私の町吉備津

岡山市吉備津に住んでいます。何にやかにやと・・・

綿津見神は曰う。

2019-02-17 09:35:53 | 日記
        “淤煩鉤、須須鉤、貧鉤、宇流鉤、”

 と、言いながら鯛の喉<ノミト>から取りだした鉤を火照命<ホデリノミコト>に渡しなさいと誨<オシ>えます。
 「淤煩鉤<オボチ>、須須鉤<ススヂ>、貧鉤<マヂチ>、宇流鉤<ウルヂ>」???
 と。
 「淤煩<オボ>」は、辞書によると「おほぼし」で「はっきりしない。心が晴れない。ゆううつ」でとあります。これを、宣長は「鬱悒<オホホシク>」で「愁思ふことの有て、心の晴れぬ意」だと説明しております。
 また、「須須<スス>」は、「須佐<スサ>」で「すさび」で、「心が進み落ち着かなくて荒ぶる」ことだと。
 「貧」は<マヂ>で、<マズシ>がつまって出来たもので、貧しいと言う意味で、
 「宇流<ウル>」は「うろたえる。うろうろする。」だと。

 なお、この綿津見神から火遠理命に鉤を火照命に渡す時に言いなさいと誨えられた言葉が、書紀には、「1書に曰はく」として「陰(ひそか)にこの鉤を呼びて貧鉤と曰ひて、然る後に与えたまへ。」など4通りの違った授け方が書かれております。念のために・・・・

“誨”って云う字は??????

2019-02-16 09:25:41 | 日記
 古事記を読んでおると、しばしば、「これ何と云う字??」と、天国のちょうちょうさんに尋ねなくてはならないような漢字に出くわします。今日もそんな字にお目にかかります。

                「誨」

 です。辞書によりますと(おしえる)と読むのだそうです。ここにある「毎」は、また、「くらい」と云う意味があるとも書いてあり、物事の道理に暗い人に言葉でおしえるの意味を表す漢字なのだそうです。
 「なるほどとなあ。」と。朝から感嘆しきりです!!!!!!!!!
 
 さて、その字は、綿津見神が鯛の喉に引っ掛かっていた鉤を取り出して、火遠理命に渡す時に、

         “大神誨曰之<オオミカミ オシエ マツリケラク>”

 とあります。「おしえ」たのです。
         
         “以此鉤。給其兄時<コノハリヲ ソノイロセニ タマハムトキニ”

 とです。「この鉤を貴方様の兄上に差しだす時にはいいですか・・・・」
 
 
 ここでも、また、漢字の妙が伺われます。それは「賜」でなく「給」の字を使っていることです。宣長は、この「給」について、

 「給其兄、こは火遠理ノ命を尊崇<タフト>み、又火照ノ命を賤<イマシ>め悪<ニク>みて、御兄なれども、給<タマ>ふと云うなり。」

 と書いてあります。余程、細かく注意していないと、「給」の字までに留意しながら、そこまでは詳しく読むことは出来ないと思いながら、又。また。又。この本の偉大さというか、太安万侶の偉大さを考えながら読んでおりますが、どうでしょうか?????

いきさつを語る火遠理命です

2019-02-15 09:49:05 | 日記
 「私は兄海彦から借りた釣り針をなくしてしまったのです。」と、父神に海の宮殿に来たいきさつを備(つぶさ)に語る山彦です。
 その話を聞いていた海神は、この情報は早くから塩椎神から聞いていたのでしょうが

    “悉招集海之大小魚問曰<コトゴトニ ハタノヒロモノ ハタノサモノ ヲ ヨビアツメテ>”

 「海にいる大<ヒロモノ>小<サモノ>の総ての魚を集めたのです。」常識的に考えるとそんなことがいっぺんに出来る筈はありません。事前に、何らかの方法で、総ての魚い伝えていたのだろうと考えられます。だから、何の混乱も起きずに集めることができたのです。その大群の魚を前にして海神は尋ねます。

         “若有取此鉤魚乎<モシ コノツリバリヲ トレル ウヲ アリヤ>”

 と。すると、どうでしょう。“諸魚曰之<モロモロノウヲドモ モウサク>” 沢山の魚が一斉に、
 「この頃、“赤海鯽魚<タヒ>(鯛)”の喉(のど)に鯁(こう=魚の骨)が刺さって何も食べれないと大層嘆いております。」
 と言います。そこで、早速に、鯛の喉を探してみたらあります。それを取り出してきれいに洗って火遠理命に渡しました。それを古事記では

        “於是探赤鯽魚之喉者。有鉤。即取出而清洗”

 と記しております

“我女之語”と大神は・・・

2019-02-14 09:16:21 | 日記
 <アガムスメノカタル>ことを聞いた綿津見神は、早速、“聟夫<ムコノキミ>”火遠理命に問いただします。

    “今夜為大歎<コヨヒオオキナルナゲキシタマヒツトモウセリ>。若有由哉<モシユエアリヤ>”

 「今夜の深いため息は、なんぞわけでもございますのか?」
 と。
 今まで、此処に来られて三年間もたつのですが、その理由も何も聞いてありません。それも、大変、不思議がられておいでになられていたのでしょうか。それらはすべて可愛い娘のためにでしょうか、今までの疑問も合わせて、この際とお思いになられたのでしょうか

       “亦到此間之由奈何<マタ ココキマセル ユエハ イカニゾト トイマツリキ>”

 です。
 それまで、「あなたは何故??」と、その理由など何も聞かなかったのに、今となって、どうしてだろうかと思いますが、どう思われますか??????
 父親の愛娘を思うが故に、もし、その原因を聞きただすことによって、それが、毎日毎日、このように楽しく過ごしていた二人を、敢て、引き裂く原因になるのではないかとお考えになられてからではないでしょうか。それ故、娘から、その夫のことについて聞いてほしいと云って来られたのを機に、「是ぞ、絶好のチャンス」とばかりに、今まで胸に秘めていた疑問を“聟夫<ムコノキミ>”にお尋ねになられたのです。

 

余りにも大きい溜め息に・・・

2019-02-13 09:00:45 | 日記
 三年もの間、かって聞いたことのない大きな溜め息です。それを聞いた豊玉姫は驚いて、早速に父親に
 
       “三年雖住。恒無歎<ミトセ スミタマヘドモ ツネハ ナゲカスコトモ ナカリシニ>” 

 「今までに聞いたことのないような今夜の夫である火遠理命の“大一歎<オオキナル ヒトツノ ナゲキ>”は、
  
       “若有何由故<モシ ナニノユエアルカト>”

 その理由は何でしょうかね???」と尋ねます。

 ここで、またま又、一寸待ってと言いたいのですが??

 どうして豊玉毘売は夫である命に、直接に、尋ねないで、父親に尋ねてもらったのでしょうかね????
 
 今までには聞いたことんない夫の余りにも大きすぎる歎きの声が、突然に、一つだけ、辺り一面に轟きます。それを耳にした毘売は、甚く、心配され自分では、どうしても恐ろしくてその原因を問いただせなく、いたしかたなく、父親から尋ねてもらうのがよいとお考えになられたのでしょうか。
 大層な心配事で、自らは怖くて、決して、聞き出せないような切羽詰まった純真な乙女心を「若有何由故」の五文字は言い表わしているのではないでしょうか???
 そんなことまでもが頭をよぎるような書きぶりに、今日も又、感心して読んでいます。
 
「そげえな よみかたー しょうるけえ いつまでたっても おわらんのじゃあ ねえけえのう」
 
 と、お叱りは当然だと思いますが・・・・????