ハルはマーの頭を撫でた。マーとのこれまでのことが瞳の奥に浮かんできた。気付くと涙が出ていた。
喫茶店で働いた。木造アパートの六畳の部屋だった。マーのドレムセットが積まれ、練習台があり、家財道具はほとんどなかった。安いラーメン屋にいき、一日一食で我慢した。練習台を叩く音で苦情が耐えなかった。マーはよく住人と喧嘩した。ハルはマーを全身を使って抑えることもあった。
ハルは普通の人だった。何かに不自由することもなく育った。だから、すべてが初めての体験だった。「マラマッド」の打ち上げに誘われついていった。初めてのアルコールで訳がわからなくなった。フラフラするハルをマーが支えた。気付くとマーの部屋だった。剥ぐように服を脱がされ、挿入された。痛かった。それでもマーと一つになれたことが嬉しかった。
時々、マーの部屋に行った。行くと激しいセクスが待っていた。金がないといわれると、ハルが食事代を出した。男性を好きになったことのないハルにとって何が普通なのかわからなかった。だから、マーとの交際がハルの常識になった。マーは金がなくなると高田馬場で立ちんぼをした。建築会社の日雇いを乗せるバスが行き過ぎた後に叔母さんが一人、仕事にありつけなかった人を、さらに安い日当で拾いにきた。マーはその叔母さんを待って、仕事に就いた。スタジオ代と食費、部屋代、それ以外はけして稼がなかった。
マーは言葉が少なかった。気に入らないと無言で去った。「マラマッド」の最後は全員の殴り合いで解散した。そのころ、ハルはマーのために働いていた。
レストランで働いた。金が足りなかった。スナックで働いた。金が足りなかった。歌舞伎町のショーパブをマスターが紹介してくれた。指名をもらう方法や同伴を見つけるやり方をやはりマスターの紹介で入った菊子さんが教えてくれた。相手のあしらい方や越えない一線、菊子さんは自慢げに話した。ハルはまじめにそれを聞いた。ハルは指名を取ることなどできなかった。客と話をすることも旨くできなかった。
同伴ができない時のペナルティが以外に大きいことも知った。せっかく自給がいいのにこれではまた、お金が足りなくなってしまう。そう思った。菊子さんに教えてもらって、ハルは原宿に立った。
マサル・・・・・・
「心が痛い。」
その言葉が響いた。
もし、もう少しハルが大人だったら、マーに話をしなかった。でも、ハルはマーに話さないでいることができなかった。
マーはたぶん昼間で目を覚まさない。マーの手を見るとスティックの豆ができていた。素敵なマー、ドレムを叩いている時のマーは別人だった。何かがのりうつったように素晴らしいビートを、空気を創った。だから、マーが、今のマーが可哀想だった。バンドのできないマー、それでも練習台に向かう時間は以前と変わらなかった。ハルはマーが目を覚ますまで待った。
喫茶店で働いた。木造アパートの六畳の部屋だった。マーのドレムセットが積まれ、練習台があり、家財道具はほとんどなかった。安いラーメン屋にいき、一日一食で我慢した。練習台を叩く音で苦情が耐えなかった。マーはよく住人と喧嘩した。ハルはマーを全身を使って抑えることもあった。
ハルは普通の人だった。何かに不自由することもなく育った。だから、すべてが初めての体験だった。「マラマッド」の打ち上げに誘われついていった。初めてのアルコールで訳がわからなくなった。フラフラするハルをマーが支えた。気付くとマーの部屋だった。剥ぐように服を脱がされ、挿入された。痛かった。それでもマーと一つになれたことが嬉しかった。
時々、マーの部屋に行った。行くと激しいセクスが待っていた。金がないといわれると、ハルが食事代を出した。男性を好きになったことのないハルにとって何が普通なのかわからなかった。だから、マーとの交際がハルの常識になった。マーは金がなくなると高田馬場で立ちんぼをした。建築会社の日雇いを乗せるバスが行き過ぎた後に叔母さんが一人、仕事にありつけなかった人を、さらに安い日当で拾いにきた。マーはその叔母さんを待って、仕事に就いた。スタジオ代と食費、部屋代、それ以外はけして稼がなかった。
マーは言葉が少なかった。気に入らないと無言で去った。「マラマッド」の最後は全員の殴り合いで解散した。そのころ、ハルはマーのために働いていた。
レストランで働いた。金が足りなかった。スナックで働いた。金が足りなかった。歌舞伎町のショーパブをマスターが紹介してくれた。指名をもらう方法や同伴を見つけるやり方をやはりマスターの紹介で入った菊子さんが教えてくれた。相手のあしらい方や越えない一線、菊子さんは自慢げに話した。ハルはまじめにそれを聞いた。ハルは指名を取ることなどできなかった。客と話をすることも旨くできなかった。
同伴ができない時のペナルティが以外に大きいことも知った。せっかく自給がいいのにこれではまた、お金が足りなくなってしまう。そう思った。菊子さんに教えてもらって、ハルは原宿に立った。
マサル・・・・・・
「心が痛い。」
その言葉が響いた。
もし、もう少しハルが大人だったら、マーに話をしなかった。でも、ハルはマーに話さないでいることができなかった。
マーはたぶん昼間で目を覚まさない。マーの手を見るとスティックの豆ができていた。素敵なマー、ドレムを叩いている時のマーは別人だった。何かがのりうつったように素晴らしいビートを、空気を創った。だから、マーが、今のマーが可哀想だった。バンドのできないマー、それでも練習台に向かう時間は以前と変わらなかった。ハルはマーが目を覚ますまで待った。