カワセミ側溝から

好きな言葉は「のこのこ」。好きなラジオ中継「相撲」。ちょっと苦手「煮た南瓜」。影響受けやすいけど、すぐ忘れます。

何のために正義はあるか   ももえのひっぷ

2019-06-24 | 読書

ももえのひっぷ/コージィ城倉著(日本文芸社)

 全4巻の漫画。舞台はどこかの山の中にある田舎町。ダム建設の是非をめぐって町長選挙が行われている。ある夜半、賛成派と反対派の小競り合いの中、もみ合いになって反対派の町長候補が頭の打ちどころが悪く死んでしまう。ところがこの町長と瓜二つの人物がいて、替え玉として選挙に出ることで賛成派と反対派が合意してしまう(ここらあたりが漫画だからできることだが)。これには様々思惑の合意があるためだったのだが、そもそも田舎町の雇用問題を含め、ダム建設が無ければ、まちの将来は無い話だった。しかし建設を推し進めていたはずの建設会社には、ダム建設が中止になってもよい裏の事情があったのだった。そのようなミステリが絡む中、町議候補の奥さんがたいへんに魅力的な超人で、男なら誰もが抱きたい(そのためだったら何でもすると思わせてしまう)という衝動を起こさせる天然ボケの人物だった。この色気の問題が、さらに様々なミステリに絡んで展開するエロ・コメディということになるのかもしれない。
 こういうのが青年漫画なのだ、と言ってしまえばそれまでかもしれないが、そもそものミステリの構成がそれなりに複雑にうまいこと仕組まれていて、いわゆる名作感のある作品になっている。人もたくさん死ぬし、クマも出てくる。時代を超えた因縁もあるし、国際的なことも絡んでいる。色気の中に人間ドラマも濃厚で、展開も息をつかせない。まあ、実際のところ、そりゃないでしょ、というのはたくさんあるんだが、漫画なんだから仕方ないじゃん、と思わせられるのかもしれない。
 酒を飲んでいて、ある人から勧められて買ったらしいことは覚えている。なんで勧めてもらったのかは記憶が定かでないが、メモに書名が書いてあって検索したら手ごろだったから読んでみたのである。確かに面白かったのではあるが、本当にいったいなんでこれを勧めてくれたのだろうか。エロの要素はたくさんあるのは確かだったが、実はたいしたエロ作品ではない。おそらくなのだが、このミステリの展開そのものが、僕が読んで楽しめるという考えのもとに勧めてくれたのだろうと考えられる。僕がそんなような作品を欲していると話したんだろうと思う。そういう意味ではありがたいことだった。
 ただし、終結に至る展開は、多少慌ただしくまとまりが無い(無理にまとめられたというか)。何らかの事情で連載が中止になったかして、このようなことになったのだろうか。もしくは話が広がりすぎて、ちゃんとした理屈でまとめるには、このように説明するよりなかったのだろうか。これだけのことをやろうとしていた割に、という印象が最後に残るのは、なんとなく残念だった。さらにこの桃肢さんという人物がたいへんに魅力的なのは分かるのだが、実際のところこの人の考え方というのが、今一つ筋が通っていない気もした。もっと流されやすい人物ならともかく、これだけ誘惑がある中で、自覚も多少ある様子でありながら最終的にバカであるというのは、男性の側からの考え方であるように思う。要するに都合がよすぎる感じである。これだけのことがあると、もっと人間関係は壊れると思うので、そういうのを丁寧に描くと、また作品の感じが変わったかもわからない。まあ、それが青年漫画かもしれないのだけど。
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