ウロコのつぶやき

昭和生まれの深海魚が海の底からお送りします。

アメリ(2001年 フランス)

2010-10-02 02:31:00 | 映画感想
※ゆるーくネタばれアリです。拍手コメントへのお返事もここに。

まず、色のイメージが強烈な映画。多分画像をコンピュータで処理してると思うんですが、赤と緑がヴィヴィッドな蛍光色で浮かび上がって来る。背景のセットなんかも赤と緑が多用され、独特のおしゃれ感を醸し出しています。ヒロイン・アメリの服や髪型も可愛いし、ひとつひとつのシーンが絵はがきみたい。
お洒落映画の代表みたいに言われてるのが分かるような気がしました。

***

で、ストーリーですが。
一見「不思議ちゃんヒロインのお洒落でちょっと風変わりなラヴストーリー☆」っぽく見せかけて、実際は「精神的ヒキコモリヒロインの社会復帰リハビリストーリー」ですねコレ。

ヒロインのアメリは確かにちょっと変わった女の子ですが、映画の冒頭に出て来る彼女の生い立ちを見れば、彼女が「ちょっとフツウのヒトとは違う感性を持ってるの☆」な女の子ではなくて、同世代の友達とふれあう経験が皆無に等しいまま大人になってしまい、他人とのコミュニケーションに自信が持てずに自分の殻に閉じこもってる女の子なのが分かります。

一応、実家を出て一人暮らしして、カフェに務めて仕事もしているけど、精神的には人々の中に入って行けていない。映画館で、映画を見ている観客の表情を見るのが好き、というのは、常に傍観者であって当事者ではないという彼女のメンタリティを象徴している。ように思えます。

もっと分かりやすいのは、アメリと同じアパートに住んでいる『ガラス男』。人より骨が脆い体質のために滅多に表へ出ず、自室でルノアールの絵を模写している老人。この老人とアメリが絵の中の少女の話をするとき、実は少女を通してアメリ自身の事を話し合っている。「大勢の人々に囲まれているのに、彼女自身はここにはいない」というのが、正に社会の中でのアメリの状況。

そんなアメリが、自分の部屋に40年前に住んでいた男の子が残した『宝箱』を見つけたのをきっかけに、一歩を踏み出そうとする。
それでも当初は傍観者のままなんですね。時にはびっくりする程大胆な行動に出てるけど、自分自身が当事者として表に出ることは決してなく、常に影で糸を引く方に回っている。
八百屋のおじさんにいたずらを仕掛ける時、最後に彼女は想像の中で、扉にZの文字を刻んでいます。怪傑ゾロのマーク。彼女にとってこのいたずらはヒーローごっこなんですね。ごっこ遊びであって現実ではないから、ちょっと大胆な行動もとれる。

しかしそんな彼女も、自分の恋となると、自分が当事者に回らなければならなくなる。一目惚れした相手を、影からならさんざん振り回すことができるけど、いざ自分が当事者として相手の前に出なければならないとなると途端に立ちすくんでしまうという…。

さて、その恋の結末はどうなったのか…というのは、実はそんなに重要な事ではないかも。
ただ、『宝箱』を見つけた時に、これをきっかけに一歩を踏み出そう、と心に決めたり、彼女自身、心のどこかで自分も世界に出て行きたい、という気持ちはあったんだろうなあと思います。
最後の方、彼との甘い生活を妄想したりしていましたが、そうやって自分が当事者になる事を心のどこかで夢見ていた。それと、精神的な理由で引きこもっていたアメリに対し、物理的な制約のせいで引きこもらざるを得ないまま人生を送っていた『ガラス男』。彼がとても親身になってアメリの背中を押したのも大きいと思います。
たった一度の人生、他人の絵の模写ではなく、下手でも自分自身の絵を描きたいものですね。

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所でこの映画、謎が溶けた時にぱああ…と世界が光に包まれたり、現実の人物の隣に妄想ビジョンがもやもや~っと浮かんで来たり、落ち込む時に水になってべしゃっと凹んだり、現実にはあり得ない絵だけど、心理描写として分かりやすい表現が多用されてました。で、これってよく漫画で使われる技法だなと。フランスって、ヨーロッパの中でも特に日本のオタク文化がウケてる所という印象があるんですが、何か関係あるんでしょうかね?

***

これを見た後で大ちゃんの「アメリ」を見ると…やっぱり強烈なまでに繊細で内省的なプログラムですね。この映画自体全編心理描写の塊みたいですけど。
ジャパンオープンの後のカーニバル・オン・アイスではまた「アメリ」を滑ってくれるみたい。広く一般にウケるタイプじゃないんですかねえ…個人的にはすごく好きなんですけど。

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■Web拍手へのお返事

2010/9/27 15:48
カンブリア宮殿、録画して見る価値はありました。企業はお金を儲けなければ存続できないから、自社の利益を第一に考えるのは当然の事ですが、どうせ働くなら人から感謝される仕事がしたい、と改めて思いました。