬼は 哭す>
天陰雨湿声啾啾 <天くもり 雨しめり 声 は啾啾<シュウシュウ>