私は、高校の非常勤講師をしている。
はじめはうまい具合に授業をこなしていた。授業の時間配分もばっちりで、いつも時間通りに授業を終えることができた。いつどこで、何が間違ったのか。私は、今一人の高校生に翻弄されている。
その子(N)は、一年の中間に転校してきた。他の先生たちの話では、いい子が来るとだけ分かっていた。どういう子が来るのかはまったく知らされてなかった。女の子が来るということだけは分かっていた。
私が教室に入ると一人だけ輝いている女の子がいた。転校生のNだ。他の生徒と違ったオーラが出ていた。教室の雰囲気も違っていた。私は何気なく待っていただけにショックが大きかった。まさかこれはないだろうと心の中で笑った。
Nを見た瞬間、雷が落ちて、石になったように固まってしまった。これほどまでにかわいい子は生まれて初めて見た。心臓がドキドキと破裂しそうなくらい大きな音でなっていた。教室中に響き渡りそうなくらいに高鳴っていた。みんなに聞こえないかと心配だった。
言葉使いも変わっていた。いつも「俺が」と言っていたのに、今日だけは「僕が」になってしまった。
「僕が担任の***先生です」自分でもわけが分からない言葉づかいになっていたのが分かった。Nは不思議な目でこちらを見ていた。目と目が合った。一瞬、時が止まってしまった。Nと私の間に大きな壁が立ちはだかっているかのように遠くに感じた。目の色は薄い茶色で、吸い込まれそうな目だった。ブラックホールなのか。
見とれていると、何緊張しているの?と他の生徒から言われて我に戻った。
他の生徒もこの子がかわいいと十分に分かっていた。自分にとってプラスになる人物かマイナスになる人物か探っている様子だった。
私の心はNに奪われていた。ときめいてしまった。気持ちの整理というものがうまくいかない。先生としてやっていけるか不安になった。
二十四年間でこのようにときめいたことがなく、初めての経験でよく分からなかった。ただ一つ言えるのは仕事だからやり遂げるしかない。気持ちを押し殺してやっていくしかない。
だけど、私は顔に出るたちなのですぐに分かってしまう。
他のクラスで授業をしていた時の事、Nのことを考えると思わず顔がにやけてしまう。
「先生、何、にやにやしているの?」と生徒から言われた。
「いやべつに」と苦笑した。Nが転校して来たからだとはとても言えなかった。
先生という職業を考えると胸が苦しくて、悲しくて、せつなくて、夜もおちおち眠れなくなった。先生という職業は、恋をしてはいけない職業なのではないだろうか。大人の女性ならいいのであろうか。と考えているうちに、ご飯が喉を通らなくなった。体重が十五キロも落ちてしまった。病院ではストレスによる胃酸過多と言われた。この歳で恋わずらいになるとは思わなかった。私がなるとは神様でも予想がつかなかっただろう。こんなことなら、教師という職業を選ばなければ良かった。
そんなある日、授業で相談がある人は、携帯に電話しなさいと言って、携帯番号を教える事ができた。黒板に大きく書かれた私の携帯番号。汚い字だな等と思って、何をしているのかと疑問にもなったが、いい案が思い浮かばず、番号を生徒みんなに教えてしまった。
案の定、Nからも電話がかかってきた。
「先生、何してるの?」元気な声で聞いてくる。声を聞くだけでうれしかった。
「明日の勉強だよ」先生だから明日の予習をしなければならなかった。
「だよね。明日も先生と会えるんだね」うれしそうな声だった。先生になって本当に良かったと心から思った。私の事を必要としてくれていると感じただけでも幸せだった。
昔から、こういうやり取りが好きだったんだ。
話しを聞くと、Nは地方のモデルで、雑誌やCMに出ていた。雑誌のグラビアにはでかでかと載っていた。しかも水着の写真だった。こんなにかわいい子が私と話しをしていると思うと顔が赤くなって、ぽかぽかと体が熱くなって来る。
どうしたものかと考えても答えなど出るはずもなかった。
Nは、地方では有名人らしかった。街でもよく声をかけられると言っていた。それに比べて私は何をしているのか。ただの非常勤講師ではないか。モデルに何を教えてあげれるのだろうか。少しだけ年上というだけではないか。話しを聞いてあげることしかできない。
今日も電話がかかってきた。
「もしもし」私はうれしくて、声もはずんだ。
「もしもし」Nは声がかすれて死にそうな声だった。
「どうしたの?今日は元気がないみたいだけど」少し落ち込んで泣いているみたいだ。
「私、生きる資格ないんだ。親から死ね。って言われた」私は、親を殺したい反動にかられた。
「そんなことないよ。生きるってすばらしいんだよ。好きな人だってできるし、おいしい物も食べれるんだよ」
「先生の言っていることよく分かんない」二人で吹き出して笑った。いつもの元気なNの声になってうれしい気持ちになった。
ケンカの原因は母親が妹のことをひいきして、私の事なんていらないと、勘違いをしていた。妹と比較されるのが嫌いだといっていた。妹は、有名な私立の中学校に行っていた。
Nは私の学校に来ているのだが、私の学校は、通信制の学校である。全日制もあるが、昼からの部もあって、働きながら高校の単位をとっている人達もいる。前の学校で、退学になった生徒や引きこもり、いじめで学校に行けなくなった生徒などを受け入れている学校だった。世間で言う落ちこぼれが行くような学校だ。私はそうは思わない。何とか救ってやりたかった。
学校で、昼休みNが私を呼んだので、何事かと思ってついていくと生徒が何人かいて、だるまさんが転んだをしようということになっていた。鬼がいなくて、私が鬼の役に抜擢されたのだ。
「だるまさんがころんだ」と私が言うとみんな笑っていた。何で笑うのかと思ったら、私をからかって逃げていたからだ。小学生のような無邪気な笑顔を見ると私も思わず笑ってしまった。Nは笑った顔が素敵だった。ボタンの花が一輪咲いたような華やかさだった。または、ジャングルで迷った時に光が差し込んでくるような輝かしいものだ。ジャングルで迷ったら私の事を探してくれるだろうか。などと考え「だるまさんがころんだ」と後ろを振り返った。生徒は、誰もいなかった。私の気持ちだけが転んでいた。
はじめはうまい具合に授業をこなしていた。授業の時間配分もばっちりで、いつも時間通りに授業を終えることができた。いつどこで、何が間違ったのか。私は、今一人の高校生に翻弄されている。
その子(N)は、一年の中間に転校してきた。他の先生たちの話では、いい子が来るとだけ分かっていた。どういう子が来るのかはまったく知らされてなかった。女の子が来るということだけは分かっていた。
私が教室に入ると一人だけ輝いている女の子がいた。転校生のNだ。他の生徒と違ったオーラが出ていた。教室の雰囲気も違っていた。私は何気なく待っていただけにショックが大きかった。まさかこれはないだろうと心の中で笑った。
Nを見た瞬間、雷が落ちて、石になったように固まってしまった。これほどまでにかわいい子は生まれて初めて見た。心臓がドキドキと破裂しそうなくらい大きな音でなっていた。教室中に響き渡りそうなくらいに高鳴っていた。みんなに聞こえないかと心配だった。
言葉使いも変わっていた。いつも「俺が」と言っていたのに、今日だけは「僕が」になってしまった。
「僕が担任の***先生です」自分でもわけが分からない言葉づかいになっていたのが分かった。Nは不思議な目でこちらを見ていた。目と目が合った。一瞬、時が止まってしまった。Nと私の間に大きな壁が立ちはだかっているかのように遠くに感じた。目の色は薄い茶色で、吸い込まれそうな目だった。ブラックホールなのか。
見とれていると、何緊張しているの?と他の生徒から言われて我に戻った。
他の生徒もこの子がかわいいと十分に分かっていた。自分にとってプラスになる人物かマイナスになる人物か探っている様子だった。
私の心はNに奪われていた。ときめいてしまった。気持ちの整理というものがうまくいかない。先生としてやっていけるか不安になった。
二十四年間でこのようにときめいたことがなく、初めての経験でよく分からなかった。ただ一つ言えるのは仕事だからやり遂げるしかない。気持ちを押し殺してやっていくしかない。
だけど、私は顔に出るたちなのですぐに分かってしまう。
他のクラスで授業をしていた時の事、Nのことを考えると思わず顔がにやけてしまう。
「先生、何、にやにやしているの?」と生徒から言われた。
「いやべつに」と苦笑した。Nが転校して来たからだとはとても言えなかった。
先生という職業を考えると胸が苦しくて、悲しくて、せつなくて、夜もおちおち眠れなくなった。先生という職業は、恋をしてはいけない職業なのではないだろうか。大人の女性ならいいのであろうか。と考えているうちに、ご飯が喉を通らなくなった。体重が十五キロも落ちてしまった。病院ではストレスによる胃酸過多と言われた。この歳で恋わずらいになるとは思わなかった。私がなるとは神様でも予想がつかなかっただろう。こんなことなら、教師という職業を選ばなければ良かった。
そんなある日、授業で相談がある人は、携帯に電話しなさいと言って、携帯番号を教える事ができた。黒板に大きく書かれた私の携帯番号。汚い字だな等と思って、何をしているのかと疑問にもなったが、いい案が思い浮かばず、番号を生徒みんなに教えてしまった。
案の定、Nからも電話がかかってきた。
「先生、何してるの?」元気な声で聞いてくる。声を聞くだけでうれしかった。
「明日の勉強だよ」先生だから明日の予習をしなければならなかった。
「だよね。明日も先生と会えるんだね」うれしそうな声だった。先生になって本当に良かったと心から思った。私の事を必要としてくれていると感じただけでも幸せだった。
昔から、こういうやり取りが好きだったんだ。
話しを聞くと、Nは地方のモデルで、雑誌やCMに出ていた。雑誌のグラビアにはでかでかと載っていた。しかも水着の写真だった。こんなにかわいい子が私と話しをしていると思うと顔が赤くなって、ぽかぽかと体が熱くなって来る。
どうしたものかと考えても答えなど出るはずもなかった。
Nは、地方では有名人らしかった。街でもよく声をかけられると言っていた。それに比べて私は何をしているのか。ただの非常勤講師ではないか。モデルに何を教えてあげれるのだろうか。少しだけ年上というだけではないか。話しを聞いてあげることしかできない。
今日も電話がかかってきた。
「もしもし」私はうれしくて、声もはずんだ。
「もしもし」Nは声がかすれて死にそうな声だった。
「どうしたの?今日は元気がないみたいだけど」少し落ち込んで泣いているみたいだ。
「私、生きる資格ないんだ。親から死ね。って言われた」私は、親を殺したい反動にかられた。
「そんなことないよ。生きるってすばらしいんだよ。好きな人だってできるし、おいしい物も食べれるんだよ」
「先生の言っていることよく分かんない」二人で吹き出して笑った。いつもの元気なNの声になってうれしい気持ちになった。
ケンカの原因は母親が妹のことをひいきして、私の事なんていらないと、勘違いをしていた。妹と比較されるのが嫌いだといっていた。妹は、有名な私立の中学校に行っていた。
Nは私の学校に来ているのだが、私の学校は、通信制の学校である。全日制もあるが、昼からの部もあって、働きながら高校の単位をとっている人達もいる。前の学校で、退学になった生徒や引きこもり、いじめで学校に行けなくなった生徒などを受け入れている学校だった。世間で言う落ちこぼれが行くような学校だ。私はそうは思わない。何とか救ってやりたかった。
学校で、昼休みNが私を呼んだので、何事かと思ってついていくと生徒が何人かいて、だるまさんが転んだをしようということになっていた。鬼がいなくて、私が鬼の役に抜擢されたのだ。
「だるまさんがころんだ」と私が言うとみんな笑っていた。何で笑うのかと思ったら、私をからかって逃げていたからだ。小学生のような無邪気な笑顔を見ると私も思わず笑ってしまった。Nは笑った顔が素敵だった。ボタンの花が一輪咲いたような華やかさだった。または、ジャングルで迷った時に光が差し込んでくるような輝かしいものだ。ジャングルで迷ったら私の事を探してくれるだろうか。などと考え「だるまさんがころんだ」と後ろを振り返った。生徒は、誰もいなかった。私の気持ちだけが転んでいた。
どうしてこのブログに興味を持ったかというと、実は私は高校生のときに臨時採用の先生と付き合っていたことがあるからです。
その先生とは1年くらい付き合いましたが、振られてしまいました。。
今では結婚して、子どももいるそうです。
今の自分のことを考えると、あの頃は別れることがつらくて、悲しくて、どうしようもないくらいに落ち込んでいたけれど、学んだことも数え切れないくらいあります。
今でも「あの時」付き合って二人で過ごした時間は無駄ではなかった、と思えることがあります。
まとまりのない文章ですみません
これからも読ませていただきたいと思います
まだ、今でも学校の新聞に彼女(N)の姿が写ってると好きなんだなーとつぶやいてしまいます。どうやったら忘れられるのでしょうかね。下手すれば一生Nが忘れられないと思います。
なきさんのブログにもちょくちょく行かせてもらいます。よろしく。
今ルーズと言って小説を書いてますけど、うまく終わるかどうか。高校生の気持ちになって考えて書きたいと思っています。末長く見守っていてください。