秘境という名の山村から(東祖谷)

にちにちこれこうにち 秘境奥祖谷(東祖谷山)

三回忌に寄せて        SA-NE

2009年11月01日 | Weblog
娘達と、家族三人、主人との想い出を、一緒に連れて、落合峠に出掛けてみた。
山々の「色」を、感じる事が出来た。大自然が、一斉に約束したように、自ら持つ、様々な色彩を、放つ。
雄大な〈生命〉が、織り成す、幾つもの、鮮やかな色が、真っ青な大空のキャンバスに、重ねられていた。
誰のものでもない、〈風〉が、邪気の無い空間を、翔けていた。
思いっきり、深呼吸した。

人間の『五感』を取り戻すのに、三年の月日を費やした。
一人分の味噌汁を作るのに、二年がかかった。

荼毘の後、小さな箱に収まった、主人の形が、永遠に消せない、哀しい押し絵のように、私の胸の中に、刻まれている。

今でも、おかしな夢で、目が覚める。
見た事もない、木造建ての古びた、診療所。私は、主人の部屋を、紙袋を提げて、必死で、探しながら、奥へ奥へと歩く。
やっと探した、主人の部屋。
パイプベットに、主人がパジャマ姿で、退屈そうに座っている。
庭を、見ている。
私は、主人に、駆け寄って、言った。
「父さん!よかった。これからゆっくり、ええ病院捜そう!まだ、治せるよ!」
主人は、ただ黙って、私を見ていた。

朝早く、目が覚めた。
右横の、布団の敷かれていない、畳みの空間を確かめて、暫くボーとしていると、涙が滲んできた。

そんな朝を、数回迎えた。

夜中に、何度も目が覚める。
その度に、主人が来てくれたのかも知れない!なんて考えて、必死で壁を見たり、
忙しい真夜中を、随分味わった。

主人を連れて、いつものように、正面玄関から、退院させられなかった事。
私が、守り切れなかった事。
様々な葛藤の中で、ようやく、辿り着いた答が、ある。

〈私もやがては主人と同じ場所にいける〉という、単純な答だった。
〈死〉は、平等に確実に、訪れる。
主人への私からの、精一杯のザンゲなのだ。

肉体を持った夫と別れ、透明人間に姿を変えた、夫と再婚し、
二度と離れる事は、ない。
なんて、素敵な約束だろう。
私は、幸福者だ。

『誰か一人だけ、一時間蘇らせます』
なんて、神様がプレゼントしてくれたら、
やっぱり、主人に逢いたい。
いつもの悪ふざけで、後ろから首に手首を回して、そのまま、前に倒していく。
あんな悪ふざけ、主人にしか、仕掛けられない。

きっと、前世でも、夫婦は、夫婦だったんだ。
男と女が、落ち葉のように吹き溜まる世界で、一人だけに胸が、お互いにキュンとなるタイミングまで、同じなんて、
見えない不思議な、チカラで、導かれているとしか、思えない。

それと、大切な事が、ひとつ。
主人に 謝らなければ、ならない事がある。

「父さん、夕べまたトイレの電気、点けっぱなし!ローカも点いとったよ!病院代、ようけ要るのに、気をつけなよ!」
主人は、ひたすら、無実を主張していた。

犯人は、私でした。
ゴメンナサイ。
私が一人暮らしになって、始めて証明された、あなたの無実。

グルメだった、主人にお供えする為に、
今日、私は「ちらし寿司」を作った。かくし味は、未練愛だ。なんてね。
三年の月日が、駆け抜けた。
今年の「秋」も想う。
『亭主、元気で留守がいい』

綺麗なお婆ちゃんで、そちらに行くから、待っててね。
歳をとらない、お父さん。
命日の合掌



コメント
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