AWA@TELL まいにち

南山大学で、日本語教育に携わる人材の養成を行っています。ホームページも是非ご覧ください。

「あげる」「くれる」「もらう」

2008年03月16日 | 日本語教育
日本語の授受表現は、厄介なポイントの一つです。
「あげる」「もらう」は、そんなに混乱しませんよね。実際に何かを実物教材を持ってきて、やり取りをしながらやれば、大丈夫。

ここに「くれる」が入ると、厄介なことになりますな。

混乱、というよりも、なぜこの表現が必要なのか、ということで学生が困るわけです。同じ場面で使える言葉があるのにって。

でも「くれる」はちと違いますな。

○ お母さんにおやつをもらった。
○ お母さんがおやつをくれた。

あんまり違いが出てきませんよね。授業中に提示するのには不向きな例文だと思います。

○ お店の人におまけにケーキをもらった。
○ お店の人がおまけにケーキをひとつくれた。

どうかな。少しは違いが出てきましたかね。

○ 大きな荷物を抱えていたので、ドアを開けてもらった。
○ 大きな荷物を抱えていたので、ドアを開けてくれた。

「くれた」のほうに違和感を感じる人もいるんじゃないでしょうか。非文にする人がいるかもしれません。違和感を感じる人は、もう「同じ」とは言えませんね。

○ 病気で寝ていました。友達にご飯を作ってもらいました。
○ 病気で寝ていました。友達がご飯を作ってくれました。

だいぶ違いが出てきましたよね。

「もらう」は、自分の要請がある場合、「くれる」は、自分の要請がない場合、という意味もあります。


「自分の要請の有無」というと、ちょっと言葉が足りませんな。

○ 書類を片づけてもらった。
○ 書類を片づけてくれた。

この例文は、どちらも自分の要請があるかないかにかかわらず、結果に対しては「感謝」の意味が含まれますよね。お願いして、片付けが終わって、「片づけてもらった、ありがとう」という場合と、お願いしなかったのに片付けが終わって、「片づけてくれてありがとう」って。

じゃ、その結果、大切な書類がなくなったらどうしますか?前者はあきらめるでしょうねえ。じゃあ、後者の場合はどういうでしょうね。

○ 書類を片づけられた。

そうそう、迷惑の受け身になりますな。

先日、妻とのやり取りで、こんなことに思い至りました。

面白いですねえ、言葉は。
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