――昨日はかつて無い程の大雪でした!!!!
…と、驚き叫び終わったところで、
前回の続きです。
予定している次の時刻に近付いたんで席を立ち、テーブル噛付いて離れようとしねェルフィを引き摺って店を出た。
席を立つ時に目にした、ウェイターの安堵の表情が極めて心に痛かった…もうこの店の敷居は2度と跨げねェ。
「や~~~ひっじょお~~~に美味い肉であった♪♪」
「…でしょおね。あれだけの食い付きだもん…お陰であの店、恥しくて2度と行けないわ。」
「食い放題の店でいっぱい食わなきゃ損じゃねェか!!ゾロもナミもえんりょし過ぎだぞ!!あれじゃちっとも元取れてねェよ!!」
「………代りにあんたが10人分は元取ってくれたから充分よ。」
「あんだけ凄まじい食欲見せ付けられりゃあ萎えるよな。」
店を出た所で便所に寄ってくとルフィが言ったんで(←食い過ぎだ…)、その間ナミとホテル内に在る中庭で待つ事にした。
ナミが言うには『花のホテル』を謳ってるらしく、呼名の通り種々雑多の花咲乱れる見事な庭園だった。
花に詳しくねェんでポインセチアくれェしか見当付かなかったが、冬だってのに赤白黄色と此処だけ春爛漫だった。
「ただ、どぉぉんと大きな花壇を置くんじゃなくて、小さな花壇を幾つも鏤めて、隙間を縫って観回れる様なってるのが良い演出よねェv」
「ああ…まァ…そうなのか?」
「まるで花から花へと渡る蝶にでもなったような、そんな気持ちしない?」
「ああ…まァ…そうかもな。」
頗るこの中庭がお気に召したナミは、ビビにも観せたいからと俺に携帯渡して撮影を頼んで来た。
中央に配置された小さな噴水を前に、ホテル正面玄関をバックにして、シャッターを切る。
パシャリと、まるでカメラで撮ったみてェな音が響く。
穏やかな日差しの下、花に囲まれて笑うその顔には、日頃の凶暴性なぞ微塵も見えず、黙って笑ってりゃあこんなに可愛いのになァとしみじみ感じた。
中庭で待つ事10分後、漸くルフィが戻って来た。
大急ぎでクルーザーの乗船所に駆け付ける。
出航スレスレの所でパスポートを提示し、何とか飛び乗れた。
天気良く日差しがうららかだっつう事で船外のデッキに座る。
「おい、あの木…もしかして桜じゃねェか?」
迎賓館っつったか…象牙色した建物の横に在る並木を指差しナミに聞く。
「本当だ。あの木は……ヤマザクラじゃない?…春にはお花見クルーズなんて出来て良さそうねv」
「お花見かー♪桜は良いよな♪パーッと紙吹雪みてーに散ってきれいで、俺、大好きだ!!」
おめェの場合、どっちかっつうと『花より団子』だろうとツッコミ入れたかったが、野暮になるんで黙っておいた。
まァしかし、俺も桜は好きだ。
あの散り際の見事さは見習うべき生き方だろう。
また、桜降る下で呑む酒が格別で。
上等な酒に一片浸してぐいっと喉に流し込む…これぞ風雅の極み!
「…何よその高校生らしからぬオヤジセンスは?」
ナミが小馬鹿にしたよに一笑する……嫌だね、風雅を解さねェ人間は。
底が見えるくれェ水の澄んだ運河を、クルーザーがゆったりと進む。
片道12分……目指す風車の島、『キンデルダイク』に辿り着いた。
昨日程ではないが、此処の地区は今日観て来た中で1番の人通りが有った。
「風車にお花畑にと、如何にもオランダをモデルにして造ったハウステンボスらしい風景が撮れるって事で、撮影スポットとしては場内随一の人気だからね。」
成る程ナミの言う通り、3基並んだ風車に一面の花畑っつう長閑な田園風景。
決して広くはない道の至る所で撮影会が行われていて、カメラを掻い潜りながら通るのに結構苦労した。
「入国口側ってのも有ると思うわ。時刻的にも丁度観光バスが多く着く頃だし…最初に訪れたベストスポットって事で、どうしても撮影客で道ごった返しちゃうのよね~。」
風車を観たルフィがしきりに「でっけー、でっけー」と騒いでいる。
確かにでけェ、遠くからだとまるきし玩具だが、近くで見ると中々迫力だ。
濃茶の胴体に取り付けられた4本の羽根が唸りを上げて回っている。
元々干拓の為に設置されてたっつうのも頷ける程力強く感じられた。
3人で入国口手前の風車をバックに写真を撮る。
風車に縦縞模様した花畑に、遠景には赤煉瓦の城…これ観せてオランダ行って来たと言い張っても結構バレねェかもなっつう絵が撮れた。
「今は冬でパンジーが咲いてるけど、春はチューリップ、夏はペンタス、秋はマリーゴールド…季節が変われば違う花で埋まるわ。チューリップの頃に撮れば正にオランダの様な風景が撮れるでしょうね。」
「見渡す限りのチューリップ畑か~~~!!良いな♪『フランダースの犬』みてェだ♪♪」
「あの作品の舞台はベルギーよ、ルフィ。」
花畑に囲まれ1軒の家(?)が建っていたんで中に入ってみた。
17世紀のオランダ農家を再現したっつうそこはチーズの売店だった。
オランダから直輸入されたっつうチーズがずらり約30種類、早速ルフィが試食に手を出してく。
冷奴風に葱カツブシ醤油かけて和えたクリームチーズが有ったんで、また一口取って食った。
いやこれは確かに美味ェ、帰ったらこんなしてツマミに食おうと考え1つ買ってく。
売店横屋外には茶店も設えてあった。
主に女客が数人、パラソルの下で花を眺めつつ、茶を飲んでいる。
ルフィが自分達も寄ってこうと強請ったが、予定が遅れるからと素気無くナミに断られた。
3時までにニュースタッド地区に入らないとっつう事で、急いで近くに在るバス停へと向う。
……………………昨日と同じく忙しねェなァ、もう。
もっとも乗物で移動出来る分、昨日よか未だマシだが。
バス待ちしてる間、また近くに在る売店で時間潰しをした。
『リンダ』っつうテディベア専門店だ……って何で此処まで来て『テディベア』なんだよ!?
「『テディ』の愛称の元、ルーズベルト大統領がオランダ系の人だったそうよ。」
へェそうかって……待て、今一納得しかねるぞ、その理由!
店ん中は兎に角縫ぐるみの山、山、山だった。
いや縫ぐるみ以外にも服やら菓子やらノートやら豊富に揃ってはいたが、それら全部が愛らしくも熊なんだ!
右向いても左向いても前向いても後向いても上下斜め向いても熊熊熊熊だらけなんだよ…!!
テディベア専門店なんだから当り前だ!?――そりゃ確かにな、悪ィとは言わねェさ。
だからってこんな女好みなファンシーショップに男がのこのこ入れるかっっ。
…しょうがねェから1人バス停に有るベンチで待つ事にした。
ルフィは結構嬉々として店中観て回ってるようだ。
店先にガキの身長程ビッグな縫ぐるみを見付け、大はしゃぎで写真を撮ったりしている。
何を見てもしても楽しめる、無敵の性分羨ましい限りだぜ。
「それがな!ゾロ!!ナイアンローデって城には、もっともっともぉぉっと世界一でっけェ~~熊が、赤マント着て座ってたんだぜ!!後な後な!!すんげェェかっけェェェかっちゅうや剣まで飾ってあったんだ!!!側に立ってた案内の女に聞いたら、本当に昔の物だっつうんだよ!!!他にも馬車乗った熊の人形だとかも置いてあったぞ!!ナミと一緒に写真とって来たから後で観せてやるな!!」
「……………いや……俺はいい。」
ぶすっと不機嫌を露にして応えてやる。
バスが来たんで店に居る筈の2人を呼んだら、何処行ったのか姿が見えねェ。
焦って大声出して探せば、どうやら入国口の方まで出てたらしく、揃って息せき切って戻って来やがった。
「ジャイアントベアは座高が3.6mも有るんだって!衣装がクリスマス限定のに変ってて可愛かったァvv」
「ああそいつは満足いくデカさで御2人様宜しかったですなァァァ~。」
「……って何乗ってからずぅっとカリカリしてんのあんた??」
「どうしたゾロ??腹減ってカルシウム足りてねェのか??」
「お前らが勝手に行方不明なりやがるから、俺は運転手や他の客待たせてまで呼びに行った事で、えらい肩身の狭い思いしたんだよっっ…!!!」
人を待たせた自覚無く、バスん中で2人呑気にケタケタと。
片や我儘キング、片や我儘クィーン…お守りする側の苦労もちったァ考えろってのっっ。
俺達以外にも数人の家族客乗せて、ガタガタ揺れながらバスは進む。
ナミの言った通り、確かに昼になって客が増えた。
やっぱり或る程度の客が入ってた方が活気付いて良いよな。
赤や黄色に紅葉した並木通りを抜け橋を渡り、秋桜に縁取られた運河の横でバスは停まった。
此処が『ニュースタッド』っつう訳か。
「ああもう予定より10分以上オーバーしてる!!…2人共!!一気に攻略目指すから!!行くわよ!!」
「おーー!!!」
ナミの勇ましい掛け声に続いてルフィが気勢を上げる。
俺は……………まァ………………適当に相槌を打っといた。
先ずはバス停から通りに入って直ぐの館、『ミステリアス・エッシャー』。
騙し絵で有名なオランダの版画家エッシャーの作品を、3D映画にして体感させる施設だそうだ。
感想は――
「何つうか………今一だったよな。」
「ってか正直物足んねェ。」
「エントランスは凝ってて期待が持てたんだけどな。」
「天井続いてる階段とか、あっち遊べたら良かったのにな。」
「映像も凝ってたとは思うぜ…ただ、3チャンネルの道徳ドラマでも観てる気分になったっつうか…。」
「すごく悪くもなく良くもなく、50点くれェだなーー。」
その次に隣の館の『天星館』に入った。
占星術をテーマにしたプラネタリウムショーをやる施設…だそうだ。
感想は――
「何つうか………これも今一だったよな。」
「ってか正直つまんねェ。」
「いや『つまんねェ』っつうのは言い過ぎだろルフィ。プラネタリウムは綺麗だったし、まァまァ良かった。」
「占いったってすぐ終っちまったし。」
「正直占いはどうでも良いと思うけどな。」
「20点だ20点。司会の女、俺じゃなくてとなり座ってたガキ指名したし。」
「そりゃおめェ、評価に私怨入ってんじゃねェか?」
次にそのまた隣の『フライト・オブ・ワンダー』に入った。
これは……何だろうな?電飾されたライド乗って、空飛ぶナミ…もとい魔女になった気分で冒険する施設……らしい。
感想は――
「何つうか………きっぱりガキ向きだよな。」
「ってか正直解んねェ。」
「小学3年生くれェまでのガキには丁度良いんじゃねェか?むしろ悪くねェと思う筈だ。」
「話全然見えねェよ。何言ってんだかちっとも解んなかった。」
「ライド乗ってっつうのは結構新鮮に思えたぜ。他に無ェからな。」
「35点くれェだなー。後300キロ速くしてツイスト回転も加えてくれりゃ完ぺきだ!」
「いや死ぬだろ、それじゃ。」
「…ってあんた達さっきから無礼な評論してんじゃないわよ!!!!」
「いや評論っつうか……正直な『感想』だ。」
「じゃあナミは楽しかったのかー!?」
「私も…………まァ…………何て言うか……。」
「「見ろ!あんま楽しくなかったんじゃねェか!!」」
「うっさい!!!それなりに楽しんでたわよ!!!」
「せめてもうちっと刺激が欲しいよなァ。」
「富○急くれェ頑張って欲しいよなァ~~。」
「良いのよ!!!此処は遊園地じゃないんだから!!!」
「じゃ、遊園地じゃなきゃ何なんだよ?」
「『
街』よ『
街』!!!――兎に角!!後1館残ってんだから、行くわよ!!!」
最後に俺達が入ったのは『ホライゾン・アドベンチャー』、大洪水を体感させるっつう施設だった。
今迄のがアレだったから、あんま期待せずに入る。
丁度開演時間に当ったらしく、殆ど待たずに済んで有難かった。
プレショールームで前説明のビデオを観せられる。
国土の1/4が海面下っつうオランダの水との戦いを纏めた映像だった。
妙に湿気の漂ったシアター席に案内される。
ってか席が水で濡れてるし…何だ?水掛かるショーなのか??
シアター中央にはオランダの街並みと運河のセット、結構凝った造りだ。
映像が始まる、木靴職人を通して語られる話が……これまたエッシャー館で観たのと一緒で、やけに説教臭くてまたかと頭を掻いた。
……何て考えてたら……その内、シアター全体が霧で覆われた。
続いて雷鳴、豪雨、荒狂う波、竜巻、嵐、天変地異のオンパレードが怒涛の勢いで襲い掛かる。
そしていきなりの振動――これにはちょっと驚いた。
シアター前面に滝の様な水が降り注ぎ、そしてまた元の静けさを取り戻してショーは終った。
感想は――
「中々迫力有ったよね!」
「まァ、面白かったな。」
「うん!面白かったな!!」
「『実際の水を800tも使って大洪水を再現』……成る程ねー、やっぱ金懸けた施設は違うわね!」
「ただ、梅雨時とか冬向きじゃあねェよな。」
「あれでもっと席ゆらしてくれたら楽しかったんだけどな~~!!ってか全部これくれェ激しくしてくれりゃあ良いのに!!」
「それは色々お金の問題とか有るし……第一、この街の雰囲気に合わなくなるから止めた方が良いと思うわ。」
「確かにジェットコースターなんかが似合う場所じゃねェよな。」
「まァでも面白かった♪80点くれェはやっても良いな!!うん!!」
――ルフィの、本日1番の高得点が出た所で、以下次回。
【
その22に続】
…いえ、私が言ってる訳じゃありません。(汗)
文句はルフィとゾロにどうぞ!!(←殴)
や、済みません、色々失礼言って済みません。(汗)
ただこれはやっぱりキャラ考えての、ルフィゾロナミが行ってアレ体験したら、そう言うんじゃないかな~~と想像したものです、あくまで。(汗)
…でもね正直思う事は有る。
あのアミューズメント施設が在るからこそ、ハウステンボスが遊園地だっつう誤解を更に生むんだよな~と…とは言え、来る取っ掛かりにはなるかもだし……過去、自分もエッシャー館に惹かれて来た事考えるとね。(汗)
乱暴な意見を承知で言うけど、もしも金銭的に苦しくて何か切捨てなきゃ~って時は、このアミューズメントから行って欲しいなぁと……店やホテルや庭園とかよりもね。(汗)
身勝手な意見、誠に失礼しました。(土下座)
写真の説明~、キンデルダイクの風車と花畑…ハウステンボスのシンボルとして、パレスと並び最も有名でしょうね。
これは一昨年のクリスマスシーズンに撮った物…なんだけど、11月上旬に行ったんで、未だ秋の花だったりします。(笑)
おまけのアニメワンピース感想――
本日のアニメワンピースは……
――面白かった…!!!!
いや、アクアラグナの迫力有る映像がねー、後細かい話だけど、原作ではナミが軽く屋根渡って行ったのが、如何にも勇気振り絞って…っつう感情が伝わって来たのが良かったと思いましたv