ロープ 戦場の生命線/フェルナンド・レオン・デ・アラノア監督
最初に断っておくと、典型的な愚作である。戦場に必要なロープが手に入れられないという設定だが、ふつうに売ってあるわけで、相手に売る気が無いとはいえ、頓智をきかせて購入すれば済む話である。それではこの構成が成り立たないのは分かるが、アイディアとして最初から頭が悪すぎるという感じである。これでは物事が進まない(事実妙な進み具合だったけど)のは、当たり前である。物語は現地の悲惨さを伝えるために、一人の少年を通して、現状が語られることにはなる。語られるが、感情として隠すところもある。そういうことを良心のように言いたいのも分かるが、やはり責任としては自分で伝えるべきだろう。何かやる気のなさのようなことも感じてしまう。脚本が悪いのである。
道に牛の死体が放置してある。避けて通ると地雷が埋められているという罠らしい。なるほどという気もするし、それを賭けのように回避しようとするのは、もう少し頭を使いたくもある。実際に、これを回避する人もいるわけで、映画ではそれを利用もするのだが、何かそれが大変にうまい方法だったのかは、やっぱり疑問なのだった。彼らがしてやったりしたと感じているトリックは、実際は大したことが無いのではないか。いろいろな軋轢や妨害にあうが、最終的にもそれは皮肉によって解決もされる。それならば、彼らのやっていることはいったい何なのだろう。紛争地の問題は、それは確かに簡単なものではないだろう。しかしながら、それに対して、どのように対峙しながらかかわっていくか、という問題こそ彼らには必要な仕事のはずである。分かっているというニヒリズムが先にあると、見ている側には、何を分かっているのか、という怒りしか湧いてこない。現地の絶望は、だから分かっている人の努力によって変えていくしかないのではないか。まあ、そんなことは考えさせられたのだから、収穫が無いわけではないのかもしれないが。