鈴木孝夫氏が2021年2月に亡くなられました。
以前、読んだ鈴木氏の著『ことばと文化』(岩波新書, 1973)を紹介します。
これは文字通り、ことばと文化を扱う書で、日本語と日本文化についての書であり、時々、英語など多言語との比較も見られる。
僕が、印象に残って読んだ時に印をつけているのは、動物についての日英の文化の違いについての部分である。
例えば、
たしかに多くの日本人はいらなくなった犬や猫をいまでも捨てる。捨犬、のら犬、野犬狩りなどということばは英語には訳せない。そしてこのことが、さきの海軍武官夫人をはじめ多数のイギリス人の憤激を買うのである。
それならば彼等はこのような時どうするかというと、毒で殺すか、ピストルで撃ち殺すのだ。イギリス人はこの方法が最小の苦痛で殺せるから一番合理的で動物のためになる処理法だと考えるのである。(p.108)
スタインベックの『ハツカネズミと人間』では、役に立たなくなった老犬を撃ち殺す場面がある。
これは、イギリスではなくアメリカの話ではあるが、鈴木氏の記述と合致している。
イギリス人と日本人では馬に対する態度、考え方が根本的に違う(pp.123-124)ことについての記述も大変面白い。
50年近く前の書ではありますが、名著だと思います。
言葉と(や)文化に関心のある方は、ぜひ読んでみましょう。