象が転んだ

たかがブロク、されどブロク

結局、男は美人と巨乳に弱い〜「食われる家族」(2021)

2024年12月28日 06時39分57秒 | 映画&ドラマ

 結論から言えば、レビューの評価(3.2/5)よりもずっとよく出来たサスペンス・スリラーであったが、展開としては至極シンプルで、多少の不可解な所もあったが、最初から最後まで何とか気が散る事なく、見入る事ができた。

 半年前、轢き逃げ事件で妻を亡くしたソジン(キム・ムヨル=写真右)は失意の中、1人娘のイェナと共に実家に戻り、年老いた両親と一緒に暮らしてたが、ある日、25年も前に行方不明になった妹ユジンが見つかったとの連絡が入る。
 看護師になり、妹と名乗り出る女(ソン・ジヒョ=写真左)だが、DNA鑑定で血縁関係が証明され、両親は大喜びし、最初は警戒してたイェナも優しく接する女に懐いてしまう。だが、ソジンだけは不穏な空気を感じ取り、家政婦に女を探るよう頼むが、家政婦は女と出掛けた後に突然、消息不明となる。やがて、女の知り合いの夫婦が新しい家政婦として実家に住み込む様になり、家庭内の様子が急変する・・・(映画,com)

 冷静に思えば、看護師やってて25年間も音沙汰なしと言うのも無理はあるが、彼女の美貌と巨乳にそういう事はどうでもよくなってしまう(笑)。
 確かに、目の前の事故で妻をなくし、頭も心も深く混乱し、セラピーや薬物に頼りながらも、何とか仕事と家族を両立しようとするソジンの動揺も理解できる。つまり、”とても嬉しいけどおかしくはないか?”ってとこだ。
 一方で、短期間ですっかり家族に馴染んだ女を疑い続けるソジンの方が、逆に”薬で頭がおかしくなったのでは”と両親や娘に疑われるようになる。が、この時点で両親や娘が女に洗脳されてるとは、ソジンも思いもよらない。
 そういう私も、女の巨乳には釘付けだった。

 ソジンは、”これは絶対におかしい”と色々と女の過去や素性を調べ、”あの女は妹なんかじゃない”と警察に訴える。だが、担当の刑事も周りも女の魔力にまんまと翻弄され、逆にソジンを犯人扱いする始末で、最後には頼みの精神科医師も女に洗脳されてしまう。
 やがてソジンは決意し、”女は俺の家族を潰そうとしている”と、単独で女を追い詰める。
 崖っ淵に追い詰められた女は”アナタだって私を色目で見てたでしょ”とやり返す。
 元々孤児だった女は子供の頃に怪しい宗教団体に拾われ、心が休まる家族が欲しかったのだろうと、私は推測する。
 事実、最後にソジンは、子供の頃の思い出を回想する女の訴えの中にウソを見抜く。妹が持ってた風船の色は青ではなく黄色だったのだ。同じ様に、DNA鑑定も偽造されたものであったのだろう。
 そう考えると、全て辻褄が合う。勿論、薬物摂取によるソジンの妄想かもだが、抗うつ剤に妄想被害はないとの声もある。

 ただ、最後で娘を誘拐し、神として祀ろうとするシーンは余計だったし、展開を濁すだけである。それと、女の巨乳をさり気なくアピールし、怪しげな濡れ場のシーンを盛り込み、妖艶なスリラーゲームを微妙に演出してもよかった。
 ともあれ、ソン・ジヒョさんの美貌ではなく巨乳ばかりに心が奪われ続けた私ですが、お陰で深く何も考えずに映画に没頭できたのは何よりで、そこそこの良作だと感じた。
 という事で、”食われた家族”ではなく”巨乳に飲まれた男”の悲しいレビューでした。


追記〜「殺されたミンジュ」(2014)

 この作品も評価は高くない(3/5)が、失われた民主主義(韓国語でミンジュ)と言うテーマは悪くはなかった。
 因みに、韓国語で”ミンジュ”(民主)と呼ばれるが、その民主主義にも限界がある様に、この映画も途中からその限界に閉ざされてしまう。
 幼さが残る女子高校生“ミンジュ”が数人の男たちにより殺され、その後、”社会的底辺”に属する謎の集団(シャドウズ)により、ミンジュ殺害に関わった者たちが1人づつ拉致され、更には拷問にかけられ、殺害事件の供述を書かされていく・・
 典型のリベンジものだが、マ・ドンソクが拷問のリーダーを演じる事で、恐怖と狂気が倍増する所は見どころでもある。
 結論から言えば、殺された娘の父親こそがリーダーだったのだが、そのまま復讐したのでは詰まらない。つまり、殺害に関わった全員に供述を書かせ、民主主義的に罰するのだ。
 だが、拷問は回を重ねる毎に歪に残酷になり、更に自殺者が出た事で、メンバーたちは次第に恐れと矛盾を感じる様になる。
 つまり、権力にたてついて犯行を認めさせようと、権力に苦しむ国民がその弱さ故に罪を認め、圧政による不正や犯罪をなくすのが当初の目的であった筈だ。が、所詮は復讐に過ぎず、復讐は復讐を生むだけである。
 事実、最後はリーダーが拷問にかけ、フルボコにした男に殺されて幕が閉じる。が、この男も”上の命令に従っただけ”と供述するが、権力に怯えて変化を恐れ、現状維持に依存した人間的弱さと精神的脆さが故に、少女殺害に及んだのだ。つまり、これら致命的弱点は、拷問する側と拷問される側に共通する社会的問題だが、その欠陥構造を浮き彫りにしてはいる。

 奇才と称されるキム・ギドク監督だが、奇想天外というか不可解な設定の中に、不正や賄賂が横行する韓国の腐敗した民主政治や社会に対する様々な皮肉を込めた作品とも言えるが、謎の集団が軍隊・警察・清掃員など、様々に変装する度に微妙な違和感を覚えくもなかった。更に、大した演技派でもないキム・ヨンミンに、1人8役を演じさせた事で作品の質を低下させてしまう。
 但し、政治や社会の腐敗もだが、私たちを取り巻く日常や社会構造の歪みこそが、不正や腐敗の温床となる事も忘れてはならない。
 事実、韓国の某アイドルグループの隷属化に見られる様に、”体制が悪い”と解ってはいても変革する勇気を持てず、現状維持に縋り、その現状は逆に悪くなっていく。
 更に言えば、ごく一部の権力と富が支配する歪みきって腐敗した社会構造を(映画で見る様な)暴力ではなく民主的な方法で駆逐出来たとしても、その先にある景色を描けなかったら、全ては水の泡で、元の腐敗した政治や歪んだ社会構造に舞い戻るだけだろう。
 

最後に〜全ては見た目で決まる?

 結局この作品では、暴力で過ぎた権力を淘汰しようとしたが、その先の景色を描けなかったが為に、チャランポランな幕切れとなった。勿論、権力に反発する気持ちは痛いほど理解できるし、1人娘を無残にも殺された状況下で”暴力はいけない”とまでは言わない。
 だが、暴力の先にあるのは(所詮は)暴力であり、暴力で描けるのも(所詮は)暴力だけとなる。故に私的に言えばだが、復讐の鬼と化したマ・ドンソク演じるリーダーが殺害を指示した最高権力者をフルボコにし、再起不能の瀕死の重症を負わせる所で幕を閉じてもよかった。そうする事で、”無慈悲で野蛮な暴力による復讐劇の先に何が描けるのか?”を見る者に問う方が幕切れとしてはスムーズで誤解はなかった様にも思えた。
 そういう意味では、物足りなくも感じ、不安全燃焼にも思えた・・・

 と、ここまでは堅苦しい事を論じてしまったが、正直この手のリベンジ系には限界と矛盾がある事も判っていたし、巧く描けない事も想定内だった。
 実は、この映画の中で最も印象に残ったのが、マ・ドンソクの壮絶なる狂気でも、1人8役を演じたキム・ヨンミンでもなく、謎の集団の中で紅一点を演じた女(アン・ジへ)である。
 暴力に耐えてさえいれば、お金をくれるDV男に依存するという、堕落した”ヒモ女”を見事なまでに演じていた。よく見ると、容姿端麗でスタイルも抜群だが、堕落した女はこうした(濃醇ではなく)淡麗な美女を使った方が見る者を釘付けにする。
 冷たい系の女が好みな私だが、「食われる家族」のソン・ジヒョも冷たい系美女を演じていた。

 以上、紹介した2作品ともシリアスな展開ではあったが、その先を描ききれなかったが為に、不完全燃焼的な中途な幕切れとなる。
 勿論、コンセプトもテーマも悪くはなかったし、監督もキャストも優秀だった。評価やレビューはイマイチだったが、ソン・ジヒョとアン・ジへという2人の美女を堪能できたのは、想定外でもあった。
 結局は映画と言えども、全ては見た目である。そういう意味では、出来た良作だと思うのだが・・

 


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