夏に他の草木に絡み付いて蔓を伸ばして這い上がりながら茂る野生の蔓草に
カラスウリがあり、歩いていると、いたるところに茂っている
秋も深まり、霜枯れになるころに赤や黄色のタマゴをぶら下げたように実をつけ
晩秋の風物詩としてひとびとの目を楽しませるカラスウリ
そのカラスウリの花は夏に咲き、ぼくが歩く、瀬戸風峠にもいたるところにあり
白い髭をいっぱい付けて咲いているのだが、朝方に歩くためか、髭を伸ばして咲いているのを
眺めたことがなかった
カラスウリの花は宵闇とともに開いて朝方に萎んでしまう、一夜花なので、髭をレースのように
伸ばして五枚に開く純白の花を見る機会がなかったのである
いちど、見てみたいものと思っていたので、昨夕に思いつき、宵闇迫るころに出かけてみた
案にたがわず、弁周から、翁の髭のように長く糸状に裂けてふんわりと伸びいっぱいに開いた花は
はちきれるように垂れている
宵闇に白く浮かび上がるように咲く花に夢見心地、幽玄の花、とはこの花のことではないかと思われた
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朝方に見るカラスウリの花
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