仁、そして、皆へ

そこから 聞こえる声
そして 今

時計の針が悲しくてⅣ

2008年12月12日 17時53分14秒 | Weblog
 風の音はやわらかだった。駅前の階段で腰を下ろしていた。始発が下北に着くにはまだ早かった。
 ハルはゆれていた。風に漂うようにゆれていた。朝靄の中から飛び出すように太陽の光が空を青くした。ハルは空を見ていたかった。改札が開いて、足音が大きくなった。指名が取れて、ノルマを達成できればタク送が普通だった。ハルには指名客はまだいなかった。店を出て、深夜喫茶で始発を待つのがいつものことだった。だから、始発の付くのを待った。ハルはユラユラ立ち上がった。
 マーちゃんにどんな顔で会おう。
 マーちゃんが知ったら、どうなるんだろう。
 私はとんでもないことをしたのかもしれない。
 でも、マサル・・・マサルも好き。
一番街に出て坂をのぼった。踵がうまく地面から離れないような感じがした。三河屋の前で笹塚のほうに曲がって、裏道に入った。二人のワンルームのマンションは直ぐそこだった。