2024年3月24日(日)
#353 ジ・アニマルズ「Inside Looking Out」(Decca)
#353 ジ・アニマルズ「Inside Looking Out」(Decca)
ジ・アニマルズ、66年2月リリースのシングル・ヒット曲。ジョン&アラン・ロマックス、エリック・バードン、チャス・チャンドラーの作品。トム・ウィルスンによるプロデュース。全英12位、全米34位。同年リリースのアルバム「Animalization」に収録。
英国のロック・バンド、アニマルズは63年ニューカッスル・アポン・タインにて結成。米国のブルース、R&Bを主なレパートリーとする。64年3月、シングル「Baby Let Me Take You Home」でデビュー、9月にファースト・アルバム「The Animals」をリリース。
バンド名は有名なバンド・リーダー、グレアム・ボンドが名付け親という。彼らのルックス、雰囲気から付けたらしい。
同年6月リリースのシングル「The House of the Rising Sun(邦題・朝日のあたる家)」が大ブレイク。米国のフォーク・ソングを黒いフィーリングでアレンジしたこの曲は、彼らの代名詞ともなり、日本でもヒットする。
以降、「We Gotta Get out of This Place(邦題・朝日のない街)」「Don’t Let Me Be Misunderstood(邦題・悲しき願い)」といった曲を立て続けにヒットさせ、トップ・グループに躍り出る。
しかし、好調は意外と長く続かず、66年にバンド・メンバーが3人も脱退して、一時解散状態に陥ってしまう。
その後、本拠地を米国サンフランシスコに移して「エリック・バードン&ジ・アニマルズ」という新バンド名で再開した。
本日取り上げた「Inside Looking Out」は、66年初頭、まだオリジナル・メンバーの5人で活動していた時期の作品だ。
作曲者のクレジットに、民族音楽学者のロマックス父子の名前が連なっているのは、この曲が彼らにより、もともとフォーク・ソングであったものが収集されたからである。そして息子のアランが自ら演奏したアルバム「Popular Songbook」により広く知られることとなる。
それをバンド・メンバーのバードンとチャンドラーがさらに自分達流に解釈、アレンジした成果が、本曲なのである。
とはいえ、パッと聴いただけでは、この曲が民間伝承のものだったとは、まず分からないよね。
筆者は(たぶん読者の皆さんも大半そうだと思うが)、この曲をまずグランド・ファンク・レイルロードのライブ盤で聴いて初めて知ったクチなのだが、当時から「オリジナルはアニマルズ」という情報は掴んでいたものの、もともとフォーク・ブルースであったとは後年になるまで知らなかった。
日本では「孤独の叫び」と名付けられたアニマルズ版は、今聴いてみても、実にヒップでイカしたビート・ナンバーだ。後のグランド・ファンクの、延々と続くライブ演奏も悪くはないのだが、筆者はオリジナルのきっちりコンパクトにまとまったバージョンの方に、どうしても軍配を挙げてしまうなぁ。
シンプルで隙のない、タイトなサウンド、パワフルなボーカルとコーラス。ギター・ソロに頼らずとも、圧倒的な迫力でリスナーのハートを揺さぶってやまないのである。
エド・サリバン・ショーに出演した時の映像も残っているので、そちらもご覧いただこう。当て振りではなく、ちゃんと生演奏をしていると思われるのだが、これが実にイカしている。「アニマルズ、けっこうやるじゃん!」と唸ってしまうパフォーマンスだ。
みてくれも演奏も泥臭く、華やかさには欠けるが、ホンモノの実力を持ったバンド、それがアニマルズだ。単なる黒人音楽の模倣から一歩進んで、自分達のものとして消化したその卓越したセンスを、この曲に嗅ぎ取って欲しい。