月一更新と決めたアニメめぞん一刻の感想――頑張れ!今年こそ全話終わらせるんだ!!
自分を鼓舞し終えたところで前回に続き、アニメめぞん第91回のレビューです。
・第91回「響子ガク然!朱美と五代は意外な関係!?」脚本:高屋敷英夫 コンテ:小島多美子 演出:澤井幸次 作画監督:中嶋敦子
香ばしく焼けた食パンが軽快な音を立ててトースターから顔を出す。(懐かしい、全自動トースター)
一家で囲む楽しい朝食…の筈が、その日の千草家は朝から険悪ムードだった。
食卓の塩を取ってくれとお父さんが頼むも、娘の響子さんは知らんぷり。
お父さんが「聞えないのか!!」と声を荒げれば、響子さんが怖い顔で睨み付ける。
娘の怒気に怯んで、何も言えなくなるお父さん。
可愛い娘が実家に戻って以来、毎日笑顔で過ごして居たのに…
母「あんたが悪いのよ!勝手に音無家に行って、管理人断ったりするから!」
父「それのどこが悪いってんだ?現に一週間も職場放棄しとるじゃないか!首にならん方がおかしいんだ!」
玄関で妻から渡された鞄を引ったくり、憤然と会社へ向かうお父さん。
…可哀想に、娘の複雑な気持ちを理解出来なかったばかりに…。
台所では父の見送りを拒否して食器を洗う響子さんの姿。
手を泡だらけにしながら物思いに耽る――昨日、義父(惣一郎さんのお父さん)から電話で聞いた、一刻館の新管理人の事が気懸りだった。
『新しい管理人なんて、皆があっさり受け入れる筈ないわ!あたしが居なきゃ絶対務まらないんだから!』
自分の居場所を奪うかもしれない新管理人の存在に、大いなる不安を抱く響子さん。
――と、ここで今回のタイトルコールが入る。
一方の一刻館では、廊下に散乱するゴミを、五代改め新管理人が、ひたすら片付けていた。
そんな姿を横目で見ながら、お構いなく宴会する四谷朱美一の瀬さん達。
無間地獄かな?(笑)
五「もおお!!いいかげんにしてくださいよ!!これじゃ管理人さん迎えに行く暇無いじゃないか!!」
一「時に、こずえちゃんとはきっちり別れたのかい?」
五「何です!いきなり!?」
一「別れない限り、何度迎えに行ったって――」
朱「む~だ!む~だ!」
…そうですねえ~、本を正せば、響子さんに告白しといて、長年こずえちゃんとよろしくやってる優柔不断さに、相手は御立腹なんだから。
一「いっそ、こずえちゃんと一緒になればぁ?」
朱「まんまと定職にも有り付けた事だしさァ」
五「…他人事だと思って!――とにかく!!ここでの宴会は止めてください!!」
下卑た笑い声を立てる3人に腹を立てた五代は、廊下での宴会禁止を申し渡すと、ゴミ袋を両手に持って玄関から出て行った。
その頃、響子さんは時計坂駅に降りたものの、一刻館に行くか止めるか思案していた。
新しい管理人の事が気になるも、一刻館の住人達とは顔を合わせ辛い。
茶々丸のマスターからそれとなく状況を訊こうと寄ってみれば、昼間っから一の瀬朱美四谷達が酒盛りをしていた。
五代から廊下での宴会を禁止された住人達は、新管理人への愚痴を言い合うため、茶々丸へ飲みにやって来たのだ。
お互いに呆然と顔を見詰める響子さんと一刻館の住人達。
響「…ど、どうしたんですか?皆さん…」
一「あんたねぇ~~~!」
朱「よく顔出せたわねェ~、さんざん迷惑かけといて!」
四「ま~あま~あ朱美さん!そんなにぽんぽん言っちゃ、お気の毒ですよ!」
四谷氏が、気色ばむ女性達を宥めつつ、響子さんの肩を抱いて、席に案内する。
四「管理人さんもお詫びに奢ってくださると言ってる事だし…ねv管理人・さんv」
響「…言ってません!そんな事!」
四「がちょーん!」
…とまぁ、四谷さんがお道化てくれたお陰で一触即発のムードを回避、住人達と響子さんは話し合いの席に着いたのだった。
一「…で、どうする積り?まさかぁ…このまんま管理人辞めるなんて事はぁ…」
響「そんな積りは…だけど…」
一「五代君と、こずえちゃんの決着かい?」
朱「あと百年くらいかかるんじゃないのォ~?」
カウンター席に座った響子さんに、マスターが珈琲を差し出す。
彼女の隣に来た朱美さんが、カウンターに背を向けて腰掛けた。
朱「あんたがそうやって逃げてる間に、2人が密着しちゃったりしてェ~」
響「そうなったら、それまでですわ!」
朱「そっかー!…じゃ、あたし、五代君…誘惑しちゃおっかなァー」
ライターで咥え煙草に火を点けつつ言った言葉に、響子さんが目を見開いた。
後ろのボックス席で、四谷氏と一の瀬さんが、聞える様な(笑)ヒソヒソ声で会話する。
四「聞きましたか一の瀬さん!」
一「興味深い発言だったねー!」
朱「最近ど~も添い寝だけじゃ物足りなくてさァ~…良いのォ?やっちゃっても…ほんとにやっちゃうよ…?」
俯く響子さんの顔を、朱美さんが下から覗き込む。
意地悪い視線を振り払う様に、珈琲を一気に飲み干した響子さんは、意地を張って言い放った。
「そうなったら、それまでですわ!!」
「へー?良いんだ?――じゃ、誘っちゃお!」
「どうぞ!!御勝手に!!」
朱美さんの顔を睨みつけて、響子さんが言う。
再び張り詰める空気の中、響子さんが「お邪魔しました!」と言って、コート片手に店を出ようとする。
その背中に朱美さんの「(珈琲代)350円!」の声がかかった。
振り返り、カウンターに小銭を叩き付けた響子さんは、マスターからお釣りを貰うのも待たずに、扉に向かう。
一「ちょっと!帰りに一刻館へ寄って、新管理人に挨拶してったらぁ?」
響「…その積りです!新しい方にはお気の毒ですが、私の職場復帰はまだまだ先ですから!!」
朱「毎度ありィ~!」
振り向きざまに宣言し、店を猛然と出て行く響子さんに、朱美さんが嫌味を飛ばす。
…ここの硝子戸に浮かんだシルエットが、段々と遠ざかってく様子を表現し小さくなる絵がリアル。
作画は今観ても非常に素晴らしいです。
それはさて置き話の続き――響子さんが立ち去った後、店内では朱美さんの発言を聞いたマスターが、目を丸くして驚いていた。
「しかし意外だねぇ~!朱美ちゃんは五代君の事を…」
「やぁだ!軽いジョークよォ~!」と笑い飛ばす朱美さんに、一の瀬さんが「あんたが言うと、冗談に聞こえないんだよ!」と、尤もな感想を述べる。
それを聞いた朱美さんは、珍しく真顔になって言うのだった。
「良いのよ!あれくらい脅かさないと、意地張って帰って来ないんだから!」
「厄介な女…!」と吐き捨て、灰皿に吸い殻を擦り付ける仕草が格好良い。
終盤の朱美さんは発言から何から惚れちゃうほど格好良かった。
ところで最終回のネタバレになってしまうが、朱美さんは茶々丸のマスターと結婚する。
原作では既にこの話を描いてた辺りで決めてたのか、朱美さんの発言を聞いて焦るマスターが見て取れる。
アニメでもそういう描写を観る事が出来たら、最終回の二人の結婚に視聴者が納得いったんではと思うが、アニメ版のマスターは終始うる星のコタツネコの様に泰然自若としたキャラだった。
茶々丸を出た響子さんは、一刻館への坂を上っていた。
朱美さんの挑発を受けて心は荒れ模様、『やりたきゃ勝手にやればいいのよ!そんな誘惑に乗る様な男だったら、今度こそ見限ってやる!!』と心中で息巻くものの、段々と不安になって来る。
彼女が好きになった男はとにかく気が弱いから、誘惑されたら乗るかもしれない…そんな心配を胸に、一刻館の様子を塀からそっと窺う――すると何故か五代がエプロンを着けて庭を掃除していた。
ドアを開けて賢太郎が飛び出して来る。
「管理人さーん!!ねえ!管理人さん!トイレの鍵壊れてるよ!」
「解ったから、あんまり管理人管理人言うなよ!!」
「だって管理人さんじゃない!」
2人の会話から新管理人の正体が五代だと解り、「焦って損した」と呟く響子さん。
館内の電話が鳴り、中へ引っ込む五代と賢太郎を見届けた響子さんは、そのまま一刻館に立ち寄らず立ち去るのだった。
…アニメの終盤になって、急に出番が増えた賢太郎。(笑)
それもこれも二階堂が登場しないから…しかし前回も書いたが、初期に比べ成長した姿で登場させるべきだった。
声変わりしないのはアニメ的にしょうがなくても、演技と脚本と演出で成長を感じさせて欲しかった。
賢太郎だってこれまで色んな経験して来たろうに…。
しかし意外にも「二階堂」って便利キャラだったのね。
その晩、いつもの如く玄関前で酒盛りをする一の瀬さんと四谷氏は、朱美さんが珍しく顔を出さない事を不思議がる。
「ね〜え、朱美さん、どこ行っちゃったんだあい?」
「でいとだとか言ってましたが」
「デートぉ〜?誰とぉ〜?」
「存じませんが!」
「五代君だったりしてぇ!」
「昼間の発言、本気だったりして」
「冗談だよぉ〜〜、たださあ、朱美さんの場合、冗談を実行したりするからぁ〜」
「有りそうな話ですなあ〜」
酔っぱらい二人を喜ばせる様なアクシデントが、この後一本の電話を先触れに勃発する。
「電話代わりました!五代ですけど…あ、朱美さん!?」
「近くに居るのォ~、どこだと思う?」
「酔ってるんですか!?」
「お金持ってェ~、これから言う場所に来てェ~」
「金ぇ~~!?冗談は止めてくださいよぉ~!俺、仕事中なんだから!」
「いいわよ…もう死んでやるからァ~~~~!!」
突然、バイト先のキャバレーにかかって来た朱美からの電話、五代が出てみれば向うは泥酔してる上に「死んでやる!!」と泣き出す始末。
尋常じゃない様子が心配になり、バイトを早上がりして、相手が指定する場所へ急行したらば、そこはラブホテルで慄く五代だった。
受付のおばちゃんから階と部屋№を教えて貰った五代は、エレベーターの中で自分がここへ呼び出された理由について考える――こ、これはもしや…誘われてるんじゃあ!?
朱美のハニートラップの可能性に思い至り、戦慄する五代だったが、今更後には戻れないと部屋のドアを叩く…相手の反応は無い。
鍵が開いてたので中へ入る、すると自分を呼び出した女は、大量の空ボトルに囲まれた回転ベッドの上で熟睡していた。
…原作と違い、朱美さん、服をきっちり着てるのね。(笑)
テレビアニメなので規制が入ったのは残念だが、それでも寝乱れた朱美さんの姿は悩ましい。
思わず唾を飲み込む五代だったが、そこは真面目でチキンな彼の事、魅惑的な女体を極力目に入れず、声をかけた。
だが酔い潰れた彼女は声をかけるだけでは起きない…肩を軽く揺するも覚醒せず、痺れを切らした五代はベッドに上がり、大声で相手の名前を呼びつつ、女の身体を強く揺さぶった。
すると寝惚けた女の両腕が五代の首に巻き付き、あれよと言う内に引っ張られた五代の身体は、朱美の身体に覆い被さる態勢になっていた。
ここでタイミング良く朱美が目覚める――いきなりバチーン!!!と頬を叩かれる五代。
「何すんのよォ!!!…何であんたがこんな所に居るのよ!?」
「何だよ!!!人を呼びつけといて!!」
「呼んだ!?あたしが!?…何で?」
「俺が訊いてんの!!!」
「あーーーー……悪い悪い!ちょっと飲み過ぎちゃってさァー、その隙に男が帰っちゃったんだ!…ハハハハハ!――しっかしよく飲んだなァ~!さて、帰るかァ~~!」
あっけらかんと笑う朱美の姿を見て、拍子抜けする五代。
ハニートラップではなかった事に安堵しつつ、少しガッカリしている彼だった。
…原作の「一発やってく?」の台詞は、やはりカットされたか。(笑)
同じ頃、こずえちゃんは夜の街を友人二人と歩いていた。
歩きながら交わす話題は、こずえちゃんを廻る二人の男についてらしい。
どちらを選ぶべきか悩むこずえちゃんに、友人二人は率直な意見を述べた。
「迷う事無いじゃない!収入が安定してる男を選んだら良いって!」
「そおよ!苦労するわよ~!」
「…でもォ…私が付いてないと五代さん…」
「そおいう根っからの甲斐性無は、誰が付いてたって駄目よ!」
「そうかなァ?」
「そうよ!」
…会話の内容から察するに、今迄もこずえちゃんの恋人として、さんざん話題に上ってたんでしょうな~五代。
で、友人達は彼女から相談受ける度に、「もー別れちゃいなよー!」と諭し、その度にこずえちゃんは「でも五代さんには私が必要」と答えてたんでしょう。
目に見える様です。(笑)
こずえちゃんを含めた三人の女子は、ラブホテル街に入る角の手前で、痴話喧嘩をしてる様子のカップルに出くわす。
「何グズグズしてんのよ!!」と女に引っ張られる男と目が合い、こずえちゃんの足が止まる――男は自分の恋人である五代だった。
五代との親密な関係を見せ付ける様に身体を密着させた女が、「あら?こんばんは♪」とこずえに向かって嫣然と笑う。
女の方も見知った顔だ、五代と同じアパートに住む「朱美」だった。
五代の方でもこずえに気付いて顔を強張らせる。
夜の街で思いがけず出会った彼氏と彼女は、時が止まったかの如く暫し見詰め合った。
――ここでAパート終了のアイキャッチ。
CM挟んでBパート開始――
夜が明けて一刻館の庭を掃く五代は、昨夜こずえちゃんとホテル街で遭遇した件について考えていた。
友人二人に自分と知り合いか尋ねられた彼女は、呆然とした顔で「知らない人」と答え、振り返りもせずに通り過ぎて行った。
『傷付いただろうなぁ…やっぱり…』
思い悩む五代の背後から、朱美が「おはよォ~~!どう!?爽やかァ~?」と明るく声をかける。
全く悪びれない態度の彼女に対し腹を立て、「爽やかなわけないでしょーが!何言ってんだよ!もー!」と答える五代。
「はて?こずえちゃんと目出度く別れられたのにィ~?」との朱美の発言を耳にして、玄関から飛び出して来る一の瀬さん…相変わらずの地獄耳だ。(笑)
「ちょっと、ほんとかい!?」
「十中八九フラれたみたいよォ」
「良かったじゃなぁ~~い!」と一の瀬さんから喜ばれるも、何故か面白く無さ気にそっぽを向く五代。
「しかしよく別れられたねぇ~?」
「そりゃもォ~ラブ――」
「朱美さん!!!」
「…何よォ!?」
「いいからちょっと!!」
「いいじゃな~い、聞かれたところで…」
「他人に言う事じゃないでしょ!!」
「なァにビクついてんのよォ!!」
「ビ!ビクついてなんか…!!」
庭の一角でヒソヒソ話し合う朱美と五代、その様子を見て一の瀬さんが怪しんだ。
「…あんたら何か有ったの?」
「有るわけ無いでしょ!!」
「そ!有ったら見直しちゃうけどねェ~、とにかく感謝してよね!あたしのお陰で決着ついたんだからさァ~!」
今回の件でこずえちゃんとの縁が切れた事を、まるで自分の手柄の様に朱美は語るが、五代の心中は複雑だった。
塵取りで枯葉を掻き集めながら考える、『こんな別れ方して良いんだろうか?』と――
未練がましく、廊下の共同ピンク電話から、こずえちゃん宅に電話をかけてみた。
だが、五代が「一度会って話したい」と訴えるも、電話の向こうの彼女に無言で切られてしまう。
「今の電話、誰からなの?」と訊く母に、こずえちゃんは「間違い電話」と答えた。
…ここは良く考えると不自然さを感じる。
こずえちゃん宅に電話をかけた五代は、彼女の前に家族の誰かから取り次いで貰ってる。
その家族は電話を受けた時点で誰なのか尋ねなかったのか?
こういう疑問を抱かせない為に、こずえちゃんが直接電話を受けた形にすれば良かったのに。
ぶっちゃけ、こずえちゃん側の様子をここで出す必要は感じなかった。
話を一刻館に戻して――こずえちゃんに電話を切られ、受話機を見詰める五代の背後から、一の瀬さんが鋭い言葉を放った。
「よりを戻す気かい?」
慌てて電話から離れる五代。
「い、いつから居たんですか!?」
多分、廊下に出た所から見張られてたんだと思うよ。(笑)
「朱美さんから事情は聴いた!」
仁王立ちで言う一の瀬さん、その後ろの死角で聞き耳を立てる朱美さん。(笑)
一「そっとしときな!誤解を解いたところで、もう一度別れ話をするんだろぉ?」
五「…そりゃあ…そうだけど…」
朱「たとえ別れても、美しい思い出として、彼女の胸に生き続けたいんだ、僕ぁ!――なーんて虫の良い事考えてんでは~?」
五「…そんなぁ…」
図星を指され言葉を失くす五代に、2人の女が辛辣な言葉をぶつけた。
「「バーカ!!」」
一方、惣一郎さんを連れて買い物に出ていた響子さんが家に帰ると、母から「一刻館の人がさっきから中でお待ちかねよ」と告げられた。
てっきり五代が来たと思い、リビングに急ぐ響子さん――しかし居たのは一の瀬さんだった。
「お!こんちは!」
「…一の瀬さんでしたか」とあからさまにガッカリする響子さんに、一の瀬さんが「五代君でなくて悪かったね!」とむくれる。
慌てて愛想笑いを浮かべる響子さん。(笑)
2人は対面する形で応接用のソファに座った。
珈琲を飲みながら、響子さんが一の瀬さんの話を聴く。
「え?別れた?」
「そ、完璧に!…だからさ…そろそろ戻って来たらぁ~~?」
「…でも」
「望み通りなったろ~お?」
「そんな!…私は別に…だけど、プロポーズしてたんでしょ?…それなのに…」
「あーそれ間違い!!単~なる間違い!!」
「だって、そんな話ちっとも…」
「あんたが聴かなかったろぉ~?」
煙草をふかしつつ、そう言った一の瀬さんは、ちらっと響子さんの顔を窺った後、彼女の自尊心を擽る様に付け加えた。
「それにねぇ~、やっぱ五代君が管理人じゃ、がさつで行き届かないし、何なら明日、五代君を迎えに寄越そうか?」
「いえ!そんな!一人で………一人で、帰ります」
…同性として時に厳しく当たる朱美さんと違い、一の瀬さんは響子さんを娘の様に扱い気を配る点が良いなと思う。
五代とこずえちゃんの件だけでなく、自分以外の人間が管理人として受け入れられてるのも、響子さんが臍を曲げてる原因な事に気付いてるのが偉い。
その夜、帰り支度をする響子さんに、背後から母が声をかけた。
「やれやれ助かった!…犬も連れて帰るんでしょうね?」
「置いて行くわけないでしょ!」
「はいはい!」と答えた後、襖を閉めて立ち去る母。
惣一郎さんだけが残った部屋で、窓の外を眺める。
夜の闇を通して黒く染まった窓に、自分の立ち姿がくっきり映っていた。(このシーン美しい)
『五代さん…あたしの事、こずえさんに話したのかしら…?』
響子さんが窓に映る自分に問い掛けてた頃、一刻館の五代の部屋では喜びの大宴会が開かれようとしていた。
「という訳でぇ~、管理人さんは明日、帰って来るーー!!」
一の瀬さんが高らかに発表するのを受けて、四谷氏と朱美さんが拍手で応じた。
五「それじゃ解ってくれたんですか!?管理人さん!」
一「だからさぁ~…いいね?こずえちゃんとの別れ話、交ぜっ返すんじゃないよぉ?」
朱「そうよォ~、あんたとあたしがラブホテルから出て来た事は事実なんだし!」
四「ら、らぶほてるぅ~~~!?五代君!君はなんて羨ましい事を!!」
五「出て来ただけですよ!!出て来ただけ!!」
四「入ったから出て来たんでしょーが!!」
…この遣り取り、前回の予告でもやってましたね。(笑)
朱「そおいや、目が覚めた時、覆い被さってたわよねェ~~?…何かした?」
五「するか!!」
朱「疚しい事が無いんなら、あたしの目を真っ直ぐ見てごらん」
五「恩を仇で返す様な真似しやがって…!」
真正面から顔を近付け睨む五代の唇を、朱美がいきなり奪う。
ディープキスを交わす二人を観て、四谷氏と一の瀬さんがどよめいた。
…五代君と朱美さん、何気に二度目のキスである。
五「な!な!…何すんじゃあああ!?」
一「見たよ!」
四「私も見たあああ!!」
朱「ささやかな、お礼v」
五「ホ、ホテル代さっさと返せっ!!」
朱「あら~あ?女にホテル代出させる気ィ?」
一「二人は出来てる!」
四「はい!」
五「あのなあ~~!」
一「明日は管理人さんが帰って来るってのに、なんてこったい…」
頷き合った一の瀬さんと四谷氏が、五代の顔をじーっと見る。
五「…ぼ、僕を信用しないのかぁ~!?」
一「だぁっ~はははは…!!マジになるんじゃないよぉ~♪あんたにそんな度胸有るわけないもん!…朱美さんもあんま悪ふざけすんじゃないよぉ?」
朱「冗談よ冗談v」
四「まーったく五代君は揶揄い甲斐が有りますなぁ~」
一「とにかく管理人さん復帰の前祝いだ!!」
「「「「かんぱ~~~い!!!!」」」」と喜びを爆発させる住人達…この夜まで彼らは、響子さんが明日には一刻館に帰って来て、平和になるものと信じ切っていた。
翌朝、電信柱前にゴミを出す五代の背中を、ランドセルを背負った賢太郎が、勢い良く叩いて声をかけた。
「おっはよー!!管理人さん!!」
「あのなぁ~~!!」
「解ってるって!!今日でクビになるんだろ!!」と顔だけ後ろを向いて叫び、そのまま元気に坂を駆け下りて行く賢太郎。
彼もまた、響子さんが一刻館に戻って来る事を知り、浮かれているのだった。
足から徐々に見えなくなる姿に向かい文句を零す五代だったが、今日の彼は賢太郎同様に朝から頗る機嫌が良い――だって響子さんが一刻館へ帰って来るんだから!!
沸々と込み上げる喜びに急かされ、体がじっとしてられない。
他人が見てないのを良い事に、彼は大人気無くはしゃいで道を戻るのだった。
…賢太郎の現在の年齢を考えなきゃ、ほのぼの良いシーンなんですけどね~~。
その日の昼、タクシーで一刻館へ戻ろうとした響子さんだったが、運悪く渋滞に巻き込まれ、駅前で降りて徒歩で向かう事にした。
しかし踏切を渡る途中で、こずえちゃんとばったり会ってしまう。
見るからに沈んだ様子の彼女に、響子さんはかける言葉が思いつかず、そのまま笑顔で立ち去ろうとしたものの、こずえちゃんから少し話が有ると言われ、2人で喫茶店に向かう事になった。
2人が喫茶店で話す間、外に繋がれ大人しく待つ惣一郎さん。
店に入った響子さんとこずえちゃんは、窓際の席に対面する形で座った。
ソーダ水をストローで掻き混ぜるこずえちゃんは、どう話し始めるべきか悩んでる様に見えた。
その姿を後ろめたい気持ちで眺めつつ、響子さんが珈琲に口を付ける。
「五代さん……五代さん、好きな人居たんですね…私、今まで何も知らなくて…」
『やっぱり五代さん…あたしの事言ったんだわ…!』
原作でのここの響子さんの描写は、後ろめたい気持ちで居つつも、五代が彼女ではなく自分を選んだ事に自尊心が満たされるという、複雑な人間の心理を感じさせて、非常に素晴らしかった。(笑)
響子さんが五代に心の底で望んでたのは、こずえちゃんに本当に好きな人が誰なのかを明かす事だったんではないかと。
でないと次回、五代を「意気地無し」って詰る理由が見付からない。
アニメの響子さんはこずえちゃんに対してひたすら同情してる様に描いてるけど、そうなると今度は次回五代を思いつく限り罵倒するキャラと繋がらなくなるんですよ。
次回の事は今は置いといて話の続き――
「…あの…あたし、何て言ったら良いか…」
「いいんです、もう!…少し、ショックだったけど…これで、決心が付きました!あたし…もう会わないからって…五代さんに、管理人さんから、そう伝えてください!」
喋ってる内に涙声になる彼女。
ソーダ水の入ったグラスを握る指が震えている事に気付き、ウェイトレスが通り過ぎた後に、ハンカチをさり気無く渡そうとする響子さん。
しかし彼女は「有りますから!」と断り、鞄の中から自分のハンカチを取り出した。
「鈍いんですよね!…あたし!…五代さん、優しいから、あたしの事、大切に思ってくれてるのかなって…考えもしなかったァ!…五代さんに、あんな人が居たなんて…!ほんとに馬鹿だわ~あたしって!!」
泣き腫らした顔をハンカチで覆いながら、こずえちゃんが話す。
その内容に不審な点を感じる響子さん――あんな人って、自分ではないのか?彼女は一体、誰について話しているのか?
「…あ、あの…あんな人って、どんな…?」
「…一刻館の、朱美さん」
「え?…まさか!」
「だって!あたし見たんです!!2人がホテルから出て来たとこ!!」
彼女の口から出た驚愕の事実に、愕然とする響子さん。
その頃、一刻館の住人4人は、門から顔を出して、響子さんの到着を今か今かと待っていた。
一「遅いねぇ~~管理人さん」
朱「買い物でもしてんじゃないのォ~?」
四「ほんとに帰って来るんでしょうねえ~~?」
四谷氏の言葉に、五代が顔を曇らせる。
不安で千々に乱れる彼の心模様を映す様に、枯葉が風に乗って舞った。
(個人的評価)脚本〇 演出〇 作画〇 …今回は脚本も演出もテンポ良く、作画も非常に綺麗だった。
気になったのは、五代の電話シーンと、朱美さんの発言を聞いても動じないマスターと、何年経っても成長が見えない賢太郎くらい…結構有るな。(笑)
予告は毎度お馴染みのメンバーである四谷・朱美・一の瀬さんの宴会トリオと、五代と響子さん――タイトルコール以外で珍しく響子さんが予告に参加したが、発した台詞は次回に出て来るものなのが気になった。
次回に登場する台詞をそのまま予告で使うと、本編で聞いた時の衝撃が薄まるじゃないか!
【続】
自分を鼓舞し終えたところで前回に続き、アニメめぞん第91回のレビューです。
・第91回「響子ガク然!朱美と五代は意外な関係!?」脚本:高屋敷英夫 コンテ:小島多美子 演出:澤井幸次 作画監督:中嶋敦子
香ばしく焼けた食パンが軽快な音を立ててトースターから顔を出す。(懐かしい、全自動トースター)
一家で囲む楽しい朝食…の筈が、その日の千草家は朝から険悪ムードだった。
食卓の塩を取ってくれとお父さんが頼むも、娘の響子さんは知らんぷり。
お父さんが「聞えないのか!!」と声を荒げれば、響子さんが怖い顔で睨み付ける。
娘の怒気に怯んで、何も言えなくなるお父さん。
可愛い娘が実家に戻って以来、毎日笑顔で過ごして居たのに…
母「あんたが悪いのよ!勝手に音無家に行って、管理人断ったりするから!」
父「それのどこが悪いってんだ?現に一週間も職場放棄しとるじゃないか!首にならん方がおかしいんだ!」
玄関で妻から渡された鞄を引ったくり、憤然と会社へ向かうお父さん。
…可哀想に、娘の複雑な気持ちを理解出来なかったばかりに…。
台所では父の見送りを拒否して食器を洗う響子さんの姿。
手を泡だらけにしながら物思いに耽る――昨日、義父(惣一郎さんのお父さん)から電話で聞いた、一刻館の新管理人の事が気懸りだった。
『新しい管理人なんて、皆があっさり受け入れる筈ないわ!あたしが居なきゃ絶対務まらないんだから!』
自分の居場所を奪うかもしれない新管理人の存在に、大いなる不安を抱く響子さん。
――と、ここで今回のタイトルコールが入る。
一方の一刻館では、廊下に散乱するゴミを、五代改め新管理人が、ひたすら片付けていた。
そんな姿を横目で見ながら、お構いなく宴会する四谷朱美一の瀬さん達。
無間地獄かな?(笑)
五「もおお!!いいかげんにしてくださいよ!!これじゃ管理人さん迎えに行く暇無いじゃないか!!」
一「時に、こずえちゃんとはきっちり別れたのかい?」
五「何です!いきなり!?」
一「別れない限り、何度迎えに行ったって――」
朱「む~だ!む~だ!」
…そうですねえ~、本を正せば、響子さんに告白しといて、長年こずえちゃんとよろしくやってる優柔不断さに、相手は御立腹なんだから。
一「いっそ、こずえちゃんと一緒になればぁ?」
朱「まんまと定職にも有り付けた事だしさァ」
五「…他人事だと思って!――とにかく!!ここでの宴会は止めてください!!」
下卑た笑い声を立てる3人に腹を立てた五代は、廊下での宴会禁止を申し渡すと、ゴミ袋を両手に持って玄関から出て行った。
その頃、響子さんは時計坂駅に降りたものの、一刻館に行くか止めるか思案していた。
新しい管理人の事が気になるも、一刻館の住人達とは顔を合わせ辛い。
茶々丸のマスターからそれとなく状況を訊こうと寄ってみれば、昼間っから一の瀬朱美四谷達が酒盛りをしていた。
五代から廊下での宴会を禁止された住人達は、新管理人への愚痴を言い合うため、茶々丸へ飲みにやって来たのだ。
お互いに呆然と顔を見詰める響子さんと一刻館の住人達。
響「…ど、どうしたんですか?皆さん…」
一「あんたねぇ~~~!」
朱「よく顔出せたわねェ~、さんざん迷惑かけといて!」
四「ま~あま~あ朱美さん!そんなにぽんぽん言っちゃ、お気の毒ですよ!」
四谷氏が、気色ばむ女性達を宥めつつ、響子さんの肩を抱いて、席に案内する。
四「管理人さんもお詫びに奢ってくださると言ってる事だし…ねv管理人・さんv」
響「…言ってません!そんな事!」
四「がちょーん!」
…とまぁ、四谷さんがお道化てくれたお陰で一触即発のムードを回避、住人達と響子さんは話し合いの席に着いたのだった。
一「…で、どうする積り?まさかぁ…このまんま管理人辞めるなんて事はぁ…」
響「そんな積りは…だけど…」
一「五代君と、こずえちゃんの決着かい?」
朱「あと百年くらいかかるんじゃないのォ~?」
カウンター席に座った響子さんに、マスターが珈琲を差し出す。
彼女の隣に来た朱美さんが、カウンターに背を向けて腰掛けた。
朱「あんたがそうやって逃げてる間に、2人が密着しちゃったりしてェ~」
響「そうなったら、それまでですわ!」
朱「そっかー!…じゃ、あたし、五代君…誘惑しちゃおっかなァー」
ライターで咥え煙草に火を点けつつ言った言葉に、響子さんが目を見開いた。
後ろのボックス席で、四谷氏と一の瀬さんが、聞える様な(笑)ヒソヒソ声で会話する。
四「聞きましたか一の瀬さん!」
一「興味深い発言だったねー!」
朱「最近ど~も添い寝だけじゃ物足りなくてさァ~…良いのォ?やっちゃっても…ほんとにやっちゃうよ…?」
俯く響子さんの顔を、朱美さんが下から覗き込む。
意地悪い視線を振り払う様に、珈琲を一気に飲み干した響子さんは、意地を張って言い放った。
「そうなったら、それまでですわ!!」
「へー?良いんだ?――じゃ、誘っちゃお!」
「どうぞ!!御勝手に!!」
朱美さんの顔を睨みつけて、響子さんが言う。
再び張り詰める空気の中、響子さんが「お邪魔しました!」と言って、コート片手に店を出ようとする。
その背中に朱美さんの「(珈琲代)350円!」の声がかかった。
振り返り、カウンターに小銭を叩き付けた響子さんは、マスターからお釣りを貰うのも待たずに、扉に向かう。
一「ちょっと!帰りに一刻館へ寄って、新管理人に挨拶してったらぁ?」
響「…その積りです!新しい方にはお気の毒ですが、私の職場復帰はまだまだ先ですから!!」
朱「毎度ありィ~!」
振り向きざまに宣言し、店を猛然と出て行く響子さんに、朱美さんが嫌味を飛ばす。
…ここの硝子戸に浮かんだシルエットが、段々と遠ざかってく様子を表現し小さくなる絵がリアル。
作画は今観ても非常に素晴らしいです。
それはさて置き話の続き――響子さんが立ち去った後、店内では朱美さんの発言を聞いたマスターが、目を丸くして驚いていた。
「しかし意外だねぇ~!朱美ちゃんは五代君の事を…」
「やぁだ!軽いジョークよォ~!」と笑い飛ばす朱美さんに、一の瀬さんが「あんたが言うと、冗談に聞こえないんだよ!」と、尤もな感想を述べる。
それを聞いた朱美さんは、珍しく真顔になって言うのだった。
「良いのよ!あれくらい脅かさないと、意地張って帰って来ないんだから!」
「厄介な女…!」と吐き捨て、灰皿に吸い殻を擦り付ける仕草が格好良い。
終盤の朱美さんは発言から何から惚れちゃうほど格好良かった。
ところで最終回のネタバレになってしまうが、朱美さんは茶々丸のマスターと結婚する。
原作では既にこの話を描いてた辺りで決めてたのか、朱美さんの発言を聞いて焦るマスターが見て取れる。
アニメでもそういう描写を観る事が出来たら、最終回の二人の結婚に視聴者が納得いったんではと思うが、アニメ版のマスターは終始うる星のコタツネコの様に泰然自若としたキャラだった。
茶々丸を出た響子さんは、一刻館への坂を上っていた。
朱美さんの挑発を受けて心は荒れ模様、『やりたきゃ勝手にやればいいのよ!そんな誘惑に乗る様な男だったら、今度こそ見限ってやる!!』と心中で息巻くものの、段々と不安になって来る。
彼女が好きになった男はとにかく気が弱いから、誘惑されたら乗るかもしれない…そんな心配を胸に、一刻館の様子を塀からそっと窺う――すると何故か五代がエプロンを着けて庭を掃除していた。
ドアを開けて賢太郎が飛び出して来る。
「管理人さーん!!ねえ!管理人さん!トイレの鍵壊れてるよ!」
「解ったから、あんまり管理人管理人言うなよ!!」
「だって管理人さんじゃない!」
2人の会話から新管理人の正体が五代だと解り、「焦って損した」と呟く響子さん。
館内の電話が鳴り、中へ引っ込む五代と賢太郎を見届けた響子さんは、そのまま一刻館に立ち寄らず立ち去るのだった。
…アニメの終盤になって、急に出番が増えた賢太郎。(笑)
それもこれも二階堂が登場しないから…しかし前回も書いたが、初期に比べ成長した姿で登場させるべきだった。
声変わりしないのはアニメ的にしょうがなくても、演技と脚本と演出で成長を感じさせて欲しかった。
賢太郎だってこれまで色んな経験して来たろうに…。
しかし意外にも「二階堂」って便利キャラだったのね。
その晩、いつもの如く玄関前で酒盛りをする一の瀬さんと四谷氏は、朱美さんが珍しく顔を出さない事を不思議がる。
「ね〜え、朱美さん、どこ行っちゃったんだあい?」
「でいとだとか言ってましたが」
「デートぉ〜?誰とぉ〜?」
「存じませんが!」
「五代君だったりしてぇ!」
「昼間の発言、本気だったりして」
「冗談だよぉ〜〜、たださあ、朱美さんの場合、冗談を実行したりするからぁ〜」
「有りそうな話ですなあ〜」
酔っぱらい二人を喜ばせる様なアクシデントが、この後一本の電話を先触れに勃発する。
「電話代わりました!五代ですけど…あ、朱美さん!?」
「近くに居るのォ~、どこだと思う?」
「酔ってるんですか!?」
「お金持ってェ~、これから言う場所に来てェ~」
「金ぇ~~!?冗談は止めてくださいよぉ~!俺、仕事中なんだから!」
「いいわよ…もう死んでやるからァ~~~~!!」
突然、バイト先のキャバレーにかかって来た朱美からの電話、五代が出てみれば向うは泥酔してる上に「死んでやる!!」と泣き出す始末。
尋常じゃない様子が心配になり、バイトを早上がりして、相手が指定する場所へ急行したらば、そこはラブホテルで慄く五代だった。
受付のおばちゃんから階と部屋№を教えて貰った五代は、エレベーターの中で自分がここへ呼び出された理由について考える――こ、これはもしや…誘われてるんじゃあ!?
朱美のハニートラップの可能性に思い至り、戦慄する五代だったが、今更後には戻れないと部屋のドアを叩く…相手の反応は無い。
鍵が開いてたので中へ入る、すると自分を呼び出した女は、大量の空ボトルに囲まれた回転ベッドの上で熟睡していた。
…原作と違い、朱美さん、服をきっちり着てるのね。(笑)
テレビアニメなので規制が入ったのは残念だが、それでも寝乱れた朱美さんの姿は悩ましい。
思わず唾を飲み込む五代だったが、そこは真面目でチキンな彼の事、魅惑的な女体を極力目に入れず、声をかけた。
だが酔い潰れた彼女は声をかけるだけでは起きない…肩を軽く揺するも覚醒せず、痺れを切らした五代はベッドに上がり、大声で相手の名前を呼びつつ、女の身体を強く揺さぶった。
すると寝惚けた女の両腕が五代の首に巻き付き、あれよと言う内に引っ張られた五代の身体は、朱美の身体に覆い被さる態勢になっていた。
ここでタイミング良く朱美が目覚める――いきなりバチーン!!!と頬を叩かれる五代。
「何すんのよォ!!!…何であんたがこんな所に居るのよ!?」
「何だよ!!!人を呼びつけといて!!」
「呼んだ!?あたしが!?…何で?」
「俺が訊いてんの!!!」
「あーーーー……悪い悪い!ちょっと飲み過ぎちゃってさァー、その隙に男が帰っちゃったんだ!…ハハハハハ!――しっかしよく飲んだなァ~!さて、帰るかァ~~!」
あっけらかんと笑う朱美の姿を見て、拍子抜けする五代。
ハニートラップではなかった事に安堵しつつ、少しガッカリしている彼だった。
…原作の「一発やってく?」の台詞は、やはりカットされたか。(笑)
同じ頃、こずえちゃんは夜の街を友人二人と歩いていた。
歩きながら交わす話題は、こずえちゃんを廻る二人の男についてらしい。
どちらを選ぶべきか悩むこずえちゃんに、友人二人は率直な意見を述べた。
「迷う事無いじゃない!収入が安定してる男を選んだら良いって!」
「そおよ!苦労するわよ~!」
「…でもォ…私が付いてないと五代さん…」
「そおいう根っからの甲斐性無は、誰が付いてたって駄目よ!」
「そうかなァ?」
「そうよ!」
…会話の内容から察するに、今迄もこずえちゃんの恋人として、さんざん話題に上ってたんでしょうな~五代。
で、友人達は彼女から相談受ける度に、「もー別れちゃいなよー!」と諭し、その度にこずえちゃんは「でも五代さんには私が必要」と答えてたんでしょう。
目に見える様です。(笑)
こずえちゃんを含めた三人の女子は、ラブホテル街に入る角の手前で、痴話喧嘩をしてる様子のカップルに出くわす。
「何グズグズしてんのよ!!」と女に引っ張られる男と目が合い、こずえちゃんの足が止まる――男は自分の恋人である五代だった。
五代との親密な関係を見せ付ける様に身体を密着させた女が、「あら?こんばんは♪」とこずえに向かって嫣然と笑う。
女の方も見知った顔だ、五代と同じアパートに住む「朱美」だった。
五代の方でもこずえに気付いて顔を強張らせる。
夜の街で思いがけず出会った彼氏と彼女は、時が止まったかの如く暫し見詰め合った。
――ここでAパート終了のアイキャッチ。
CM挟んでBパート開始――
夜が明けて一刻館の庭を掃く五代は、昨夜こずえちゃんとホテル街で遭遇した件について考えていた。
友人二人に自分と知り合いか尋ねられた彼女は、呆然とした顔で「知らない人」と答え、振り返りもせずに通り過ぎて行った。
『傷付いただろうなぁ…やっぱり…』
思い悩む五代の背後から、朱美が「おはよォ~~!どう!?爽やかァ~?」と明るく声をかける。
全く悪びれない態度の彼女に対し腹を立て、「爽やかなわけないでしょーが!何言ってんだよ!もー!」と答える五代。
「はて?こずえちゃんと目出度く別れられたのにィ~?」との朱美の発言を耳にして、玄関から飛び出して来る一の瀬さん…相変わらずの地獄耳だ。(笑)
「ちょっと、ほんとかい!?」
「十中八九フラれたみたいよォ」
「良かったじゃなぁ~~い!」と一の瀬さんから喜ばれるも、何故か面白く無さ気にそっぽを向く五代。
「しかしよく別れられたねぇ~?」
「そりゃもォ~ラブ――」
「朱美さん!!!」
「…何よォ!?」
「いいからちょっと!!」
「いいじゃな~い、聞かれたところで…」
「他人に言う事じゃないでしょ!!」
「なァにビクついてんのよォ!!」
「ビ!ビクついてなんか…!!」
庭の一角でヒソヒソ話し合う朱美と五代、その様子を見て一の瀬さんが怪しんだ。
「…あんたら何か有ったの?」
「有るわけ無いでしょ!!」
「そ!有ったら見直しちゃうけどねェ~、とにかく感謝してよね!あたしのお陰で決着ついたんだからさァ~!」
今回の件でこずえちゃんとの縁が切れた事を、まるで自分の手柄の様に朱美は語るが、五代の心中は複雑だった。
塵取りで枯葉を掻き集めながら考える、『こんな別れ方して良いんだろうか?』と――
未練がましく、廊下の共同ピンク電話から、こずえちゃん宅に電話をかけてみた。
だが、五代が「一度会って話したい」と訴えるも、電話の向こうの彼女に無言で切られてしまう。
「今の電話、誰からなの?」と訊く母に、こずえちゃんは「間違い電話」と答えた。
…ここは良く考えると不自然さを感じる。
こずえちゃん宅に電話をかけた五代は、彼女の前に家族の誰かから取り次いで貰ってる。
その家族は電話を受けた時点で誰なのか尋ねなかったのか?
こういう疑問を抱かせない為に、こずえちゃんが直接電話を受けた形にすれば良かったのに。
ぶっちゃけ、こずえちゃん側の様子をここで出す必要は感じなかった。
話を一刻館に戻して――こずえちゃんに電話を切られ、受話機を見詰める五代の背後から、一の瀬さんが鋭い言葉を放った。
「よりを戻す気かい?」
慌てて電話から離れる五代。
「い、いつから居たんですか!?」
多分、廊下に出た所から見張られてたんだと思うよ。(笑)
「朱美さんから事情は聴いた!」
仁王立ちで言う一の瀬さん、その後ろの死角で聞き耳を立てる朱美さん。(笑)
一「そっとしときな!誤解を解いたところで、もう一度別れ話をするんだろぉ?」
五「…そりゃあ…そうだけど…」
朱「たとえ別れても、美しい思い出として、彼女の胸に生き続けたいんだ、僕ぁ!――なーんて虫の良い事考えてんでは~?」
五「…そんなぁ…」
図星を指され言葉を失くす五代に、2人の女が辛辣な言葉をぶつけた。
「「バーカ!!」」
一方、惣一郎さんを連れて買い物に出ていた響子さんが家に帰ると、母から「一刻館の人がさっきから中でお待ちかねよ」と告げられた。
てっきり五代が来たと思い、リビングに急ぐ響子さん――しかし居たのは一の瀬さんだった。
「お!こんちは!」
「…一の瀬さんでしたか」とあからさまにガッカリする響子さんに、一の瀬さんが「五代君でなくて悪かったね!」とむくれる。
慌てて愛想笑いを浮かべる響子さん。(笑)
2人は対面する形で応接用のソファに座った。
珈琲を飲みながら、響子さんが一の瀬さんの話を聴く。
「え?別れた?」
「そ、完璧に!…だからさ…そろそろ戻って来たらぁ~~?」
「…でも」
「望み通りなったろ~お?」
「そんな!…私は別に…だけど、プロポーズしてたんでしょ?…それなのに…」
「あーそれ間違い!!単~なる間違い!!」
「だって、そんな話ちっとも…」
「あんたが聴かなかったろぉ~?」
煙草をふかしつつ、そう言った一の瀬さんは、ちらっと響子さんの顔を窺った後、彼女の自尊心を擽る様に付け加えた。
「それにねぇ~、やっぱ五代君が管理人じゃ、がさつで行き届かないし、何なら明日、五代君を迎えに寄越そうか?」
「いえ!そんな!一人で………一人で、帰ります」
…同性として時に厳しく当たる朱美さんと違い、一の瀬さんは響子さんを娘の様に扱い気を配る点が良いなと思う。
五代とこずえちゃんの件だけでなく、自分以外の人間が管理人として受け入れられてるのも、響子さんが臍を曲げてる原因な事に気付いてるのが偉い。
その夜、帰り支度をする響子さんに、背後から母が声をかけた。
「やれやれ助かった!…犬も連れて帰るんでしょうね?」
「置いて行くわけないでしょ!」
「はいはい!」と答えた後、襖を閉めて立ち去る母。
惣一郎さんだけが残った部屋で、窓の外を眺める。
夜の闇を通して黒く染まった窓に、自分の立ち姿がくっきり映っていた。(このシーン美しい)
『五代さん…あたしの事、こずえさんに話したのかしら…?』
響子さんが窓に映る自分に問い掛けてた頃、一刻館の五代の部屋では喜びの大宴会が開かれようとしていた。
「という訳でぇ~、管理人さんは明日、帰って来るーー!!」
一の瀬さんが高らかに発表するのを受けて、四谷氏と朱美さんが拍手で応じた。
五「それじゃ解ってくれたんですか!?管理人さん!」
一「だからさぁ~…いいね?こずえちゃんとの別れ話、交ぜっ返すんじゃないよぉ?」
朱「そうよォ~、あんたとあたしがラブホテルから出て来た事は事実なんだし!」
四「ら、らぶほてるぅ~~~!?五代君!君はなんて羨ましい事を!!」
五「出て来ただけですよ!!出て来ただけ!!」
四「入ったから出て来たんでしょーが!!」
…この遣り取り、前回の予告でもやってましたね。(笑)
朱「そおいや、目が覚めた時、覆い被さってたわよねェ~~?…何かした?」
五「するか!!」
朱「疚しい事が無いんなら、あたしの目を真っ直ぐ見てごらん」
五「恩を仇で返す様な真似しやがって…!」
真正面から顔を近付け睨む五代の唇を、朱美がいきなり奪う。
ディープキスを交わす二人を観て、四谷氏と一の瀬さんがどよめいた。
…五代君と朱美さん、何気に二度目のキスである。
五「な!な!…何すんじゃあああ!?」
一「見たよ!」
四「私も見たあああ!!」
朱「ささやかな、お礼v」
五「ホ、ホテル代さっさと返せっ!!」
朱「あら~あ?女にホテル代出させる気ィ?」
一「二人は出来てる!」
四「はい!」
五「あのなあ~~!」
一「明日は管理人さんが帰って来るってのに、なんてこったい…」
頷き合った一の瀬さんと四谷氏が、五代の顔をじーっと見る。
五「…ぼ、僕を信用しないのかぁ~!?」
一「だぁっ~はははは…!!マジになるんじゃないよぉ~♪あんたにそんな度胸有るわけないもん!…朱美さんもあんま悪ふざけすんじゃないよぉ?」
朱「冗談よ冗談v」
四「まーったく五代君は揶揄い甲斐が有りますなぁ~」
一「とにかく管理人さん復帰の前祝いだ!!」
「「「「かんぱ~~~い!!!!」」」」と喜びを爆発させる住人達…この夜まで彼らは、響子さんが明日には一刻館に帰って来て、平和になるものと信じ切っていた。
翌朝、電信柱前にゴミを出す五代の背中を、ランドセルを背負った賢太郎が、勢い良く叩いて声をかけた。
「おっはよー!!管理人さん!!」
「あのなぁ~~!!」
「解ってるって!!今日でクビになるんだろ!!」と顔だけ後ろを向いて叫び、そのまま元気に坂を駆け下りて行く賢太郎。
彼もまた、響子さんが一刻館に戻って来る事を知り、浮かれているのだった。
足から徐々に見えなくなる姿に向かい文句を零す五代だったが、今日の彼は賢太郎同様に朝から頗る機嫌が良い――だって響子さんが一刻館へ帰って来るんだから!!
沸々と込み上げる喜びに急かされ、体がじっとしてられない。
他人が見てないのを良い事に、彼は大人気無くはしゃいで道を戻るのだった。
…賢太郎の現在の年齢を考えなきゃ、ほのぼの良いシーンなんですけどね~~。
その日の昼、タクシーで一刻館へ戻ろうとした響子さんだったが、運悪く渋滞に巻き込まれ、駅前で降りて徒歩で向かう事にした。
しかし踏切を渡る途中で、こずえちゃんとばったり会ってしまう。
見るからに沈んだ様子の彼女に、響子さんはかける言葉が思いつかず、そのまま笑顔で立ち去ろうとしたものの、こずえちゃんから少し話が有ると言われ、2人で喫茶店に向かう事になった。
2人が喫茶店で話す間、外に繋がれ大人しく待つ惣一郎さん。
店に入った響子さんとこずえちゃんは、窓際の席に対面する形で座った。
ソーダ水をストローで掻き混ぜるこずえちゃんは、どう話し始めるべきか悩んでる様に見えた。
その姿を後ろめたい気持ちで眺めつつ、響子さんが珈琲に口を付ける。
「五代さん……五代さん、好きな人居たんですね…私、今まで何も知らなくて…」
『やっぱり五代さん…あたしの事言ったんだわ…!』
原作でのここの響子さんの描写は、後ろめたい気持ちで居つつも、五代が彼女ではなく自分を選んだ事に自尊心が満たされるという、複雑な人間の心理を感じさせて、非常に素晴らしかった。(笑)
響子さんが五代に心の底で望んでたのは、こずえちゃんに本当に好きな人が誰なのかを明かす事だったんではないかと。
でないと次回、五代を「意気地無し」って詰る理由が見付からない。
アニメの響子さんはこずえちゃんに対してひたすら同情してる様に描いてるけど、そうなると今度は次回五代を思いつく限り罵倒するキャラと繋がらなくなるんですよ。
次回の事は今は置いといて話の続き――
「…あの…あたし、何て言ったら良いか…」
「いいんです、もう!…少し、ショックだったけど…これで、決心が付きました!あたし…もう会わないからって…五代さんに、管理人さんから、そう伝えてください!」
喋ってる内に涙声になる彼女。
ソーダ水の入ったグラスを握る指が震えている事に気付き、ウェイトレスが通り過ぎた後に、ハンカチをさり気無く渡そうとする響子さん。
しかし彼女は「有りますから!」と断り、鞄の中から自分のハンカチを取り出した。
「鈍いんですよね!…あたし!…五代さん、優しいから、あたしの事、大切に思ってくれてるのかなって…考えもしなかったァ!…五代さんに、あんな人が居たなんて…!ほんとに馬鹿だわ~あたしって!!」
泣き腫らした顔をハンカチで覆いながら、こずえちゃんが話す。
その内容に不審な点を感じる響子さん――あんな人って、自分ではないのか?彼女は一体、誰について話しているのか?
「…あ、あの…あんな人って、どんな…?」
「…一刻館の、朱美さん」
「え?…まさか!」
「だって!あたし見たんです!!2人がホテルから出て来たとこ!!」
彼女の口から出た驚愕の事実に、愕然とする響子さん。
その頃、一刻館の住人4人は、門から顔を出して、響子さんの到着を今か今かと待っていた。
一「遅いねぇ~~管理人さん」
朱「買い物でもしてんじゃないのォ~?」
四「ほんとに帰って来るんでしょうねえ~~?」
四谷氏の言葉に、五代が顔を曇らせる。
不安で千々に乱れる彼の心模様を映す様に、枯葉が風に乗って舞った。
(個人的評価)脚本〇 演出〇 作画〇 …今回は脚本も演出もテンポ良く、作画も非常に綺麗だった。
気になったのは、五代の電話シーンと、朱美さんの発言を聞いても動じないマスターと、何年経っても成長が見えない賢太郎くらい…結構有るな。(笑)
予告は毎度お馴染みのメンバーである四谷・朱美・一の瀬さんの宴会トリオと、五代と響子さん――タイトルコール以外で珍しく響子さんが予告に参加したが、発した台詞は次回に出て来るものなのが気になった。
次回に登場する台詞をそのまま予告で使うと、本編で聞いた時の衝撃が薄まるじゃないか!
【続】