過ぎ行く春の物憂ひ風景にときの流れを感じて、華やかなりし行楽の日々に
物寂しさが漂ひ、いつしか気だるい想ひが身体を突き抜けて霞となり風景を包む
思ひのほか気温が高めに推移している昨今は初夏の装ひがじわじわと押し寄せて
汗ばむ心地すらしてくる
この季節になると、クサムシが冬眠から覚めてぞろぞろ、ぶんぶんと部屋のなかを
我が物顔で活動してくる、なにしろかなりの数であるからなかなか戸外に出すのも
大変である、潰すと途端に異臭を発するから始末が悪い、で、そっと外へ誘導して
無罪放免とするのが一番いいのである
傾きかけてすき間だらけのわが庵「わとうち」でのちょっとしたクサムシとの遊びごっこも
熱中してくると、時の立つのも忘れてしまいそうになるくらい面白いものである
一段落すると、縁側に座ってお茶でも飲みながら、小鳥のさえずりに身を任せて
ぼーとしていることもいいものだ
過ごし方はいろいろ、わが庵はテレビ、ネット環境もないから、大抵、山歩きや里歩き
集落のお年寄りとの雑談などで一日が過ぎてゆく、自然の成り行き任せであり
出たとこ勝負みたいなもの、そこにあるもので楽しく面白く遊ばせてもらっている
それなりに、ふらふらと長く生きてきたものだからものごとをせかせかと片付けなくても
だいたいこんなふうにといつのまにか収まってしまうものです
そのうちに、ああなったら、こうなったら、いいなあ、うれしいなあとおもっていても
思うようになるようでもないし、かといって、ならなかったから大変なことになるわけもない
いまが、たのしいから、おもしろいからやってみようぐらいでちょうどいいのではないだろうか
惜春や月日刻みし縁の節