我が家には、雨戸が無い。
予算の都合だったのか、とにかくどの窓にも、付いていない。
台風の時期になると、どこからともなく、折れた木が飛んでくるのではないかと、ちょっと不安になる。
枝が飛ぶのは仕方がないとして、ガラスが割れると、片付けやら、絶対的に家計を圧迫する。
少しでも被害を抑えようと、ブルーシートを準備した。(購入したのではない。大工さんが置いて帰った物を頂いた)
川側のベランダの前に、欅の大木がある。今年の蝉の鳴き声は、風情を通りこして、騒音に匹敵した。
朝方の4時から蜩に起こされ、意地でも起きるものかと、思い切り布団を被り、二度寝して、5時半に起床する。
今も台風が近づく雨の中、蝉が鳴いている。
そんな午後。ベランダでブルーシートを広げて、雨戸代わりにサッシを覆ってみた。
ブルーシートの端をベランダの枠に、切った紐を結んで固定した。多分大工さんが見たら、鼻で笑われそうな位、ちゃちな結び方だ。
ちゃちな結び方をしながら、ふと思い出した。
戦時中の祖谷の学校の話を、聞いたことがあった。
当時は女子は竹で作った槍を手に、毎日毎日、
「エイエイッヤー」
「エイエイッヤー」
と槍を突く訓練をさせられたそうだ。
京柱峠をアメリカ兵が歩いて祖谷に攻めてきたら、山道に慣れていないから、ふらついた時に竹槍で突いて、やっつける作戦だったようだ。
「こんがな竹のヤリで、なんで勝てるわけないわのうや~」
と陰口を言いながら、言われた通りに訓練を続けたらしい。
そんな竹槍の武器が、ちゃちな私のブルーシート雨戸と重なって、可笑しくなって手を止めた。
今日も年に一度の、村民一斉の道路作業だった。
真面目に働く人が多い。日本人は勤勉だ。上からの命令に誰も逆らわないで、一斉に道路の奉仕作業。
当たり前なんだろうけど、毎年、この当たり前を、不思議に思う時がある。
私はヒネクレテいる?
今年は一部分の草刈りを、市から委託を受けた作業員の方々が、済ませてくれていたお陰で、ものすごく助かった。
毎年一緒に頑張っていた、隣のおばちゃんがいなかったのは、寂しかったけど、正直、なんか別れることに慣れてきた。
みんなこんな感じで、慣れていって、祖谷の苔のように歳を重ねていくのだろう。
水分を蓄えた美しい苔に、私は成りたい。苔が無理なら、カビでもいい。
ブルーシートが軽く揺れた。避難訓練はしていないが、避難準備は万全だ。
ガンバレっ!!みんな!
エイッエイッヤー!!
草 々