記憶探偵〜益田啓一郎のブログ(旧博多湾つれづれ紀行)

古写真古地図から街の歴史逸話を発掘する日々。ブラタモリ案内人等、地域の魅力発掘!まち巡りを綴ります。

半年に一度の「絵葉書サミットin福岡」開催!アンティーク絵葉書の魅力

2007年05月15日 22時40分02秒 | Weblog
 週末はアンティーク絵葉書の蒐集研究者が集う「第9回絵葉書サミット
イン福岡」を二日市温泉で開催した。半年に1回、日本絵葉書会のメンバ
ーを中心に一晩宿泊してまる二日間、絵葉書三昧である。世話係り(幹事)
の私は、福岡の会員の協力も得て、毎回「紙の会オークション」開催や他
の会とも協調して、遠方から来る参加者が楽しめるようにサポートするの
が役目となっている。

 今回も筥崎宮参集殿を会場にしてのオークション、吉井など骨董市会場
めぐり、久留米の紙の会などを前後に組み合わせ、メインのサミット会場
は福岡市郊外の二日市温泉「アイビーホテル筑紫野」に宿泊し夜通し絵葉
書交換会や情報交換などを行った。

 今回の宿は江戸時代創業の旧「糀屋旅館」である。数年前に近代式のホ
テルとなり、リーズナブルな料金設定と格安自然食バイキングで人気の宿
である。古くは「吹田の湯」「武蔵温泉」とも言った二日市温泉街の中央
に位置し、太宰府天満宮や九州国立博物館にも近い立地が魅力である。武
蔵温泉の名は、すぐそばにある九州最古の寺である武蔵寺(ぶぞうじ)に
ちなむ。天然記念物の大藤は今年も見事な花を咲かせた。

 今回のホテルの正面には同温泉街の象徴である御前湯、左隣には博多湯
があり、同ホテル併設の出湯「バーデンハウス」も夜は大勢の入浴客で賑
わっていた。御前湯の隣には湯町公民館があり、戦前の湯町の町並み写真
などが展示されていて、懐古に浸ることができる。

○今日の写真は、右手に糀屋旅館も映っている明治末の二日市温泉絵葉書。
 現在は中央の川は地下水路となって、上は湯町道路である。木造3階建
 の旅館は姿を消したが、柳のある湯町風情は今も昔も変わらない。

 昭和初期随一のホテルであった延寿館ホテルは、平成2年に温泉付きの
 老人ホームとなっている。延寿館は、鳥瞰図絵師・前田虹映が作品を描
 いていて、以前は原画もあったそうだが、業態転換までに処分されたと
 のこと。今は当時の鳥瞰図パンフレットや絵葉書が残るだけだ。


 今回宿泊した和室・洋室セットの最上階の部屋には、展望風呂も併設さ
れていて、まさに温泉気分満喫である。しかし、参加者は温泉風情そっち
のけでサミットに集中(笑)。時間が経つのも忘れて、参加者が持ち寄っ
た明治期の珍しい絵葉書や各人の専門分野の研究解説に見入り聴き入った。

 絵葉書といっても奥が深く、近年では米化粧品メーカー会長のローダー
コレクション(日本の明治期美術絵葉書コレクション)がボストン美術館
はじめ海外や日本国内でも巡回展が開催され、その芸術性の高さで話題と
なっている。アール・ヌーヴォーやアール・デコの絵葉書は日本でも明治
末から流行し、デザイン聡明期に洋画家や新人画家が競って絵葉書作品を
発表し、その中から竹久夢二や小林かいち、中原淳一などが著名となった。

 私の研究している吉田初三郎も活動初期から絵葉書作品を発表していて、
虎眠の雅号で発表した明治末の絵葉書は、絵葉書会のメンバーが発掘した。
初三郎の絵葉書作品は、代名詞でもある鳥瞰図絵葉書だけでなく、風景絵
葉書、美人絵葉書、木版絵葉書などジャンルも幅広い。木版以外の絵葉書
は発行部数が比較的多く、現在でも入手しやすいものが多い。

 今回のサミットでも明治末、最初の大きな絵葉書ブームである日露戦争
記念の美術絵葉書が大量に交換会に出品され、また明治期の手彩色風景絵
葉書なども多数出て、参加者のボルテージは最高潮であった。同じような
趣味の王様である切手蒐集には目録があるが、絵葉書は民間主導で発行さ
れたものにデザイン的に優れたものが多く、種類も半端でない。当然だが
全体像が判る目録は無く、相当な蒐集家でも未見の絵葉書がある。

 そこが絵葉書の魅力でもあり、またこれまで未研究の分野だっただけに
作家や写真家の作品発掘、研究の対象として近年は美術館や博物館なども
興味を示し、日本の近代美術・デザインの一分野として成長している。ま
た印刷史の中でも絵葉書は重要で、最新の印刷技術は全て絵葉書で試され
ている。一枚の絵葉書に5種類もの印刷技術が入った、工芸品的なものも
数多い。

 次回は記念すべき10回目のサミットを秋に開催予定。マニアックな蒐
集家だけでなく、気軽に参加できる喫茶ギャラリー展や入門ワークショッ
プなども開催したいと思っている。現在もポストカードとして様々な絵葉
書が街で売られている。詩人や写真家、画家の表現の場として、これから
も絵葉書文化は続いていきそうだ。

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