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甲府市の市民レポーターがこうふの話題をお届け!

みっちゃんの道草 ~竹中英太郎が描く"あやかしの世界"~

2013-05-29 15:46:58 | 地域スポット
 竹中英太郎記念館 人はそこで夢を見る  



★本日の一枚☆

-幻の絵、知りませんか?-


竹中英太郎記念館

:: 湯村山の高台に佇む館:::

おはようございます。
短い初夏が終りを告げ、いよいよ梅雨入りですね。
じめじめとした室内に、乾かない洗濯物。
考えるだけでも憂鬱な主婦レポーターのみっちゃんです。


さて、前回は国民文化祭の事業のひとつ「大茶会」を紹介させて
いただきましたが、今回はその第2弾ということでっ。
開館10周年とやまなし国民文化祭を記念して
英太郎と労の「父子展」を期間限定で開催している
竹中英太郎記念館にお邪魔させていただきました

                
竹中英太郎記念館

開館時間:午前10時~午後4時
休館日:毎週火曜日・水曜日
       ※臨時休館有
入館料:300円(高校生以上)、200円(小・中学生) コーヒーor紅茶付
連絡先:055-252-5560
公式HP:http://takenaka-kinenkan.jp/
                

知る人ぞ知る「湯村の社 竹中英太郎記念館」は
甲斐の山並みを一望できる湯村山の高台にひっそり佇んでいます。
英太郎さんの作った長い石畳の道を進み、扉を開けると
美人な館長さんが温かく出迎えて下さいました
ひょいと入り口から中を覗くと、そこはまるで別世界
自然と私のテンションも上がります。
遠くの県外から訪れるお客さんも多いとのこと。
今回はブログに掲載するため、館長さんのご好意で
たくさん写真を撮影させていただきました



▲竹中英太郎記念館

昭和初期、英太郎さんはあの有名な江戸川乱歩横溝正史
夢野久作が書いた小説の挿絵画家として一世を風靡していました。
ところが人気絶頂の最中、ある出来事を境に彼は突然、筆を折ります。

挿絵画家生活から決別した英太郎さんは、第二次世界大戦中
ひょんなことから疎開先の山梨で「後に続くものを信ず」という言葉で
有名な身延出身の若林東一の絵を描くことに。
その絵は第7回山梨美術展で入選したと報じられたのですが、
その後、所在が行方不明になっているそうです。

☆★竹中英太郎の描いた幻の絵★☆
わかっている情報は次の通り。

********************************
タイトル「若林中尉の夜襲」
山梨美術協会主催 第7回山梨美術展洋画の部入選作
松林軒百貨店(現在、跡地はホテルになっているそう)にかつて展示
当時、美術展を鑑賞した多湖知事がその絵の前で足を止めて感動
サイズが大きく、おどろおどろしくも妖艶な絵
絵の中に出てくるのは「刀」「白いハチマキ」「軍人」「髑髏」

絵は「点描」スタイルで独特のタッチがあります
こんな雰囲気のタッチの絵です。
              

「若林中尉の夜襲」は写真が残されていないため
実際にどのような絵だったのか、わかっていません。
今回はイメージとして、2Fに展示されている別の英太郎さんの作品を
拡大させていただきました。

********************************

「ただ、その絵を一目見たい」
その一心で、英太郎さんの娘であり、同時に竹中英太郎記念館
館長でもある金子紫さんは、この絵を探し続けているそうです。
もし絵の行方をご存じの方がいましたら、ぜひ竹中英太郎記念館まで
ご一報下さいませ。

:: 父から息子、そして娘へ:::

その後、30年の時を経てルポライターである息子・労さんの頼みで
英太郎さんは再び筆を手にすることになります。



▲展示の様子

二人の関係は、親子を超越した闘う同志。
でも何か通じるものがあったからこそ、英太郎さんは再び
労さんのためだけに絵筆を握ったのでしょう。

「父の絵の価値を一番よく解っていたのは、労さんですから」

そう呟いた館長さんの口許には、どこか懐かしむような
微笑が浮かんでいました。

ところで、英太郎さんの長男・労さんですが
何と初めは「」と名付けられたんですって
でも父親である英太郎さんがアナキズムからポルシェヴィズムに
転向したため、喧嘩屋の異名をとる「労」になったようなんですが……
労さんの言論は少し過激で、その人生は波乱に満ちていたよう。
ちなみに労さんは、天童よしみさんの名付け親でもあるんです。
その昔、「全日本歌謡選手権」の審査員長をしていた労さんは
"天から授かった童・天才少女"の意を込めて彼女に
「天童よしみ」という芸名をつけたんですって。
労さんは、彼女のデビュー曲「風が吹く」の作詞も手掛けているんですよ。


▲2Fの展示室より

鑑賞後は1Fのテーブル席で英太郎さん関連のDVDを
ゆっくり満喫することもできます
私は館長さんが淹れて下さった美味しい紅茶をいただきながら
オススメの絵を尋ねてみることにしました

「そうねぇ……私にとって最も思い入れの深い絵は、
父が私をイメージして描いた
『夢を吐く女』かしら」



▲夢を吐く女

印刷すると紫色に見えるこの絵ですが、実際に人物を
覆っている色は淡いピンク。
英太郎さんの絵は一見、写実的な画風に見えるのですが
そこには妖艶な美しさが漂っています
ドキッ、と。こう胸に、響くような絵なんです。
独学でここまで極めた人は、きっと、それほどいないでしょう。
館長さんは他にも二つの絵をオススメして下さいました。



女郎断指

そのオススメの一つが「女郎断指」という作品。
指を詰める女郎の恍惚とした表情
絵の中に隠されたつがいの蝶
この二つには、英太郎さんからの意外なメッセージが
隠されているんですが、詳細はぜひ記念館で。
そしてオススメのもう一つが「花電車の女」という
英太郎さん晩年の作品です。



▲花電車の女

これが実に傑作なんです
絵は実際に実物を見て驚いていただきたいのですが、
この絵には二つの表情があります。
ヒントは「目を細めて」絵を見ること
そうすることで、女性の表情が騙し絵のように変化します。
記念館を訪れたらぜひ試してみて下さいネ。

「蝶」「蛾」「女性」「花」
英太郎さんのテーマとも呼べるこれらのキーワードは、
手法を変えて様々な作品に登場します。
その絵をまるでピカソのようと表現する人もいますが、私はむしろ
英太郎さんの絵を眺めていると、ポール・シニャックを思い出します。
シニャックが光を描く絵師なら、英太郎さんは闇を操る絵師。
そこには完成されていない美しさがあると思います。
人も絵も。未完成だからこそ、味がある。
だから何度見ても、新鮮で面白い。
そんな気がしました。
館長さんは語ります。

「父はこれまでに小説の挿絵やレコードのジャケットなど、
多くの色彩画を手掛けてきました。
でもひとつも自分のために描いた絵がなかった。
『花電車の女』も労さんのために書いたもの。
だからまだ描き続けたい。今度は自分のものを、って。
最期までそう言い続けていたんですよ」


抑圧された社会からの解放。
英太郎さんはもしかすると、最後の最後まで現役を貫くことで
己自身の殻を破ろうとしていたのかもしれません。
甲府市のつつじが崎霊園にある英太郎さんの墓碑には、
こう刻まれています。

「せめて自らにだけは、恥じなく眠りたい、と」



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