象が転んだ

たかがブロク、されどブロク

『長いお別れ』とチャンドラーの狂気と美学と、その2〜あらすじ前半です。

2018年02月23日 12時20分33秒 | 読書

 前回はレヴューでしたが。今度は、二回に渡り、あらすじを紹介します。記憶が曖昧なので、ご参考までにです。酔わずにこの本は読めませんな。ネタバレを読んでからでも、十二分に酔える作品ですので、ご心配なく。"いいね"をポチってくださった方有難うです。励みになります。


 私立探偵のマーロウは、テリー・レノックスという酔っぱらい男と出会う。片顔に傷を持つ男なのですが。戦争で仲間を助ける為、自ら爆弾の犠牲になるのです。この仲間というのが、後々結構な妨げとなる訳で。
 この男の、どこか怪しげだが、品性のある所に惹かれ、友人となり、バーで毎晩の様に飲み明かす(この時点で結構、酒入ってます)。見も知らぬ男との友情ですが、壊れそうな程に魅惑的ですね。

 実は、レノックスは、大資産家の娘シルヴィアを妻にしながら、浮浪者みたいに、毎晩の様にふらついてるのです。妻の親父も流石に心配になり、マーロウに調査を頼むほどに。百戦錬磨のマーロウが興味を持つのも理解出来ますね。

 しばらく経ったある日の深夜、レノックスはマーロウの自宅を訪れ、メキシコへ連れて欲しいと頼む。マーロウには珍しく、言われた通り、メキシコに彼を送り届けるが、案の定高く付いた。
 ロサンゼルスに戻ると、妻殺しの容疑でレノックスを捜している警官がいた。マーロウは殺人の共犯者として逮捕され、取り調べを受ける。しかし、レノックスを庇って黙秘を通し、警察から手酷い扱いを受ける。ここら辺の格闘シーンは痺れますな。

 しかし、メキシコからレノックスが自殺した旨の情報が届き、マーロウは釈放されるが。"俺は妻を殺した。ギムレットを飲んだら、僕の事は忘れてくれ"とのレノックスからの手紙が。"妻が僕を堕落させたんじゃない。僕はその前から堕落していたのだ"と。
 ここで、マーロウの"ギムレットを飲むには早すぎる"の捨て台詞が炸裂です。これには流石に痺れますな。まさに、"アンタの酒には騙されないぜ"って事か。ここで、何だか呑みたくなりますね。

 しばらくしてマーロウは、失踪した人気作家ロジャー・ウェイドの捜索を依頼される。マーロウは、このウェイドがレノックスの隣人であった事を知るのだ。
 そして、アル中のウェイドを発見すると、彼の妻で超美人のアイリーンの強い頼みを断りきれず、そのまま夫の見張り役として、ウェイド邸に留まる事となる。
 これが、またまた高く付く事になる。全く、美女と友情に脆いマーロウ様様です。

 決まった様に、マーロウはアイリーンから誘惑され、禁断の熟した甘くも、危険な肉体を噛るのだ。彼女も思わず気を許し、第二次大戦で10年前に亡くなった筈の元夫を、今も深く愛している事を告白する。ここにて戦争レノックスアイリーンが繋ってきますが。


 このアイリーンの元旦那こそが、何とあの死んだ筈のレノックスだったのだ。レノックスは戦争と自殺で二度死んだ筈なんですが。彼とは戦前、イギリスで結婚し、戦争で離れ離れになってたのだ。そして、レノックスが戦死したという誤報を受け(実はドイツ軍の捕虜になってた)、アイリーンはアメリカに渡り、ウェイドと再婚していた。

 一方、レノックスも戦後、アメリカに戻り、金持ちの娘シルヴィアと再婚し、偶然にも隣同士に住んでたと。ここから、チャンドラーお得意の、大きな番狂わせが起きます。
 飲みながら読むとしたら、ここで酔いが醒めてきそうな展開です。
 
 レノックスは、偶然にも当然の如く、アイリーンと隣同士で出会うのです。この幸運にも奇妙な再会が、二人の運命の歯車を狂わせます。お陰で、レノックスはアル中に陥り、アイリーンは自らを制御出来なくなります。この時、レノックスはマーロウと知り合うのですな。

 互いに、互いの伴侶が邪魔になるという、皮肉な結末へと収束して行くかに思われますが。何と、ウェイドはレノックスの妻シルヴィアと不倫関係に落ちてたのです。
 そして、あろう事か、ウェイドは酔った勢いで、シルヴィアを殴り倒します。アイリーンは、ぐったりとなった彼女を殺し、その罪をマンマと夫に被せます。愛人を殺したと勘違いした夫は、自暴自棄になり、アル中に陥ったという訳ですな。


 マーロウも、レノックスの件に関しては、疑いを持ってたが、アイリーン同様に深入りはしなかった。そして、何と今度は、ウェイドの死体が発見されるのです。
 最初は明らかに自殺とみえたが、その後、マーロウは、レノックスの妻殺しに、アイリーンが関わっている事に気づくんですが。このマーロウの絶妙な距離感が、実に憎いですね。

 アイリーンは、マーロウが殺したと激しく非難するし、レノックスの件では、マーロウを脅迫してくるギャングのメネンデス(レノックスの戦友で、彼に命を救われてる。コイツがまたシツコイんですな)、レノックスの岳父にあたる謎めいた大富豪ハーランなど、くせものが次々と彼の前に現れるが。これも実に巧みに躱すんですね。まさに、マーロウマジックというか、トリックというか。全く濃密な小説ですね。

 
 と面白くなった所で、前半は終了です。タイトルを少し変えてます。その2、あらすじ前半としました(5/6)。 



2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
毎回痺れます (ootubohitman)
2018-02-27 04:51:46
マーロウの叫びというか、チャンドラーの想いというか。実に濃密で読む者の心臓を抉るような言い回しには、痺れっ放しです。

惚れた女よりも男の友情を優先したんですかね。元旦那の新妻に嫉妬するのはともかく、旦那を殺しちゃ拙い。
ここでマーロウの狂気が炸裂するのですが。そのマーロウも深く傷つくのです。

転んださんが書いてる様に、推理小説の範疇を超えてます。
返信する
Re:毎回痺れます (lemonwater2017)
2018-02-27 15:11:56
またまた、こんにちはです(笑)。

 言われる通り、旦那を殺しちゃ不味かったですね。あれで全てが狂った。全ての友情と情欲と熱愛がどっかに吹っ飛んだ。

 でも、一度は本気で愛した美女を問い詰めるって、どんな気持ちなんでしょうね。一度味わってみたいもんです。

 マーロウの一つ一つの台詞は、相手にも自分にも深く深く突き刺さり、お互いを追い詰めるんですね。残酷というか情が深いというか。
返信する

コメントを投稿