小寄道

日々生あるもの、魂が孕むものにまなざしをそそぐ。凡愚なれど、ここに一服の憩をとどけんかなと想う。

トランプは負けた、ジョーカーになれるか

2020年11月10日 | エッセイ・コラム

ジャーナリストの木村太郎は今回もトランプが勝つと分析していた。識者・知人のなかにも、トランプに分があるという人は結構いた。小生はというと、そちらに傾いていたが、最終的にトランプは負けるものと予測した。と言って、自慢にはならない。予測したのはそれだけではない(詳しいことは書かない)。

はずれた予測もある。いやな予測だが、トランプの支持者たちが選挙本部を襲ったり、暴動を起こすことだ。銃で武装している報道もあったので心配していたが、どうやら大きな暴力事件は起きていない。早晩に現実を受け入れなければ、トランプを支持した者でも、明日の我身が危うくなることは想定される。例のあれだ。

スイングステートといわれるアメリカの中西部を中心に、選挙戦は盛り上がっていたが、実はコロナ禍の真っ最中でもあった。事前の郵便投票があったにも関わらず、メディアではそうした背景の詳細な報道はなぜか細かった。人々が動き、発言しているところしか絵にしない。そこを起点にしか報道方針が組立てられないのは、予算ばかりか人材がSNSに吸い取られているマスメディアの現在を象徴している。

さて、共和党支持の州では、案の定、マスクする人々が少なかった。トランプ大統領が感染しても、マスクをしないのはある意味タフな根性の持ち主なのであろう。今回の敗北の要因の主なものは、コロナ対策が(州ごとに)いい加減であったことに尽きる。

選挙前には1日の感染者が全米で10万人という途方もない数字の日もあった。累計の死者数はいまや25万人を数えている(この時点では24 万でした。訂正してお詫びいたします)。アメリカとブラジルだけが、コンスタントに死者数を伸ばしている。国のトップリーダーが経済だけを優先したい、そんな強欲なスーパーマンの、超合理な政策が生んだ「人災」である。

思えばベトナム戦争に負けたときの死者数は5万人だった。その5倍の死者がでている。それがアメリカの現実であるのに、なんら抜本的な対策を講じない(問題を指摘されると、大統領は速やかに対応する。いや、言葉だけのレスポンスをする。機を見るに敏な印象)。これは酷い事実であったし、検証されなければならない。また、歴史的、学術的にも研究される案件になるだろう。

たぶん犠牲者の多くが、低所得者層、無保険者、疾患のある高齢者に違いないが、ヨーロッパをはじめ、症状のある患者にはいちはやく血液が凝固しない薬を投与するそうである。死に至る患者の多くが血液に異常があるそうで、重症に至らないための必然的な処置といえる。アメリカでは、無保険者に対してこんなきめ細かい処置はできているんだろうか・・。

 

去年、『ジョーカー』という映画が流行ったが、トランプ大統領はまさに主人公ジョーカーと対極をなす人物であった。小生が感じるところ、「分断化したアメリカ」の超プラスと、超マイナスの対極・相反するイメージを思いえがくことがしきりなのだ。

トランプ大統領は、大言壮語、レイシズム、女性蔑視等々全方向ハラスメントのスペシャリストだ。相手の嫌がること、公衆の面前で憚れることもズバリ言ってのける。議論になれば、突拍子もないことを言って相手を煙にまく。庶民にとっては面白く、溜飲を下げるかのように気持ちがいい、一級の言表者だとおもう。

自分たちにはできないことを簡単に言ってのける。この無責任の強さは、将来に不安を感じる庶民にとって、頼もしく思ったり畏敬されたりもしたんだろう。

『ジョーカー』の主人公はいわゆるプアホワイトで、脳に多少、障害があって、自己をコントロールするに難があったはずだ。ふつうにアメリカンドリームを夢見る若者でも、すべてが裏目にでる不運が重なると、ひょんなことで殺人さえも犯してしまう。

自分の弱さと、さらに出自にも裏目が出る始末。ここに共感ができるか、退屈さを感じるか。ここの個人差で評価も分断されるし、この映画のオチ=構造もあるというハイブローな映画でもある。

ヒース・レジャーが演じた『ダークナイト』の前身として見たならば、この『ジョーカー』は悲哀に満ちた人間像が抽出されている。でも、なぜかしら弱い奴、駄目な奴、言うことをきかない奴らを、「ファイアー」と罵って排除したトランプ、その彼の政権下においてハリウッドで製作された、ブラックではないダークジョークな映画でもある。ロバート‣デ・ニーロが出演。といえば、あの映画だ。荒廃した社会、望みのない人間関係にも一縷の光を見る、つまり、ベトナム戦争後のニューヨークにも居場所を探しだしたトラヴィスだ。そう、『タクシードライバー』と『ジョーカー』がダブってしまった)。

アメリカファーストを掲げて大統領になったドナルド・トランプ。今のところ、彼はまだ負けを認められず地団太を踏んでいる様子だ。膨大な費用を要する訴訟のために金を工面しているようだが、奥さんは猛反対しているらしい。

この際、トランプさんと言おう。

アメリカファーストを宣言した貴方は、やっぱり「ミー・ファースト」なんでしょうね。トランプタワーの債務支払い期限は、あと何年ありますか? 奥さんの言うことをきいて、「ファミリーファースト」と宣って今回の負を素直に認めましょうよ。2回も破産したでしょ(噂では4,6回説も)。

ベトナムから撤退することになった時、時の大統領ジョンソンはテレビを通じて、国民の面前で涙を流しながら私たちは負けたのだと謝罪していました。

日本では、男としてみっともないなぞという方もいましたが、愚生はとしてはやはり、アメリカは凄いなと。体面を繕うよりも「honesty=正直」が優先されるのだと驚きました。弱さ、間違いを素直に認める文化、それが保守でありリベラルだ(日本ではどうしたものか、対立概念として流布している)。

日本の安全保障のすべてをアメリカに依存する制度が出来つつあった時代でした。日本の政治家も、アメリカのこういうメンタリティを学んでいってほしいと、今から半世紀前にちらっと思ったことを思い出しましたよ。トランプさん、アメリカがベトナムに負けたとき、ジョンソン大統領が泣いていた時に、あなたはどこで何をしていていましたか?

 

▲アカデミー賞主演男優賞 作曲賞やヴェネチア国際映画祭 金獅子賞などを受賞したが、日本庶民には受けなかったようでした。


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