地元の「エコ(環境)フェスタ」というイベントに「大槌復興刺し子プロジェクト」の商品の出店が出ていました。
仕事柄、布/糸/紙/日本的 なものの匂いにつられていきました。
Tシャツ買いました。
岩手県大槌町の復興を支援するプロジェクトとして、NPOテラ・ルネッサンス が運営しています。
災害にあって、避難所でする事も無く、家も希望もするべき仕事も失って、失意の女性たちが、何か出来る事があれば心が晴れるのではないか、それが収入に繋がればもっと希望もわくのではないか、という趣旨で、場所もとらず、道具も最小限でできる針仕事を、と始めたのだそうです。
刺し子の技術や材料は、飛騨刺し子の会社の支援と指導を受けたそうです。
商品のかわいいパーカーを着て販売をしていた担当の方の一言が私の心を突きました。
「このプロジェクトを一過性のものとせず、ゆくゆくは地場産業として地域の女性の手で大槌の特産品として根付いて行く事を目指しています」
地域(田舎)、女性の仕事、地場産業、継続・・・私がずっと考え手づけていること
「糸へん産業」と当事者は言いますが、繊維に関わる産業(織物)は、もともと農家などの農閑期の女性の仕事、古くは自分の家族の衣服を作るため、そしてそれを売って重要な副収入とするために長い間女性の間で受け継がれてきた技術です。
それがだんだんと大きな需要を喚起して、需要の同大に伴って産業として大きくなり、産業革命を経て女性の手仕事から機械生産へ、日本の経済を担う一大産業へと発展した業界です。
しかし、今繊維業界は苦境にあります。日本人の高い労働コストでは、他の途上国で生産されたものと競争が出来なくなりました。日本お得意の技術の高度化で差別化を図ろうとしても、小ロット多品種、常に新しいものを求められるサイクルでは、日本においては大きな利益を生む産業ではなくなってしまいました。
日本独自の高度な技術も多くある織物、しかしそれで多く利益を生まないのであれば、産業として成り立つのは難しい。かつての繊維メーカーの大企業は、とっくに元々持っている技術基盤を生かして炭素繊維などの新しい分野へ出て行ってしまいました。
残るは細々とした、小さな工場や職人さんの手で生み出される、美しい織物たちですが、先行き不透明です。
これらの技術はやはり残して行きたい、しかし利益が少ないので携わる人は減って行く。
そうなると、農家の女性達が担ってきた、副業としての道へ戻るのが正解なのではないか・・・、どうしてもそういう気がしてしまうのです。
そして、子供がいて8時間働けないとか、高齢になったが元気でまだ働きたいし働かざるを得ないとか、農家や自営業などで自らも担い手になっている人たち(女性に限りません)の二次的収入の道として、こういう仕事は案外有効なのではないかと感じるのです。
いとへん産業の苦境の突破口を期待してはいけないのでしょうか。
ただ、そんな私の思いを、今現在職人の誇りをかけて必死に工場を守っている職人さんには、言えません。
この「大槌復興刺し子プロジェクト」が、「復興」の二文字が取れてもずっと「大槌刺し子」ブランドとなればいいな、と思います。
それと、デザインって大事だな、と思いました。図柄のデザインはプロのデザイナーさんんお手によるものだそうです。デザインの洗練度、もコンセプトと同じように買ってもらうためには大事だと思います。