ピエロがお前を嘲笑う/バラン・ボー・オダー監督
ドイツ映画。原題はWho am i という事で、私は誰だ?という変な謎解きになっている。ジャッキー・チェンの主演映画にも同じ題名のものがあったが、邦題はそういう混同を避けるためだったのだろうか。分からないが、映画の内容としては、必ずしも成功していないようにも感じた。
それというのも、彼らがピエロなのか、正直なところ一度としてそう思われたところは無かった。ハッカーとして暗躍していく様はそれなりにスリリングであるし、既に捕まって捜査を受けていて、その供述の再現映像であるというのも最初から明かされている。もちろん、そういう状況に後半は変化があるのが見どころにもなっているのだが。劇中にハッカー集団がお面をしているのだが、いわゆるそれがダークピエロの面ではある。しかし、彼らが嘲笑っている相手は、いわゆるお前としての僕らでは無いようにも思う。
重層的に観る者を騙すトリックは確かにたくさんある。思い出したのはファイト・クラブだが、そうした多重人格という事では特にない。しかしながら主人公はかなり怪しい人物で、そもそも最初からあまり信用できない。気が小さく無能そうにしているのが、ヒントにはなるだろうけど。たぶん、それでいくばくかのカタルシスがあるのかもしれない。
しかしながら僕のような人間がこんな映画を観ていて特に思うのは、バカ騒ぎして女の子を口説いて、世間を騒がすことをして、そうしてそれが愉快だというのが、今一つ分からない。いや、そういう愉快はあってもいいのかもしれないが、描かれ方がそんなに憧れられないというか。確かに高価なスポーツカーに乗ったりするが、そうやってモテたという満足感が、自分の価値を本当に高めているのだろうか。まあ、きれいごとを言うつもりもないが、いわゆるありのままの自分の姿で、好きな相手を口説いた方が、やっぱり価値が高いのではないだろうか。
まあしかし、今やドイツ映画だろうと、いわゆるハリウッド的だな、と改めて思う。世界的に同時に商業的な勝負をするような、そんなつくりの映画が増えているように思う。それで特に文句は無いが、やっぱり国によってちょっと違うというような違和感があった方が、映画ファンとしてはいいんだけどな、と思います。