先日、岡山県高等学校教育研究会英語部会秋季研究大会の分科会「学習意欲を高める授業の工夫」で指導助言者を務めました(岡山県高等学校教育研究会英語部会秋季研究大会で指導助言者を務める(2014年11月18日)参照)。
その時の実践報告で、一人の先生が高等学校英語検定教科書Communication English Ⅱ CROWN(三省堂)を使った授業を報告されるということだったので、もしこの教科書を使って自分が教えるとなったらどのような授業展開ができるかを考えてみました。
まずは、この教科書は、私の大学院時代の先輩である電通大の松原好次先生や同期入学ですが年齢的には先輩の慶応大の由井ロバート先生が関わっている教科書ですので、以前から注目はしていました。
今回、じっくりと見て、とてもよい教科書であることがわかりました。
基本的に私が英語を教えるのは、次のようなことを重視します。
○教科書本文を本物の世界へとつなげていく
○教科書と世界のつながり(他教科とのつながり、教室外(学校活動)とのつながり、学校外(社会)とのつながり)
それらのことを考えると、例えば
Lesson 1 "A Boy and His Windmill"では、本文で述べられているWilliam Kawkwamba(ウィリアム・カムクワンバ)がBryan Mealerと書いたThe Boy Who Harnessed the Wind(2010)(翻訳版 『風をつかまえた少年』)や彼のブログの紹介が可能だと思いました。
また、YouTubeではTEDでのWilliam Kawkwambaのスピーチも視聴可能でしたので、それを活用することもできそうだと思いました(実際、実践報告をされた先生は、この動画を利用されたようです)。
Lesson 2 "Into Unknown Territory" では、羽生善治棋士を扱っていました。
また、optional readingでは、将棋のコンピュータ対人間のことが書かれていました。
英語圏ではよく話題に上るチェスのコンピュータ対人間について話題を広げてもおもしろいでしょうし、岡山県倉敷市には、大山康晴名人記念館がありますので、特に倉敷市周辺の学校では、大山康晴名人に話を広げたり、記念館を訪問することに結びつけてもおもしろいでしょう。
Lesson 3 "Paul the Prophet"では、ワールドカップ・サッカーの際、試合結果を「予想」したタコのPaulのことが述べられていました。
Optional readingでは、女子サッカーの「なでしこJapan」について書かれているのも興味深かったです。
英語のサッカー中継を見せたりするのもおもしろい展開でしょう。
Lesson 4 "Crossing the Border"では国境なき医師団について扱っていました。
これは、 1年生で勉強した同じ教科書シリーズのLesson 3 "Writers without Borders"から関連づけられると思いますし、3年生で習う予定の Communication English Ⅲ のLesson 3に出てくる "God’s Hands"(心臓外科医 天野篤, Dr. Atsushi Amano)にあらかじめ関連づけておくのも来年を見据えた活動でよろしいと思います。また、Optional readingに出てくるTriage(トリアージ)についての英文も興味深いです。
Lesson 5の "Txtng"は、もちろんTextingのことですが、この題材を教科書で取り上げていること自体がとてもおもしろいことです。
生徒たちも興味を持って取り組むことができるでしょう。また、メール等で使われる日本語と比較したらおもしろいと思います。
Lesson 6のAshuraは、伝統日本文化についての内容ですが、1年生教科書Communication English Ⅰ 内のoptional reading"Sustainable Living in the Edo Period"からの関連づけや、3年生教科書Communication English Ⅲ内の "An American in the Heart of Japan (Donald Keene)"への関連づけがおもしろいと思います。
(さらに、ドナルド・キーン氏の日本文学論や、彼が翻訳した作品の原文と翻訳文との比較などへの展開も考えれれますが、それは3年次になりそうです。)
Lesson 7では、Biomimicryについて扱われています。
この中では、Biomimicry—Innovation Inspired by Nature, (2002) by Janine Benyus(翻訳『自然と生体に学ぶバイオミミクリー』(オーム社, 2006)が紹介されています。
この章を読むときまでは、ぜひこの図書を学校図書館に購入依頼しておくべきです。
あるいは教員が貸し出し可能として購入しておくとよいと思います。
そして、この章を勉強するときに、本校の図書館にも実は、この本がありますよとさりげなく紹介するのです。
多くのとは言いませんが、きっと何人かその本を読んでみようという生徒が出るはずです。
そして話は大げさになりますが、例えば、英語の教科書で読んだこの文章とそれに関連して読んだ書籍によって生物学に興味を持ち、そのような進路を選ぶ生徒が出たら英語教員にとっては大きな喜びであろうと思います。
高校の先生方にとっては、教え子が後輩の英語教員になることも喜びであろうが、他の進路であっても進路決定に大きな影響を与えることも大きな喜びとなるであろうと思います。
こんなことはなかなかあることではありませんが、例えばノーベル賞などを教え子が受賞して、そのインタビューで、あなたが科学に興味を持ったきっかけはと尋ねられ、高校の英語の先生が紹介してくれた本を読んだからです、などと言ってくれたらこれほど名誉なことはないでしょう。
まあ、そのようなことはめったにありませんが、もっと小さいレベルで考えても、たとえば、同窓会に恩師として呼ばれた時などに、先生が英語の授業で紹介してくれた本を読んで、あるいは先生の話を聞いて、この進路を選びましたなどと言ってくれることがあれば、教師冥利に尽きることとなるでしょう。
Lesson 8 "Before Another 20 Minutes Goes By"では、地雷除去に使われるロボットが紹介されます。
実践報告の先生は、HONDA ASIMOの映像を使った表現活動に展開されるようでしたが、それはとても興味深い活動になったことでしょう。
現代の高校生には少し古いかもしれませんが、英国のダイアナ元妃の地雷除去活動などへの展開も考えられます。
Lesson 9の"The Long Way Home"では、現代の高校生の職業人気のデータが紹介され、興味深かったです。
ちなみに、男子3位には「研究者・大学教員」が挙げられていました。
そして、女子1位には「保育士・幼稚園の先生」、女子2位には「看護師」が挙がっていました。
また、この章には、1年生のCommunication English Ⅰの Lesson 1 "Going into Space"からの関連づけも可能ですし、人気アニメ『宇宙兄弟』との結びつけや、国際宇宙ステーション観測アプリの紹介(または、実際の観測)なども面白い展開となりえます(なお、このアプリのことは妻が教えてくれました)。
Lesson 10の"Grandfather’s Letters"でも、やはり1年生の教科書Communication English Ⅰの "No Longer a Slave to the Internet"からの関連づけが可能です。また、Optional Readingには、Michael Jacksonが扱われていますので、様々な展開が可能です。
この教科書は、英語コミュニケーションのための教科書です。
この教科書で扱われている内容や、それに関連した活動をすることにより、生徒たちがそれぞれのテーマについて(英語で)話をする力をつけてあげることが大切です。
そのための道具として、巻末のToolboxで関連語彙・表現を示しているのがよい点でもあります。
そして、生徒たちが幅広い教養を持って、話が展開できるためには、授業を担当する教員が自分の引き出しをたくさん持って、「ちなみに」と関連づけながらうまく展開していく力が必要です。
そのためには、自分が授業で使う、教科書の教材研究はみっちりすべきですし、幅広い展開を可能にするための、いろいろな分野の情報収集が大切なこととなります。
ただ、思いついた関連事項をすべて披露すると、時間不足になってしまうこともありますので、適宜取捨選択することも大切ですね。
教育は奥が深いです。
その時の実践報告で、一人の先生が高等学校英語検定教科書Communication English Ⅱ CROWN(三省堂)を使った授業を報告されるということだったので、もしこの教科書を使って自分が教えるとなったらどのような授業展開ができるかを考えてみました。
まずは、この教科書は、私の大学院時代の先輩である電通大の松原好次先生や同期入学ですが年齢的には先輩の慶応大の由井ロバート先生が関わっている教科書ですので、以前から注目はしていました。
今回、じっくりと見て、とてもよい教科書であることがわかりました。
基本的に私が英語を教えるのは、次のようなことを重視します。
○教科書本文を本物の世界へとつなげていく
○教科書と世界のつながり(他教科とのつながり、教室外(学校活動)とのつながり、学校外(社会)とのつながり)
それらのことを考えると、例えば
Lesson 1 "A Boy and His Windmill"では、本文で述べられているWilliam Kawkwamba(ウィリアム・カムクワンバ)がBryan Mealerと書いたThe Boy Who Harnessed the Wind(2010)(翻訳版 『風をつかまえた少年』)や彼のブログの紹介が可能だと思いました。
また、YouTubeではTEDでのWilliam Kawkwambaのスピーチも視聴可能でしたので、それを活用することもできそうだと思いました(実際、実践報告をされた先生は、この動画を利用されたようです)。
Lesson 2 "Into Unknown Territory" では、羽生善治棋士を扱っていました。
また、optional readingでは、将棋のコンピュータ対人間のことが書かれていました。
英語圏ではよく話題に上るチェスのコンピュータ対人間について話題を広げてもおもしろいでしょうし、岡山県倉敷市には、大山康晴名人記念館がありますので、特に倉敷市周辺の学校では、大山康晴名人に話を広げたり、記念館を訪問することに結びつけてもおもしろいでしょう。
Lesson 3 "Paul the Prophet"では、ワールドカップ・サッカーの際、試合結果を「予想」したタコのPaulのことが述べられていました。
Optional readingでは、女子サッカーの「なでしこJapan」について書かれているのも興味深かったです。
英語のサッカー中継を見せたりするのもおもしろい展開でしょう。
Lesson 4 "Crossing the Border"では国境なき医師団について扱っていました。
これは、 1年生で勉強した同じ教科書シリーズのLesson 3 "Writers without Borders"から関連づけられると思いますし、3年生で習う予定の Communication English Ⅲ のLesson 3に出てくる "God’s Hands"(心臓外科医 天野篤, Dr. Atsushi Amano)にあらかじめ関連づけておくのも来年を見据えた活動でよろしいと思います。また、Optional readingに出てくるTriage(トリアージ)についての英文も興味深いです。
Lesson 5の "Txtng"は、もちろんTextingのことですが、この題材を教科書で取り上げていること自体がとてもおもしろいことです。
生徒たちも興味を持って取り組むことができるでしょう。また、メール等で使われる日本語と比較したらおもしろいと思います。
Lesson 6のAshuraは、伝統日本文化についての内容ですが、1年生教科書Communication English Ⅰ 内のoptional reading"Sustainable Living in the Edo Period"からの関連づけや、3年生教科書Communication English Ⅲ内の "An American in the Heart of Japan (Donald Keene)"への関連づけがおもしろいと思います。
(さらに、ドナルド・キーン氏の日本文学論や、彼が翻訳した作品の原文と翻訳文との比較などへの展開も考えれれますが、それは3年次になりそうです。)
Lesson 7では、Biomimicryについて扱われています。
この中では、Biomimicry—Innovation Inspired by Nature, (2002) by Janine Benyus(翻訳『自然と生体に学ぶバイオミミクリー』(オーム社, 2006)が紹介されています。
この章を読むときまでは、ぜひこの図書を学校図書館に購入依頼しておくべきです。
あるいは教員が貸し出し可能として購入しておくとよいと思います。
そして、この章を勉強するときに、本校の図書館にも実は、この本がありますよとさりげなく紹介するのです。
多くのとは言いませんが、きっと何人かその本を読んでみようという生徒が出るはずです。
そして話は大げさになりますが、例えば、英語の教科書で読んだこの文章とそれに関連して読んだ書籍によって生物学に興味を持ち、そのような進路を選ぶ生徒が出たら英語教員にとっては大きな喜びであろうと思います。
高校の先生方にとっては、教え子が後輩の英語教員になることも喜びであろうが、他の進路であっても進路決定に大きな影響を与えることも大きな喜びとなるであろうと思います。
こんなことはなかなかあることではありませんが、例えばノーベル賞などを教え子が受賞して、そのインタビューで、あなたが科学に興味を持ったきっかけはと尋ねられ、高校の英語の先生が紹介してくれた本を読んだからです、などと言ってくれたらこれほど名誉なことはないでしょう。
まあ、そのようなことはめったにありませんが、もっと小さいレベルで考えても、たとえば、同窓会に恩師として呼ばれた時などに、先生が英語の授業で紹介してくれた本を読んで、あるいは先生の話を聞いて、この進路を選びましたなどと言ってくれることがあれば、教師冥利に尽きることとなるでしょう。
Lesson 8 "Before Another 20 Minutes Goes By"では、地雷除去に使われるロボットが紹介されます。
実践報告の先生は、HONDA ASIMOの映像を使った表現活動に展開されるようでしたが、それはとても興味深い活動になったことでしょう。
現代の高校生には少し古いかもしれませんが、英国のダイアナ元妃の地雷除去活動などへの展開も考えられます。
Lesson 9の"The Long Way Home"では、現代の高校生の職業人気のデータが紹介され、興味深かったです。
ちなみに、男子3位には「研究者・大学教員」が挙げられていました。
そして、女子1位には「保育士・幼稚園の先生」、女子2位には「看護師」が挙がっていました。
また、この章には、1年生のCommunication English Ⅰの Lesson 1 "Going into Space"からの関連づけも可能ですし、人気アニメ『宇宙兄弟』との結びつけや、国際宇宙ステーション観測アプリの紹介(または、実際の観測)なども面白い展開となりえます(なお、このアプリのことは妻が教えてくれました)。
Lesson 10の"Grandfather’s Letters"でも、やはり1年生の教科書Communication English Ⅰの "No Longer a Slave to the Internet"からの関連づけが可能です。また、Optional Readingには、Michael Jacksonが扱われていますので、様々な展開が可能です。
この教科書は、英語コミュニケーションのための教科書です。
この教科書で扱われている内容や、それに関連した活動をすることにより、生徒たちがそれぞれのテーマについて(英語で)話をする力をつけてあげることが大切です。
そのための道具として、巻末のToolboxで関連語彙・表現を示しているのがよい点でもあります。
そして、生徒たちが幅広い教養を持って、話が展開できるためには、授業を担当する教員が自分の引き出しをたくさん持って、「ちなみに」と関連づけながらうまく展開していく力が必要です。
そのためには、自分が授業で使う、教科書の教材研究はみっちりすべきですし、幅広い展開を可能にするための、いろいろな分野の情報収集が大切なこととなります。
ただ、思いついた関連事項をすべて披露すると、時間不足になってしまうこともありますので、適宜取捨選択することも大切ですね。
教育は奥が深いです。