泥棒役者/西田征史監督
事情があって先輩の泥棒に誘われて空き巣に入ったところ、ちょうどセールスマンがやってきて家の主人と勘違いされてしまう。さらに本当の家の主人は在宅していた。ところがこの家の主人である絵本作家は、勝手に泥棒を編集者と勘違いし、そのまま招き入れる。そういう状況の中、本当に編集者や客などがこの家にやってきて、泥棒はその都度さまざまな立場に勘違いされて、その立場の人になりきろうとするのだったが…。
もともと舞台劇のようで、映画でありながら舞台的な展開である。家の中以外の場面もあるが、基本的に舞台演出でもこんな感じなんだろうという事は見て取れる。人のいい泥棒が居たもので、もともとまったくいい人なので、泥棒として困るところが笑いどころである。物語はそのようなコメディの上で、それなりに意外な展開を見せていい話になっていく。
確かにいい話なのだが、僕にはこのような甘さのようなものが今ひとつ苦手である。普通一般的に言っていい出来栄えの映画であるのは確かだろうと思うので、これはもう相性というしかない。何しろ物語の展開はよく出来ていて、なんとなく泣けるようないい話である。いや、実際には泣けないだろうが、こういう喜劇があるのはいいことだとさえ思う。舞台だって面白かったから、映画化もしようという事になったんだろう。だからもう、これは本来的にはいい作品なのである。でもまあ僕には…。
現実にはどうだという事を言いたい訳では無いのである。しかしまあ、泥棒のようなことになったら、もう少しリスク通りの悲しさが途中にあっても良かったかな、という程度かもしれない。勘違いされてヒヤヒヤする展開はイケたので、やっぱり過去の事情のようなことに、今一つ賛同できない自分がいるのだろう。だからこれは、僕以外の人にはお勧め作品だと言っておきたい。