彼是ず~~~っと止めてたテレビアニメ版「めぞん一刻」の感想文……実に6年振りになりますか。(汗)
MXでの再放送はとっくの昔に終了し、いっそここで打ち止め~なんて一時はヘタレた事考えてました。
だが後10話、たった10話残して止めるのは、良いのか自分それで!?と反省しましたんで、頑張って完結目指します。
11月にBSNHKプレミアムでルーミックアニメ特集するしな!
という訳で6年の時を遡り、前回の続きです。
・第86回「衝撃の一夜!明日菜のサラダ記念日!?」脚本:高屋敷英夫 コンテ:吉永尚之 演出:茂木智里 作画監督:中嶋敦子
…前回、三鷹と決闘する積りが、警官に追い駆け廻された挙句、ぐでんぐでんに酔っ払って帰路に着いた五代君。
土砂降りの雨の中、時計坂駅の前で彼を待って居たのは、険しい顔の響子さんだった。
「飲んでるんですね…」と呟いた響子さんに、五代が頬を激しく引っ叩かれるという前回ラストシーン。
五代と三鷹が響子さんを巡り決闘しようとしたなんて裏事情、その場に居なかった響子さんには知る由も有りませんから。
大事な卒業試験を明日に控えて、酒をしこたま飲んで帰って来たんじゃ、誤解されても仕方ないとはいえ、響子さんお願いだから話を聴いてやって。(汗)
「大学を卒業して保父になろうとしてたんじゃないんですか!?貴方自身で決めた事でしょう!?」
五代が一生懸命に追う道なら、それが何であろうと響子さんは応援する積りで、晩御飯を用意して待って居たというのに、つくづく間の悪い五代君です。
「私はもう知りません!!大学を卒業したいなら、もう少し真面目にしたらどうですか!!」
言うだけ喚いた後、響子さんは土砂降りの町中へ。
ずぶ濡れで駆けて行く響子さんを、呆然と見送る五代、彼の隣には彼女が置き去りにした傘が、雨水を貯めて転がっていました――ここでタイトルコール、舞台は三鷹のマンションに変わります。
五代同様ぐでんぐでんに酔っ払って帰宅した三鷹を待っていたのは、叔父から勝手に決められた婚約者の明日菜お嬢様だった。
自室のドアの前に酔っ払って座り込んだままの三鷹の体を心配し、部屋へ入るよう根気強く説得する明日菜お嬢様。
だが素面でない彼は、普段のフェミニスト振りを保てなくて、彼女に冷たい態度で当たる。
「…貴女こそ、こんな所で何してんです?未だ僕らは結納交わしたわけじゃないんだから、赤の他人でしょ?」
妙な噂が立ったら困るから早く帰れ、拒絶する三鷹に明日菜お嬢様は、結納の件で訪ねて来た事を告げるが、今の彼に「結納」の二文字は禁句。
途端に不貞腐れて「結納の事なら叔父にでも訊いてくれ」と嘲笑う三鷹、「どうせ自分は何時も蚊帳の外なんだから」と…。
三鷹にとっては政略結婚で、明日菜お嬢様は好きな相手じゃないですからね~、寄って集って意に沿わない結婚に追い込まれる境遇、はっきり言って不憫。
ですが明日菜お嬢様にとっては、出会いは見合いでも、三鷹は恋しい御方…その彼が自分との結婚を心底嫌がってると初めて知った衝撃。
これまでもお嬢様は、他に付き合ってる女が居るのを承知で追い詰めて来たけれど…「三鷹さんと別れてください」と頼むため、響子さんに付き纏ったりしたけれど(汗)、何時か自分に振り向いてくれると信じてたんでしょう。
響子さんも怖いけど、明日菜お嬢様も良く考えたら恐ろしい女性です。
ぶっちゃけ「めぞん一刻」に登場する女性は、朱美さん以外全員ヤンデレ。
中でも明日菜お嬢様のヤンデレ度は頂上級なのですが、そんな彼女も三鷹から本気で冷たくされて、「結納を取り止める」事を決意します。
お嬢様、この世には伝わらない愛が有る事を、初めて知ったのですね。
泣いてその場から走り去るお嬢様の後ろ姿を見詰め、つい「助かった…!」と呟いてしまう三鷹さんは正直者。(笑)
彼女が忘れていった飼い犬のサラダちゃんに、「おまえの御主人は良い人だなぁ…」なんて話しかけるが、三鷹さん、残念ながら未だ終わってないぞ、目の前の円らな瞳のポメラニアンは、貴方の運命を変える小悪魔だ。
サラダちゃんを扉の外に残して部屋に入っていれば或いは、なんて考えたりもしたけれど、既に響子さんの心が五代の方へ向いていた以上、彼が畜生にならない限り、道は変わらなかったでしょうなー。
誰にでも優しい人は何時だって損をするのよ。
その頃、明日菜お嬢様は、マンションの階段を下りて行く途中で、サラダちゃんを忘れた事に気付く。
慌てて引き返した彼女が見たのは、開きっ放しのドアから、男の脚だけが突き出た光景。
お嬢様が去った後、酔いが回った身体を動かしてドアを開けたものの、電池が切れて玄関に倒れこんだんですね~。
熟睡する三鷹さんの周りで、心配気に鼻を鳴らすサラダちゃん、そこへやって来たのが部屋の主のペットで、同じポメラニアン犬の「マッケンロー」だ。
愛らしい瞳のサラダちゃん(♀)を、飼い主仕込みの白い歯で誘うマッケンロー(♂)…2匹の間に恋心が芽生えるのは漫画的に必然だった。
横たわる御主人そっちのけで、部屋にサラダを連れ込むマッケンロー…去勢しときゃ良かったのに三鷹さん。
明日菜お嬢様としては、今は飼い犬の事より、倒れたままの三鷹さんが心配。
ベッドまで運ぼうとするも女の細腕では無理、肩を貸して持ち上げようとし、押し倒される形で三鷹と偶然キスをしてしまう!
一晩中降り頻った翌朝は快晴、明日菜お嬢様は、ベッドで眠る三鷹を起こさないよう、静かに退室する――マッケンローとの別れを惜しむサラダちゃんを連れて。
家への帰り道、車内で気まずそうに俯く明日菜お嬢様に、運転手の君田さんは前を向いて運転しながら、「昨夜の事は奥様や旦那様には報告致しません」と告げる。
明日菜お嬢様は君田さんの心遣いに感謝し、同時に「済みません」と小さく謝るのだった。
一方、喉の渇きを覚えて目を覚ました三鷹さんは、ダイニングテーブルにホカホカ湯気が立つ朝御飯が並んでるのを見て、昨夜自分が明日菜お嬢様を押し倒してキスをした事を思い出す。
……その後の記憶は朧気で思い出せない、三鷹さんの胸に宿る不安と焦り。
この時の朝御飯、原作では夏だった為、焼き茄子の煮浸しっぽい物が描かれてたのですが、アニメでは冬に変えられた為、焼き鮭等の温かい料理に変更されてます。
何れにしてもお嬢様らしく良妻教育をきっちり受けてるなーと感じられる料理の出来栄え、ヤンデレにさえ目を瞑れば、若くて美人で家事が得意なんて、理想のお嫁さんですわ。
はっきり言ってアニメ版の明日菜お嬢様は、原作より瞳がパッチリと可憐で若々しく、響子さんと並んでも全く引けを取らない。
原作の明日菜さんは、響子さんより年下なのに、老け顔に描かれていて、見た目から脇役だった。
舞台は変わり一刻館では、愉快な住人達とゆかりお婆ちゃんが、卒業試験を受けに大学へ向かう五代君を、威勢の良いエールで送り出していた。
「え~~五代君の来年の健闘を祈って~~~フレー!!フレー!!ごーだーい!!!」
来年の健闘…何時もながら縁起の悪い住人達のおちょくりを受ける五代の反応は、何時もと違って頗る鈍い。
彼が元気を無くす理由の殆どは管理人さん、そういえば今朝は見送りにも参加してなかった…察しを付けた住人達は管理人室に直行し、問題の彼女を問い詰める。
一「で、何が有ったんだい?」
朱「五代君の目、真っ赤だったわよー」
四「昨夜はあまり寝付かれない様でしたからねえ、お婆ちゃん?」
婆「さあ?おら、ぐっすり寝とったけんなぁ~」
……祖母より赤の他人の四谷さんの方が、五代の様子を気に懸けてる理不尽。(笑)
煩い野次馬達にせっつかれた響子さんは、昨夜酔っ払って帰った五代に怒り、思い切り引っ叩いた事情を話した。
それを聞いて一瞬黙る住人達と婆ちゃんだったが、直ぐに管理人さんの肩を持つように言った。
婆「管理人さん、気にするこたね!悪いのは裕作らかんなぁ」
朱「そうよね!飲んで来たんじゃねェ~」
四「…しかしぃ、これで五代君は間違い無く、卒業出来ませんなぁ…!」
四谷さんの言葉を聞いて、思わず息を呑む響子さんだったが、住人達はお構いなく喋り続ける。
朱「気にしちゃダメ!管理人さん!」
一「うん!五代君には同情の余地が無い!」
四「やはり卒業は無理でしょうなぁ~」
一「そりゃあ、管理人さんに殴られちゃ…」
朱「ものすごい精神的ダメージよねェ~」
言葉では管理人さんの味方に回りつつ、かえって罪悪感を煽るスタイルが素敵。(笑)
唯一お婆ちゃんだけは、肉親って事で五代に厳しく当たる気持ちや、将来の嫁と認める管理人さんへの思いから、真に味方してる様に聞こえるけど、他は故意に罪の意識持たせてますな。(笑)
演じてる声優さん達の演技が巧いから、聴いてて各々の気持ちが伝わり、可笑しいったらない。
千葉繁さんや三田ゆう子さんなんか、うる星でのキャラのイメージ引き摺るかと心配してましたが、どちらも四谷さんと朱美さんを、声の演技でしっかりキャラ立ててました。
一刻館の住人達が無責任なトークをかましてる頃、五代は大学で試験の答案に向かっていた。
しかし頭の中に浮かぶのは昨夜の響子さん、「貴方自身の問題でしょ!?」との言葉が重く響く。
再び一刻館に舞台を移しての夕刻、買い物から帰った一の瀬さんは、庭で響子さんが掃き掃除をしている場に出くわす。
「どうしたんだい?そんな所で…五代君でも待ってんのかい?」
「べ、別にィ~!」
「またぁ~~♪どっかで飲んだくれてんじゃないのぉ~?」
「まさか!明日も試験有るんですよ!」
「じゃあ……逃げたんだ!」
「まさか…」
一の瀬さんに図星を突かれて誤魔化すも、態度でバレバレの響子さんが可愛いv
そんな彼女をニヤニヤ笑いで追い詰める一の瀬さん…片っぽの買い物袋に酒瓶ギッシリ詰まってるのが細かい描写。(笑)
その頃、当の五代君はといえば、バイト先のキャバレー「バニー」に居たのでした。
キャバレー内の託児所の子供達は、大好きな五代お兄ちゃんが来てくれて大喜び。
子供達の笑顔に包まれる彼は、大学を卒業して保父になるという自分の夢を、見詰め直すのだった――ここまでAパート。
アイキャッチを挟んでBパート――結局、五代君は夜が明けても一刻館に帰って来ませんでした、てとこからスタート。
一「とうとう帰って来なかったねぇ」
四「ちゃんと試験を受けるんでしょうかねぇ~」
朱「無理よォ、管理人さんに引っ叩かれたんじゃあ」
早朝から庭を掃いてる響子さんを間に会話する住人達…ジロジロ見られる立場に置かれ、彼女としては甚だ居心地が悪い。
「何ですか?」と不機嫌を隠さず問う彼女に、住人達は意地の悪い笑顔で口々に答えるのだった。
四「目標を失ったわけですな、五代君は」
朱「――よね!管理人さんの為に、卒業して保父になろうとしてたんだし!」
響「そういう仕事の選び方って、おかしいんじゃないですか!?」
朱「そーいう男なのよ、あいつは」
一「根性無いからねぇ~」
響「根性が有るとか無いとかの…!」
四「その男が覗いてますよ」
響「え?」
四谷さんが向いてる方へ一同倣えば、塀の陰より恐る恐る顔を覗かせる五代がそこに居た。
…住人達に見付かった際の五代の笑い方が、如何にも小市民キャラっぽくて上手い。
めぞん以前は小者な脇役を演じる事が多かった二又一成氏、めぞん以降は生きるのが下手な実直青年キャラの声を多くアテてます。
二又一成氏にとってアニメめぞんの五代役は、演技の転機になった作品かもしれない。
その後、一刻館では婆ちゃんを交え、五代の部屋にて彼から事情を聴取。
五代が話すには、試験を受けた後でバイト先のキャバレーに泊まったとの事。
そこで彼は一晩考え、「暫く一刻館には戻らず、キャバレーに泊まり込んで、ベストを尽くす(試験に集中する)」と決意したとか。
一「ここもベストだと思うけどね」
朱「お酒も有るし」
四「私も居るし」
…勉強に集中したいなら、一刻館から脱出するのが最善策だと、私でも思うな。(笑)
普段は優柔不断の五代だが、ここは退けない正念場、住人達の引き留めに屈さず、当日の内に一刻館を出て行く事にした。
門の前で五代を見送る婆ちゃんと響子さん、その様子を2階の窓から見詰めるギャラリー(一の瀬朱美四谷)。
「時々着替えとか取りに戻る」と言う五代に、とにかく試験を頑張るよう励ます響子さん。
本当は他に言いたい事有っても、今の彼女は未だ素直になれない。
知ぃってぇ~るぅ~のにぃ♪目が合う度~♪何かが邪魔を~♪してぇ~るのぉ~♪(映画めぞん主題歌「硝子のキッス」より)
片や婆ちゃんは門を出た五代を呼び止めて忠告した。
「裕作!人間素直が肝心だ!…無理をすると碌なこた無ぇ!」
婆ちゃん!その言葉は響子さんの方に言ってくれ!
アニメでゆかり婆ちゃんは暗い場面の賑やかし役として重宝されてたが、どうせなら響子さんから素直な気持ちを引き出す役割させて欲しかったな。
ゆかり婆ちゃん言うには「響子さんは若い時の自分と同じ立場」って話(笑)、アニメで原作より出番増えたものの、大体は一刻館の住人達と一緒に騒ぐだけの役割で物足りなかった。
話は再び三鷹側へ、明日菜お嬢様から「あの夜の真実」を訊き出そうと、彼女の自宅を訪ねた三鷹さん。
だが応対したお母様が仰るには、彼女は暫く伊豆の別荘で過ごすとの事…置き手紙には意味深な内容が認められていた。
「三鷹さんも、私も、未だ気持ちの整理がついておらず、結納を交わすのは時期尚早かと思います。
どうか、結納の日取りを延期してください。」
三「延期?……確か昨夜は結納を取り止めると言った筈…!」
「延期」、意味は決まった期日を延ばす事、一晩経っての微妙なニュアンス変更に、不安を益々募らせる彼だった。(笑)
「まさか昨夜酔って最後まで致したとか…?俺ならやりかねん!!」
普段、女ったらしな人は、己が信じられず気の毒だね、て言うか余罪が有ると見た。(笑)
けど子供が出来てたら、ちゃんと責任取る覚悟で居る三鷹さん偉い、女ったらしだけど生粋のフェミニストってのは、諸星あたるとかにも通ずるかな。
とは言え真実が解明されるまでは、彼女の御家族に洗い浚い打ち明ける勇気は無い。
お母様から何が有ったか問われる前に退散した彼は、駐車場で車を磨いていた運転手から、穴の開くほど顔を見詰められる。
挨拶も無く無言で居る態度から、九条家お付きの運転手は、どうやら三鷹に悪印象を抱いてる様だった。
背中を向けた運転手が、いきなり喋り出す。
「私……九条家で20年運転手を勤めさせて頂いて居ります。
明日菜お嬢様が赤ん坊の頃から、ずっとです。
小さい頃から素直で…とてもお優しい方でした。
昨夜の事も…お嬢様は貴方を庇って、御自分一人の胸にしまって居られるのだと思います」
一方的に喋り終えた運転手が、再び黙々と車磨きに専念する。
その背中に三鷹は明日菜お嬢様の行き先を尋ねた、言葉を聞いた運転手が穏やかに微笑む。
余談ですが、九条家の広大な日本家屋内客間に、旧型ストーブがぽつんと置いてある光景に、趣を感じました。
季節の興趣が削がれるのを理由に、本宅では冷暖房とか入れないのかなと想像。
ちなみに原作ではこのシーン夏なのでストーブは無い。
季節を感じる小道具が置いてあるのは絵的に良いですね。
更に余談ですが、三鷹の愛車は原作だと日産・シルビアだったのが、アニメでは番組スポンサーへの配慮でトヨタ自動車のソアラに変更されたとか…wiki情報より。
舞台は変わってキャバレー「バニー」では、赤ん坊のオムツを替えてる五代に、マネージャーの飯岡さんが、試験中なのにアパートへ帰らない訳を訊いていた。
ここより自分の部屋で勉強した方が集中出来るだろうって…いやいや飯岡さん、彼が借りるアパート室には生ける「ポルターガイスト(騒々しい亡霊)」が棲み着いてるから。
それに五代にとっては漸く訪れたアイデンティティの目覚め、とは言え彼から「今まで自分は好きな女性の為に頑張って来たが、己1人支えられない人間に、他人を支える事は出来ないと悟った。だから彼女から離れて独りでやってみたい」とか何とか哲学的な話をブツブツ聞かされても、事情を知らない飯岡さんは鼻白むだけだ。
「…でよぉ、とどのつまり女に逃げられたのか、逃げて来たのか、どっちだ?」
「そーいう事じゃなくてねぇ~!」
「逃げて来たんなら絶対に戻んなよ!とにかく、相手が頭下げるまで逃げまくれ!男と女はよ、追っかけた方が負けなんだぜ。逃げて逃げて逃げまくれ!」
「それで追っかけて来なかったら、どーすんですかぁ!?」
「バッキャロー!!そん時は潔く全速力で駆け戻って土下座すんだよ!!女なんざ単純だからイチコロだぜ!」
言いたいだけ言って猛然と退出する飯岡さん格好良い!!
彼の人生が窺える深いお言葉、特に赤字で表した部分は人生の格言として心に置きたい。(笑)
ちなみに「飯岡」さんってのはアニメ版で名付けられたもので、原作では名前も苗字も出て来ないキャラです。
この頃の留美子作品って、話の中で特に困らなければ、レギュラーでも名無しで通してたのよな。(例:うる星キャラの両親達)
ファンとしては記事で挙げ易いから名前が付けられて有難い。
またまた場面変わって、舞台は潮騒響く伊豆の海辺。
三鷹は明日菜お嬢様を追い駆け、海を見晴らす九条家の別荘まで来ていた。
偶々庭で大輪の菊に水を遣っていたお嬢様は、三鷹の突然の訪問に驚いて如雨露を落としてしまう。
階段を上がる途中で、転がり落ちる如雨露を拾った三鷹は、アポ無の訪問を詫びた。
「済みません、明日菜さん…お帰りが待てなくて」
別荘前の浜辺で二人きり、海の蒼を見詰めたまま、暫く無言になる。
最初に口を切ったのは三鷹だった、「朝御飯、美味しかったです」との彼の言葉に、頬を染めて喜ぶ明日菜お嬢様。
雰囲気が幾分和らいだ所で、三鷹は本題に入った。
「あの日、一晩中居たのか」尋ねる三鷹に、「はい」と控え目に、しかしはっきりと頷く明日菜お嬢様。
「何か失礼な事をしたんでしょうね?」
「お気になさらないで。私、何とも思ってませんから」
お嬢様に背を向け話を聴いてた三鷹が、頭に手を当てて静かに絶望の表情を浮かべる。(笑)
「あの!…何も覚えていらっしゃらないのですか?」
「いえ!全然ってわけじゃ、ないんですが…!」
「私は…忘れません、女ですから!でも安心なさって!結婚を迫ったりしません…ここまで来て頂いただけで充分です」
打ち寄せる白い波が、貝殻を1つ、お嬢様の足元に運ぶ。
まるで昼ドラの様だ。(笑)
運転手といい、お嬢様といい、三鷹さんを静かに追い詰めてってますね~。
さながら打ち寄せる波の様に。
結婚を迫ったりしないと言いながら、最後まで取り止めなかった辺りに、お嬢様の御執心を感じるのでした。
恋する心はサスペンス。
またまたまた舞台はキャバレー「バニー」に戻る。
思い切り余談ですが、自分が勤める会社までの道程に、キャバレー「バニー」ってのが実際に在りまして、人が近くを通り掛かる度に「バニーちゃん居るよ~!」と声掛けしてます。
令和になっても未だに昭和な趣きのキャバレーが残ってるのは感慨深い、めぞんファンが多く訪れたりしてんじゃないかと…。
閑話休題、キャバレーの事務所では、仕事&勉強疲れから、五代が机に突っ伏して眠っていた。
その横ではマネージャーの飯岡さんが、美人キャバ嬢を相手にお喋り。
飯岡さんから五代の事情を聴き、眠る彼に同情の視線を送るキャバ嬢のお姉さん。
すると五代は寝言で「響子さん…響子さん…」と繰り返し呟いた。
「響子さんって誰?」とキャバ嬢のお姉さんが尋ねる、まー当然気になりますわな。
「こいつの女(スケ)だろ」と、明け透けに答えた飯岡さんは、「この様子じゃ長くはもたない」と予感するのだった。
…実際長くもたなかったし、原作にも在る描写だけど、この回の五代の「響子さんからの独立宣言」って、一体何だったんだろうなーって、今でも思ってる。
あとこれはアニメ版への不満なんすが、卒業試験と保育士試験の勉強が、ごちゃ混ぜに描かれていて気になる。
キャバレー「バニー」で五代が広げてた参考書は保育士試験の物、卒業試験の方が先に来るのに大丈夫なのか?
既に最終回の期日と後に続く映画公開日が決まってた為、アニメ版では五代の大学卒業と保育士試験が同時進行で描かれるという無茶振り。
五代君でも卒業はギリギリ出来そうって事にして、保育士試験だけに集中した方が、展開が散漫にならずに済んだと思うのだ。
(個人的評価)脚本△ 演出△ 作画○ …次回予告は五代君、一の瀬さん、四谷さん、朱美さん、タイトル読みは響子さんという、お馴染みのメンバーでした。
【続】
9年振りのレビューって事で、つい長々と書いてしまった…次回からテンポ良く短めに纏める様に致します、でないと終わらせられない。(汗)
MXでの再放送はとっくの昔に終了し、いっそここで打ち止め~なんて一時はヘタレた事考えてました。
だが後10話、たった10話残して止めるのは、良いのか自分それで!?と反省しましたんで、頑張って完結目指します。
11月にBSNHKプレミアムでルーミックアニメ特集するしな!
という訳で6年の時を遡り、前回の続きです。
・第86回「衝撃の一夜!明日菜のサラダ記念日!?」脚本:高屋敷英夫 コンテ:吉永尚之 演出:茂木智里 作画監督:中嶋敦子
…前回、三鷹と決闘する積りが、警官に追い駆け廻された挙句、ぐでんぐでんに酔っ払って帰路に着いた五代君。
土砂降りの雨の中、時計坂駅の前で彼を待って居たのは、険しい顔の響子さんだった。
「飲んでるんですね…」と呟いた響子さんに、五代が頬を激しく引っ叩かれるという前回ラストシーン。
五代と三鷹が響子さんを巡り決闘しようとしたなんて裏事情、その場に居なかった響子さんには知る由も有りませんから。
大事な卒業試験を明日に控えて、酒をしこたま飲んで帰って来たんじゃ、誤解されても仕方ないとはいえ、響子さんお願いだから話を聴いてやって。(汗)
「大学を卒業して保父になろうとしてたんじゃないんですか!?貴方自身で決めた事でしょう!?」
五代が一生懸命に追う道なら、それが何であろうと響子さんは応援する積りで、晩御飯を用意して待って居たというのに、つくづく間の悪い五代君です。
「私はもう知りません!!大学を卒業したいなら、もう少し真面目にしたらどうですか!!」
言うだけ喚いた後、響子さんは土砂降りの町中へ。
ずぶ濡れで駆けて行く響子さんを、呆然と見送る五代、彼の隣には彼女が置き去りにした傘が、雨水を貯めて転がっていました――ここでタイトルコール、舞台は三鷹のマンションに変わります。
五代同様ぐでんぐでんに酔っ払って帰宅した三鷹を待っていたのは、叔父から勝手に決められた婚約者の明日菜お嬢様だった。
自室のドアの前に酔っ払って座り込んだままの三鷹の体を心配し、部屋へ入るよう根気強く説得する明日菜お嬢様。
だが素面でない彼は、普段のフェミニスト振りを保てなくて、彼女に冷たい態度で当たる。
「…貴女こそ、こんな所で何してんです?未だ僕らは結納交わしたわけじゃないんだから、赤の他人でしょ?」
妙な噂が立ったら困るから早く帰れ、拒絶する三鷹に明日菜お嬢様は、結納の件で訪ねて来た事を告げるが、今の彼に「結納」の二文字は禁句。
途端に不貞腐れて「結納の事なら叔父にでも訊いてくれ」と嘲笑う三鷹、「どうせ自分は何時も蚊帳の外なんだから」と…。
三鷹にとっては政略結婚で、明日菜お嬢様は好きな相手じゃないですからね~、寄って集って意に沿わない結婚に追い込まれる境遇、はっきり言って不憫。
ですが明日菜お嬢様にとっては、出会いは見合いでも、三鷹は恋しい御方…その彼が自分との結婚を心底嫌がってると初めて知った衝撃。
これまでもお嬢様は、他に付き合ってる女が居るのを承知で追い詰めて来たけれど…「三鷹さんと別れてください」と頼むため、響子さんに付き纏ったりしたけれど(汗)、何時か自分に振り向いてくれると信じてたんでしょう。
響子さんも怖いけど、明日菜お嬢様も良く考えたら恐ろしい女性です。
ぶっちゃけ「めぞん一刻」に登場する女性は、朱美さん以外全員ヤンデレ。
中でも明日菜お嬢様のヤンデレ度は頂上級なのですが、そんな彼女も三鷹から本気で冷たくされて、「結納を取り止める」事を決意します。
お嬢様、この世には伝わらない愛が有る事を、初めて知ったのですね。
泣いてその場から走り去るお嬢様の後ろ姿を見詰め、つい「助かった…!」と呟いてしまう三鷹さんは正直者。(笑)
彼女が忘れていった飼い犬のサラダちゃんに、「おまえの御主人は良い人だなぁ…」なんて話しかけるが、三鷹さん、残念ながら未だ終わってないぞ、目の前の円らな瞳のポメラニアンは、貴方の運命を変える小悪魔だ。
サラダちゃんを扉の外に残して部屋に入っていれば或いは、なんて考えたりもしたけれど、既に響子さんの心が五代の方へ向いていた以上、彼が畜生にならない限り、道は変わらなかったでしょうなー。
誰にでも優しい人は何時だって損をするのよ。
その頃、明日菜お嬢様は、マンションの階段を下りて行く途中で、サラダちゃんを忘れた事に気付く。
慌てて引き返した彼女が見たのは、開きっ放しのドアから、男の脚だけが突き出た光景。
お嬢様が去った後、酔いが回った身体を動かしてドアを開けたものの、電池が切れて玄関に倒れこんだんですね~。
熟睡する三鷹さんの周りで、心配気に鼻を鳴らすサラダちゃん、そこへやって来たのが部屋の主のペットで、同じポメラニアン犬の「マッケンロー」だ。
愛らしい瞳のサラダちゃん(♀)を、飼い主仕込みの白い歯で誘うマッケンロー(♂)…2匹の間に恋心が芽生えるのは漫画的に必然だった。
横たわる御主人そっちのけで、部屋にサラダを連れ込むマッケンロー…去勢しときゃ良かったのに三鷹さん。
明日菜お嬢様としては、今は飼い犬の事より、倒れたままの三鷹さんが心配。
ベッドまで運ぼうとするも女の細腕では無理、肩を貸して持ち上げようとし、押し倒される形で三鷹と偶然キスをしてしまう!
一晩中降り頻った翌朝は快晴、明日菜お嬢様は、ベッドで眠る三鷹を起こさないよう、静かに退室する――マッケンローとの別れを惜しむサラダちゃんを連れて。
家への帰り道、車内で気まずそうに俯く明日菜お嬢様に、運転手の君田さんは前を向いて運転しながら、「昨夜の事は奥様や旦那様には報告致しません」と告げる。
明日菜お嬢様は君田さんの心遣いに感謝し、同時に「済みません」と小さく謝るのだった。
一方、喉の渇きを覚えて目を覚ました三鷹さんは、ダイニングテーブルにホカホカ湯気が立つ朝御飯が並んでるのを見て、昨夜自分が明日菜お嬢様を押し倒してキスをした事を思い出す。
……その後の記憶は朧気で思い出せない、三鷹さんの胸に宿る不安と焦り。
この時の朝御飯、原作では夏だった為、焼き茄子の煮浸しっぽい物が描かれてたのですが、アニメでは冬に変えられた為、焼き鮭等の温かい料理に変更されてます。
何れにしてもお嬢様らしく良妻教育をきっちり受けてるなーと感じられる料理の出来栄え、ヤンデレにさえ目を瞑れば、若くて美人で家事が得意なんて、理想のお嫁さんですわ。
はっきり言ってアニメ版の明日菜お嬢様は、原作より瞳がパッチリと可憐で若々しく、響子さんと並んでも全く引けを取らない。
原作の明日菜さんは、響子さんより年下なのに、老け顔に描かれていて、見た目から脇役だった。
舞台は変わり一刻館では、愉快な住人達とゆかりお婆ちゃんが、卒業試験を受けに大学へ向かう五代君を、威勢の良いエールで送り出していた。
「え~~五代君の来年の健闘を祈って~~~フレー!!フレー!!ごーだーい!!!」
来年の健闘…何時もながら縁起の悪い住人達のおちょくりを受ける五代の反応は、何時もと違って頗る鈍い。
彼が元気を無くす理由の殆どは管理人さん、そういえば今朝は見送りにも参加してなかった…察しを付けた住人達は管理人室に直行し、問題の彼女を問い詰める。
一「で、何が有ったんだい?」
朱「五代君の目、真っ赤だったわよー」
四「昨夜はあまり寝付かれない様でしたからねえ、お婆ちゃん?」
婆「さあ?おら、ぐっすり寝とったけんなぁ~」
……祖母より赤の他人の四谷さんの方が、五代の様子を気に懸けてる理不尽。(笑)
煩い野次馬達にせっつかれた響子さんは、昨夜酔っ払って帰った五代に怒り、思い切り引っ叩いた事情を話した。
それを聞いて一瞬黙る住人達と婆ちゃんだったが、直ぐに管理人さんの肩を持つように言った。
婆「管理人さん、気にするこたね!悪いのは裕作らかんなぁ」
朱「そうよね!飲んで来たんじゃねェ~」
四「…しかしぃ、これで五代君は間違い無く、卒業出来ませんなぁ…!」
四谷さんの言葉を聞いて、思わず息を呑む響子さんだったが、住人達はお構いなく喋り続ける。
朱「気にしちゃダメ!管理人さん!」
一「うん!五代君には同情の余地が無い!」
四「やはり卒業は無理でしょうなぁ~」
一「そりゃあ、管理人さんに殴られちゃ…」
朱「ものすごい精神的ダメージよねェ~」
言葉では管理人さんの味方に回りつつ、かえって罪悪感を煽るスタイルが素敵。(笑)
唯一お婆ちゃんだけは、肉親って事で五代に厳しく当たる気持ちや、将来の嫁と認める管理人さんへの思いから、真に味方してる様に聞こえるけど、他は故意に罪の意識持たせてますな。(笑)
演じてる声優さん達の演技が巧いから、聴いてて各々の気持ちが伝わり、可笑しいったらない。
千葉繁さんや三田ゆう子さんなんか、うる星でのキャラのイメージ引き摺るかと心配してましたが、どちらも四谷さんと朱美さんを、声の演技でしっかりキャラ立ててました。
一刻館の住人達が無責任なトークをかましてる頃、五代は大学で試験の答案に向かっていた。
しかし頭の中に浮かぶのは昨夜の響子さん、「貴方自身の問題でしょ!?」との言葉が重く響く。
再び一刻館に舞台を移しての夕刻、買い物から帰った一の瀬さんは、庭で響子さんが掃き掃除をしている場に出くわす。
「どうしたんだい?そんな所で…五代君でも待ってんのかい?」
「べ、別にィ~!」
「またぁ~~♪どっかで飲んだくれてんじゃないのぉ~?」
「まさか!明日も試験有るんですよ!」
「じゃあ……逃げたんだ!」
「まさか…」
一の瀬さんに図星を突かれて誤魔化すも、態度でバレバレの響子さんが可愛いv
そんな彼女をニヤニヤ笑いで追い詰める一の瀬さん…片っぽの買い物袋に酒瓶ギッシリ詰まってるのが細かい描写。(笑)
その頃、当の五代君はといえば、バイト先のキャバレー「バニー」に居たのでした。
キャバレー内の託児所の子供達は、大好きな五代お兄ちゃんが来てくれて大喜び。
子供達の笑顔に包まれる彼は、大学を卒業して保父になるという自分の夢を、見詰め直すのだった――ここまでAパート。
アイキャッチを挟んでBパート――結局、五代君は夜が明けても一刻館に帰って来ませんでした、てとこからスタート。
一「とうとう帰って来なかったねぇ」
四「ちゃんと試験を受けるんでしょうかねぇ~」
朱「無理よォ、管理人さんに引っ叩かれたんじゃあ」
早朝から庭を掃いてる響子さんを間に会話する住人達…ジロジロ見られる立場に置かれ、彼女としては甚だ居心地が悪い。
「何ですか?」と不機嫌を隠さず問う彼女に、住人達は意地の悪い笑顔で口々に答えるのだった。
四「目標を失ったわけですな、五代君は」
朱「――よね!管理人さんの為に、卒業して保父になろうとしてたんだし!」
響「そういう仕事の選び方って、おかしいんじゃないですか!?」
朱「そーいう男なのよ、あいつは」
一「根性無いからねぇ~」
響「根性が有るとか無いとかの…!」
四「その男が覗いてますよ」
響「え?」
四谷さんが向いてる方へ一同倣えば、塀の陰より恐る恐る顔を覗かせる五代がそこに居た。
…住人達に見付かった際の五代の笑い方が、如何にも小市民キャラっぽくて上手い。
めぞん以前は小者な脇役を演じる事が多かった二又一成氏、めぞん以降は生きるのが下手な実直青年キャラの声を多くアテてます。
二又一成氏にとってアニメめぞんの五代役は、演技の転機になった作品かもしれない。
その後、一刻館では婆ちゃんを交え、五代の部屋にて彼から事情を聴取。
五代が話すには、試験を受けた後でバイト先のキャバレーに泊まったとの事。
そこで彼は一晩考え、「暫く一刻館には戻らず、キャバレーに泊まり込んで、ベストを尽くす(試験に集中する)」と決意したとか。
一「ここもベストだと思うけどね」
朱「お酒も有るし」
四「私も居るし」
…勉強に集中したいなら、一刻館から脱出するのが最善策だと、私でも思うな。(笑)
普段は優柔不断の五代だが、ここは退けない正念場、住人達の引き留めに屈さず、当日の内に一刻館を出て行く事にした。
門の前で五代を見送る婆ちゃんと響子さん、その様子を2階の窓から見詰めるギャラリー(一の瀬朱美四谷)。
「時々着替えとか取りに戻る」と言う五代に、とにかく試験を頑張るよう励ます響子さん。
本当は他に言いたい事有っても、今の彼女は未だ素直になれない。
知ぃってぇ~るぅ~のにぃ♪目が合う度~♪何かが邪魔を~♪してぇ~るのぉ~♪(映画めぞん主題歌「硝子のキッス」より)
片や婆ちゃんは門を出た五代を呼び止めて忠告した。
「裕作!人間素直が肝心だ!…無理をすると碌なこた無ぇ!」
婆ちゃん!その言葉は響子さんの方に言ってくれ!
アニメでゆかり婆ちゃんは暗い場面の賑やかし役として重宝されてたが、どうせなら響子さんから素直な気持ちを引き出す役割させて欲しかったな。
ゆかり婆ちゃん言うには「響子さんは若い時の自分と同じ立場」って話(笑)、アニメで原作より出番増えたものの、大体は一刻館の住人達と一緒に騒ぐだけの役割で物足りなかった。
話は再び三鷹側へ、明日菜お嬢様から「あの夜の真実」を訊き出そうと、彼女の自宅を訪ねた三鷹さん。
だが応対したお母様が仰るには、彼女は暫く伊豆の別荘で過ごすとの事…置き手紙には意味深な内容が認められていた。
「三鷹さんも、私も、未だ気持ちの整理がついておらず、結納を交わすのは時期尚早かと思います。
どうか、結納の日取りを延期してください。」
三「延期?……確か昨夜は結納を取り止めると言った筈…!」
「延期」、意味は決まった期日を延ばす事、一晩経っての微妙なニュアンス変更に、不安を益々募らせる彼だった。(笑)
「まさか昨夜酔って最後まで致したとか…?俺ならやりかねん!!」
普段、女ったらしな人は、己が信じられず気の毒だね、て言うか余罪が有ると見た。(笑)
けど子供が出来てたら、ちゃんと責任取る覚悟で居る三鷹さん偉い、女ったらしだけど生粋のフェミニストってのは、諸星あたるとかにも通ずるかな。
とは言え真実が解明されるまでは、彼女の御家族に洗い浚い打ち明ける勇気は無い。
お母様から何が有ったか問われる前に退散した彼は、駐車場で車を磨いていた運転手から、穴の開くほど顔を見詰められる。
挨拶も無く無言で居る態度から、九条家お付きの運転手は、どうやら三鷹に悪印象を抱いてる様だった。
背中を向けた運転手が、いきなり喋り出す。
「私……九条家で20年運転手を勤めさせて頂いて居ります。
明日菜お嬢様が赤ん坊の頃から、ずっとです。
小さい頃から素直で…とてもお優しい方でした。
昨夜の事も…お嬢様は貴方を庇って、御自分一人の胸にしまって居られるのだと思います」
一方的に喋り終えた運転手が、再び黙々と車磨きに専念する。
その背中に三鷹は明日菜お嬢様の行き先を尋ねた、言葉を聞いた運転手が穏やかに微笑む。
余談ですが、九条家の広大な日本家屋内客間に、旧型ストーブがぽつんと置いてある光景に、趣を感じました。
季節の興趣が削がれるのを理由に、本宅では冷暖房とか入れないのかなと想像。
ちなみに原作ではこのシーン夏なのでストーブは無い。
季節を感じる小道具が置いてあるのは絵的に良いですね。
更に余談ですが、三鷹の愛車は原作だと日産・シルビアだったのが、アニメでは番組スポンサーへの配慮でトヨタ自動車のソアラに変更されたとか…wiki情報より。
舞台は変わってキャバレー「バニー」では、赤ん坊のオムツを替えてる五代に、マネージャーの飯岡さんが、試験中なのにアパートへ帰らない訳を訊いていた。
ここより自分の部屋で勉強した方が集中出来るだろうって…いやいや飯岡さん、彼が借りるアパート室には生ける「ポルターガイスト(騒々しい亡霊)」が棲み着いてるから。
それに五代にとっては漸く訪れたアイデンティティの目覚め、とは言え彼から「今まで自分は好きな女性の為に頑張って来たが、己1人支えられない人間に、他人を支える事は出来ないと悟った。だから彼女から離れて独りでやってみたい」とか何とか哲学的な話をブツブツ聞かされても、事情を知らない飯岡さんは鼻白むだけだ。
「…でよぉ、とどのつまり女に逃げられたのか、逃げて来たのか、どっちだ?」
「そーいう事じゃなくてねぇ~!」
「逃げて来たんなら絶対に戻んなよ!とにかく、相手が頭下げるまで逃げまくれ!男と女はよ、追っかけた方が負けなんだぜ。逃げて逃げて逃げまくれ!」
「それで追っかけて来なかったら、どーすんですかぁ!?」
「バッキャロー!!そん時は潔く全速力で駆け戻って土下座すんだよ!!女なんざ単純だからイチコロだぜ!」
言いたいだけ言って猛然と退出する飯岡さん格好良い!!
彼の人生が窺える深いお言葉、特に赤字で表した部分は人生の格言として心に置きたい。(笑)
ちなみに「飯岡」さんってのはアニメ版で名付けられたもので、原作では名前も苗字も出て来ないキャラです。
この頃の留美子作品って、話の中で特に困らなければ、レギュラーでも名無しで通してたのよな。(例:うる星キャラの両親達)
ファンとしては記事で挙げ易いから名前が付けられて有難い。
またまた場面変わって、舞台は潮騒響く伊豆の海辺。
三鷹は明日菜お嬢様を追い駆け、海を見晴らす九条家の別荘まで来ていた。
偶々庭で大輪の菊に水を遣っていたお嬢様は、三鷹の突然の訪問に驚いて如雨露を落としてしまう。
階段を上がる途中で、転がり落ちる如雨露を拾った三鷹は、アポ無の訪問を詫びた。
「済みません、明日菜さん…お帰りが待てなくて」
別荘前の浜辺で二人きり、海の蒼を見詰めたまま、暫く無言になる。
最初に口を切ったのは三鷹だった、「朝御飯、美味しかったです」との彼の言葉に、頬を染めて喜ぶ明日菜お嬢様。
雰囲気が幾分和らいだ所で、三鷹は本題に入った。
「あの日、一晩中居たのか」尋ねる三鷹に、「はい」と控え目に、しかしはっきりと頷く明日菜お嬢様。
「何か失礼な事をしたんでしょうね?」
「お気になさらないで。私、何とも思ってませんから」
お嬢様に背を向け話を聴いてた三鷹が、頭に手を当てて静かに絶望の表情を浮かべる。(笑)
「あの!…何も覚えていらっしゃらないのですか?」
「いえ!全然ってわけじゃ、ないんですが…!」
「私は…忘れません、女ですから!でも安心なさって!結婚を迫ったりしません…ここまで来て頂いただけで充分です」
打ち寄せる白い波が、貝殻を1つ、お嬢様の足元に運ぶ。
まるで昼ドラの様だ。(笑)
運転手といい、お嬢様といい、三鷹さんを静かに追い詰めてってますね~。
さながら打ち寄せる波の様に。
結婚を迫ったりしないと言いながら、最後まで取り止めなかった辺りに、お嬢様の御執心を感じるのでした。
恋する心はサスペンス。
またまたまた舞台はキャバレー「バニー」に戻る。
思い切り余談ですが、自分が勤める会社までの道程に、キャバレー「バニー」ってのが実際に在りまして、人が近くを通り掛かる度に「バニーちゃん居るよ~!」と声掛けしてます。
令和になっても未だに昭和な趣きのキャバレーが残ってるのは感慨深い、めぞんファンが多く訪れたりしてんじゃないかと…。
閑話休題、キャバレーの事務所では、仕事&勉強疲れから、五代が机に突っ伏して眠っていた。
その横ではマネージャーの飯岡さんが、美人キャバ嬢を相手にお喋り。
飯岡さんから五代の事情を聴き、眠る彼に同情の視線を送るキャバ嬢のお姉さん。
すると五代は寝言で「響子さん…響子さん…」と繰り返し呟いた。
「響子さんって誰?」とキャバ嬢のお姉さんが尋ねる、まー当然気になりますわな。
「こいつの女(スケ)だろ」と、明け透けに答えた飯岡さんは、「この様子じゃ長くはもたない」と予感するのだった。
…実際長くもたなかったし、原作にも在る描写だけど、この回の五代の「響子さんからの独立宣言」って、一体何だったんだろうなーって、今でも思ってる。
あとこれはアニメ版への不満なんすが、卒業試験と保育士試験の勉強が、ごちゃ混ぜに描かれていて気になる。
キャバレー「バニー」で五代が広げてた参考書は保育士試験の物、卒業試験の方が先に来るのに大丈夫なのか?
既に最終回の期日と後に続く映画公開日が決まってた為、アニメ版では五代の大学卒業と保育士試験が同時進行で描かれるという無茶振り。
五代君でも卒業はギリギリ出来そうって事にして、保育士試験だけに集中した方が、展開が散漫にならずに済んだと思うのだ。
(個人的評価)脚本△ 演出△ 作画○ …次回予告は五代君、一の瀬さん、四谷さん、朱美さん、タイトル読みは響子さんという、お馴染みのメンバーでした。
【続】
9年振りのレビューって事で、つい長々と書いてしまった…次回からテンポ良く短めに纏める様に致します、でないと終わらせられない。(汗)