2024年3月13日(水)
#342 エディ・テイラー「Bad Boy」(Vee-Jay)
#342 エディ・テイラー「Bad Boy」(Vee-Jay)
エディ・テイラー、55年リリースのシングル・ヒット曲。テイラー自身の作品。
エディ・テイラーは、筆者がもっとも愛好する黒人ブルースマンのひとりなのだが、これまでほとんど取り上げることがなかった。強いて言えば、ジミー・リードを取り上げる時に、ついでに紹介した程度か。
本日、改めて彼のことを紹介させていただこう。エディ・テイラーことエドワード・テイラーは1923年ミシシッピ州ブノワ生まれ。農村に育ち、独学でギターを習得。幼なじみの友人が2歳年下のジミー・リードで、テイラーはリードにギターとハープを手ほどきする。
同州リーランド周辺の酒場などで演奏した後、48年にシカゴに移住。リードと共にヴィージェイレーベルの初契約アーティストとなる。リードは53年よりシングルをリリースしていく。
以降、テイラーは人気シンガーとなったリードのバッキングをつとめながらも、自らのシングル曲も少しずつ発表していく。その中でも、最もよく知られているのが、この「Bad Boy」だろう。
55年にリリースされた本曲は、リードのハープをフィーチャーしたスロー・ブルース。ブルース・スタンダードのひとつに挙げてもいい名曲だ。
エディ・テイラーの魅力は、どうしてもそのシブいギター・プレイを中心にして語られがちだが、どっこい彼の声もなかなかいい味わいがあると、筆者個人としては思う。
少しエグみのある個性的な声質が、ブルースのようなパーソナルな音楽には非常にフィットしている。
そしてテイラーが作るメロディは、シンプルで覚えやすいものが多い。また、歌詞にもグッと来るものがある。
「Bad Boy」はテイラー自身の境遇が歌詞に反映されている。ミシシッピの田舎を飛び出て汽車に乗り、遠い大都会シカゴに、単身やって来た不良青年(テイラー)。頼る者とてなく、ひとり強く生きていかねばならない。
心細さの一方、愛する女さえいればなんとかなるさというほのかな希望もある。こんな都市生活者の心情を、シンプルな歌にまとめるのが、テイラーは実にうまい。
翌年にはシングル「Big Town Playboy」をリリース、「Bad Boy」と共に、テイラーの代表曲となる。
前作と比べると、いかにも快活で自信に満ちた雰囲気のあるナンバーだ。そしてその「プレイボーイ」はその後終生、テイラーのニックネームともなる。その後シカゴ・ブルース界において、サイドマン、フロントマンの両面で30年の長きにわたって活躍する彼の、原点とも言える。
この2曲を続けて聴くと、ただのポッと出の不良青年から、都会生活をわがものとして、小粋にブルースを奏でる遊び人へと成長するさまが感じられるね。
個人的にはどちらかと言えば「Bad Boy」のやるせなく、頼りなげな感じが好きで、ブルース・セッションでもかなりの頻度で取り上げて演奏しております。
エディ・テイラーの独特の節回し、ソリッドなギターの響き、ジミー・リードの哀感たっぷりのブロー。これぞ、ブルースの真骨頂。何度聴いても飽きるということのない一曲。
この曲を生み出しただけでも、エディ・テイラーの名前は永遠にブルース史に刻まれてもいいと、筆者は思っている。