1970年から1971年にかけてのクリスマスホリデイに、事情があって家族のもとに帰ることができず、寮で過ごさざるを得ない犯行気味の高校生と、嫌われ者教師の交流を描くアメリカ映画『ホールドオーバーズ』を見ました。正直期待せずに見に行ったのですが、アメリカ映画の良心を感じさせる切なく温かい映画でした。
生真面目でがんこもので学生や同僚からも嫌われている教師ポールは、クリスマスホリデイに家に帰れない学生の監督役を務めることになる。その役割も校長から罰として与えられたもので、しかもその校長は、ポールの若いころの教え子なのである。家に帰れない学生はアンガス。母親が再婚したために休暇の間も寄宿舎に居残ることになるのだが、アンガスには納得できない。これは観客も同じだろう。心が荒れてもしょうがない。そしてもうひとり、寄宿舎の食堂の料理長として学生たちの面倒を見るメアリーの3人だけがクリスマスを寄宿舎ですごすことになる。メアリーは一方で、自分の息子をベトナム戦争で亡くしている。
この先の展開が1970年代のアメリカ映画を思い出させるのだ。ベトナム戦争を背景とし、心のつながりの大切さを訴えるのである。だめな人間なんかいない。助け合い、ともに生きて行くことの意義を感じるいい映画だった。
メアリー役のダバイン・ジョイ・ランドルフが第96回アカデミー賞で助演女優賞を受賞した。