1階の奥の部屋の鍵を開けた。ドラムの練習台の横の万年床にマーは寝ていた。
昨日もそのまま寝ちゃたんだ。
ハルはマーにタオルケットをかけて、隣に座った。マサルのところから帰るとキッチンとリビングだけのこの部屋は非常に狭く感じられた。でもこの部屋には生活があった。ハルと住みだしてからほとんどアルバイトもしなくなったマー。練習台を叩いているか、散歩に行くか、システムキッチンの引き出しから金を持ち出し、パチンコに行くか。マーの生活はそれしかなかった。ハルはそれでも良かった。
両親と小さな弟。父親は地方都市にある精密機械を製造する会社の東京支社にいた。労働組合の活動に従事し、主任の上には出世するつもりはなかった。明るい父、だが父親が家にいることはほとんどなかった。母親は小さな弟に掛かりきりでハルは、寂しかった。マーのバンドのライブも自分で行こうとしたわけではなかった。真由美の誘いがなければいかなかった。これといって興味があるわけでもなかった。マーのバンド「マラマッド」は当時、認知度をましていたパンクロックバンドだった。はじめてパンクロックに触れたハルはすべての面で圧倒された。すべてがかっこよく、すべてが新鮮で、今までの価値観をすべてぶっ飛ばすような衝撃を受けた。ドレムスの手の動きは一つ一つが生き物のようで、それを操るマーに釘付けになった。
ハルは恋に落ちた。
ハルはそれから外泊が多くなり、最後には家を出てしまった。ハルの両親は彼らも大恋愛の末、駆け落ち同然で一緒になったことから、ハルの旅立ちには肝要だった。父親は、困ったら、帰って来いというだけだった。なぜか、寂しさもありながら、ハルはマーの部屋に棲み付いた。
昨日もそのまま寝ちゃたんだ。
ハルはマーにタオルケットをかけて、隣に座った。マサルのところから帰るとキッチンとリビングだけのこの部屋は非常に狭く感じられた。でもこの部屋には生活があった。ハルと住みだしてからほとんどアルバイトもしなくなったマー。練習台を叩いているか、散歩に行くか、システムキッチンの引き出しから金を持ち出し、パチンコに行くか。マーの生活はそれしかなかった。ハルはそれでも良かった。
両親と小さな弟。父親は地方都市にある精密機械を製造する会社の東京支社にいた。労働組合の活動に従事し、主任の上には出世するつもりはなかった。明るい父、だが父親が家にいることはほとんどなかった。母親は小さな弟に掛かりきりでハルは、寂しかった。マーのバンドのライブも自分で行こうとしたわけではなかった。真由美の誘いがなければいかなかった。これといって興味があるわけでもなかった。マーのバンド「マラマッド」は当時、認知度をましていたパンクロックバンドだった。はじめてパンクロックに触れたハルはすべての面で圧倒された。すべてがかっこよく、すべてが新鮮で、今までの価値観をすべてぶっ飛ばすような衝撃を受けた。ドレムスの手の動きは一つ一つが生き物のようで、それを操るマーに釘付けになった。
ハルは恋に落ちた。
ハルはそれから外泊が多くなり、最後には家を出てしまった。ハルの両親は彼らも大恋愛の末、駆け落ち同然で一緒になったことから、ハルの旅立ちには肝要だった。父親は、困ったら、帰って来いというだけだった。なぜか、寂しさもありながら、ハルはマーの部屋に棲み付いた。