追、先日のことであったか、定かでないとは情けないが遠い昔のように
思えるとは、いまだにフラフラして、宙を漂って不定な身であれば致しかたない。
突然黒い塊が両肩を突き上げ、頭上に抜けたような痛みを覚え、真っ赤に焼けた
鉄棒を肉越しに刺して、グリグリと舞わしたのはあいつだと不覚にも逃がした。
あいつを追っかけて飛び込んだが、なんと病院の診察室にいたあいつを捕まえようと
飛び掛るとにこやかな医者の顔が目の前ににゅっと現れ、あっというまに心電図を
取られたが、なんと頻脈のトンネルに入ったらしく、特急電車に30分あまりは乗って
いたようだ。
トンネルを抜けるとそこは静かな病室であった、はじめての経験であったが
まったく予想しがたい、何時どんな波が、風が押し寄せて新緑のなかで
立ち往生してしまうか、この身体を演奏しているのがあいつ奴ならば心臓を
持ち去るのは他愛も無いことであろう。
ぼーとしていると、足音が近づいてきたが、あいつに心臓を奪われまいと
密かにベットの片隅に隠すとドアが開いて入って来たのは医者であった。
医者は開口一番「はい、一丁上がりですよ、あいつは逃げ出しましたよ、
はじめてのことで吃驚したでしょう、度々あいつが来ますとちょっと厄介ですが
まあ、しばらく薬を飲んで様子を見ましょうか」
医者が立ち去るとベットの片隅に隠した心臓をそっと身体に仕舞いこんで
病院をあとにして、新緑の奥祖谷に逃げ込んだものである。
思えるとは、いまだにフラフラして、宙を漂って不定な身であれば致しかたない。
突然黒い塊が両肩を突き上げ、頭上に抜けたような痛みを覚え、真っ赤に焼けた
鉄棒を肉越しに刺して、グリグリと舞わしたのはあいつだと不覚にも逃がした。
あいつを追っかけて飛び込んだが、なんと病院の診察室にいたあいつを捕まえようと
飛び掛るとにこやかな医者の顔が目の前ににゅっと現れ、あっというまに心電図を
取られたが、なんと頻脈のトンネルに入ったらしく、特急電車に30分あまりは乗って
いたようだ。
トンネルを抜けるとそこは静かな病室であった、はじめての経験であったが
まったく予想しがたい、何時どんな波が、風が押し寄せて新緑のなかで
立ち往生してしまうか、この身体を演奏しているのがあいつ奴ならば心臓を
持ち去るのは他愛も無いことであろう。
ぼーとしていると、足音が近づいてきたが、あいつに心臓を奪われまいと
密かにベットの片隅に隠すとドアが開いて入って来たのは医者であった。
医者は開口一番「はい、一丁上がりですよ、あいつは逃げ出しましたよ、
はじめてのことで吃驚したでしょう、度々あいつが来ますとちょっと厄介ですが
まあ、しばらく薬を飲んで様子を見ましょうか」
医者が立ち去るとベットの片隅に隠した心臓をそっと身体に仕舞いこんで
病院をあとにして、新緑の奥祖谷に逃げ込んだものである。