サンタクロースが今にも目の前を通り過ぎていきそうな夜。行きかう人は何かを忘れているかのような錯覚をして、この年が無事に過ごしてきた事を感じる。
準は、小さな白いショートケーキを買った。
亜矢子とクリスマスを祝う為だ。時間通りに彼女はやってくる。歯医者が終るのが8時で、心の準備をする時間はタップリあった。
今日こそは、亜矢子に告白をすると準は密かに思っていた。
BARのドアが開くチリンチリンという音が鳴った。まさしく時間ぴったりだ。
「いらっしゃいませ。」
「外寒いわね。雪が降ってたよ。」ドアの隙間から、外の冷たい風が店内に入ってきた。亜矢子がコートの雪を掃っていた。
「今夜は、ホワイトクリスマスですね。」
「本当。カップルには最高の夜だわね。」亜矢子がコートをハンガーにかけて、嫌みを込めた口調で言った。コートの下のピンクのセーターが目についた。背が高い亜矢子は着こなしていた。その後に大きな目が沈んでいた。
「そうだ。私この日のためにケーキを用意してましたよ。」準は、ショートケーキを小皿に入れ、カウンターの亜矢子の目の前に置いた。
「わぁ。すごーい。うれしいわ。マスター気がきくわね。」さっきまで沈んでいた大きな目がシャンパンの様に輝いていた。
「ありがとうございます。」
「マスターこうなったら本格的にしましょうよ。ロウソクあります?」
「そういえば、さっき店で買ったときについてました。」準は、ロウソクを箱から取り出した。亜矢子が二本取って、ショートケーキに突き刺して火をつけた。
「マスター電気を消して。」準が電気を消すと、ケーキの周りがボンヤリとユラユラと淡い炎が揺れていた。亜矢子がその炎を見つめている。
準は亜矢子の顔も輝いて見えたので、最高のクリスマスプレゼントだと思って神様に感謝した。
準と亜矢子は、一時の間、何も会話せずにロウソクの炎だけを見つめていた。 この時間が一生で一番大切な時間のような気がした。
一時眺めると、亜矢子が呟いた。
「ロウソクに願い事を言うと叶うんだって。消えた炎が神様の所に持っていってくれるんじゃないかしら。」
「そうなんですか。」
「私は何を願おうかな。マスターは何を願う。」準は、ものすごく考えた。今が告白のチャンスだと思い、勢いで言った。
「亜矢子さんとこうやってずっと一緒にいられたらいいなと願います。」準は、心の奥底でずっと想っていた事をすんなりと言った。
丁度その時、窓の隙間から冷たい風が吹いてきて、ロウソクの炎が消えた。真っ暗になった空間。
「マスターがそんな風に思っていたなんて知らなかった。」亜矢子は戸惑っていた。
「ごめん。」
「いや。謝らないで。私すごくうれしい。私もこうやって静かなBARでマスターと一緒にいられたら幸せだろうなと思うわ。」
「それって。」準が聞き返すと、ドアが開いて、若いカップルが入って来た。準は電気を点けると「いらっしゃいませ。」と言った。
カップルをテーブルの席に案内すると、亜矢子は店を出て行った。
ドア越しに白い雪がふわふわと降っていた。その中を亜矢子はうつむいていた。
まるで亜矢子が降らしているかのような雪に、準はただボンヤリと眺める事しか出来なかった。
そんな白い季節が終わると、温かい恋の季節へと変わって行くのだった。
準がワイングラスを拭いていると、制服姿のよりこがバッグを持ってドアを開けた。
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準は、小さな白いショートケーキを買った。
亜矢子とクリスマスを祝う為だ。時間通りに彼女はやってくる。歯医者が終るのが8時で、心の準備をする時間はタップリあった。
今日こそは、亜矢子に告白をすると準は密かに思っていた。
BARのドアが開くチリンチリンという音が鳴った。まさしく時間ぴったりだ。
「いらっしゃいませ。」
「外寒いわね。雪が降ってたよ。」ドアの隙間から、外の冷たい風が店内に入ってきた。亜矢子がコートの雪を掃っていた。
「今夜は、ホワイトクリスマスですね。」
「本当。カップルには最高の夜だわね。」亜矢子がコートをハンガーにかけて、嫌みを込めた口調で言った。コートの下のピンクのセーターが目についた。背が高い亜矢子は着こなしていた。その後に大きな目が沈んでいた。
「そうだ。私この日のためにケーキを用意してましたよ。」準は、ショートケーキを小皿に入れ、カウンターの亜矢子の目の前に置いた。
「わぁ。すごーい。うれしいわ。マスター気がきくわね。」さっきまで沈んでいた大きな目がシャンパンの様に輝いていた。
「ありがとうございます。」
「マスターこうなったら本格的にしましょうよ。ロウソクあります?」
「そういえば、さっき店で買ったときについてました。」準は、ロウソクを箱から取り出した。亜矢子が二本取って、ショートケーキに突き刺して火をつけた。
「マスター電気を消して。」準が電気を消すと、ケーキの周りがボンヤリとユラユラと淡い炎が揺れていた。亜矢子がその炎を見つめている。
準は亜矢子の顔も輝いて見えたので、最高のクリスマスプレゼントだと思って神様に感謝した。
準と亜矢子は、一時の間、何も会話せずにロウソクの炎だけを見つめていた。 この時間が一生で一番大切な時間のような気がした。
一時眺めると、亜矢子が呟いた。
「ロウソクに願い事を言うと叶うんだって。消えた炎が神様の所に持っていってくれるんじゃないかしら。」
「そうなんですか。」
「私は何を願おうかな。マスターは何を願う。」準は、ものすごく考えた。今が告白のチャンスだと思い、勢いで言った。
「亜矢子さんとこうやってずっと一緒にいられたらいいなと願います。」準は、心の奥底でずっと想っていた事をすんなりと言った。
丁度その時、窓の隙間から冷たい風が吹いてきて、ロウソクの炎が消えた。真っ暗になった空間。
「マスターがそんな風に思っていたなんて知らなかった。」亜矢子は戸惑っていた。
「ごめん。」
「いや。謝らないで。私すごくうれしい。私もこうやって静かなBARでマスターと一緒にいられたら幸せだろうなと思うわ。」
「それって。」準が聞き返すと、ドアが開いて、若いカップルが入って来た。準は電気を点けると「いらっしゃいませ。」と言った。
カップルをテーブルの席に案内すると、亜矢子は店を出て行った。
ドア越しに白い雪がふわふわと降っていた。その中を亜矢子はうつむいていた。
まるで亜矢子が降らしているかのような雪に、準はただボンヤリと眺める事しか出来なかった。
そんな白い季節が終わると、温かい恋の季節へと変わって行くのだった。
準がワイングラスを拭いていると、制服姿のよりこがバッグを持ってドアを開けた。
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