5月22日のNHK連続テレビ小説『エール』は応援歌「紺碧の空」のお目見えで盛り上がりました。比較的史実に忠実に進行している今回の「エール」ですが、私的には早慶戦第2戦で早稲田が慶応に劇的勝利した試合シーンに大注目しました。(以下は昭和初期の六大学野球早慶戦の勝敗一覧)
この日、ドラマの試合シーンもテンポよく進みましたが、しっかりとナレーションで「早稲田は三原のホームスチールで劇的勝利」と紹介されました。そう、「三原」とは読売巨人軍の契約第1号選手となる「三原修」さんの事。プロ野球や東京六大学の歴史を少しカジっていれば気づく方もいたと思います。戦後、監督として巨人を優勝させながらも実権のない総監督に祭り上げられ、翌年に誕生する西鉄ライオンズの監督となり福岡へ来て「三原脩」と改名するその人。私は勝手にドラマを観て一人で興奮しました(笑)。
そして、慶應の相手投手が水原茂さん。のち舞台をプロ野球に移しても続く二人の宿命のライバル対決緒戦の背景に、実は古関裕而さん作曲の応援歌「紺碧の空」誕生秘話があった事になりますね。手持ちの六大学野球史関連の本数冊で調べると、この年の春の六大学・早慶戦から楽隊による応援が始まった事もちゃんと記されてました。初戦で指揮をしたのは作曲者・古関裕而さんだそうです。今に至るまで続く演奏付きの応援の最初の試合だったんですね。
三原さんはこの試合が自身の本格的な野球人生が始まった転換期であり「魔術師」と呼ばれた三原野球の発想の原点、宿敵・水原との最初のライバル対戦であった事などを、自伝「風雲の軌跡〜わが野球人生の実記」の冒頭で記しています。
「巌流島の血統」に例えられる二人の強烈なライバル関係は、のちに三原さんが九州へ来て西鉄監督を引き受ける一因になりますし、「大阪タイガースの歌(六甲颪)」や「巨人軍の歌(野球の王者)」をはじめとする野球関連の歌の数々の布石を感じることができました。
朝ドラ「エール」、私的にはさらに戦争の描かれ方にも興味を持ちます。戦後、福岡県内の11もの学校の校歌を作家・火野葦平とタッグを組んで制作しますが、二人は一緒に戦地へ赴いた戦友でもあり、戦意高揚のための小説や歌を作った苦難の時期をともに過ごしています。ドラマでこのあたりにも触れるのか、気になるところです。
また、火野葦平(本名:玉井勝則)さんの母校は小倉高校。そう、戦後すぐ1947(昭和22)年夏と48(昭和23)年夏に甲子園連覇を達成した高校のOB(当時は小倉中学)で、しかも在学中は野球部に在籍したそうですし、さらに早稲田大学に進学していますから、戦地で一緒に行動した際にはきっと野球や応援歌の話をしただろうなと想像を膨らませます。葦平さんの小説・随筆には野球が出てくるものも複数ありますので。
今回は、私なりの「エール」の楽しみ方を記しました。
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