旧出雲国は鐵穴流し(かんなながし)による砂鉄採取と踏鞴製鉄(たたらせいてつ)で一世を風靡した。砂鉄のチタン含有率が4%台と極めて低く、品質としては最良であった。その踏鞴製鉄の様子がジオラマで再現されている。
和鋼博物館前庭に、写真の鉧(けら・踏鞴炉から取り出した鉄の塊)が並べられている。
エントランスを入ると写真の足踏み式鞴(ふいご)が出迎えてくれた。
良質の砂鉄埋蔵分布が石見・出雲・伯耆・因幡に分布し、特に出雲に集中していることがお分かり頂けると考える。雲州・松江藩はそれなりに豊かであった。
踏鞴炉の構築手順が模型で展示してあった。表面ではなく地下に、それなり構築物があったことは初見であった。
本床(ほんどこ)と小舟を作る・・・とある。本床とは中央の窪み、子舟とは左右の丸太が詰まっているところのようだ。
本床に丸太というか薪を敷き詰め、土を被せて突き固め天井とする。敷き詰めた薪は蒸し焼きにして炭とする。
・・・すると、上掲のようになり、中央に踏鞴炉を築炉する。なお大掛かりな地下構造は、地下の水気や湿気を防ぐためのものであるという。
左右に足踏み式の鞴を設置して完成する。
江戸末期の操業の様子。このようにして、下写真の鉧を取り出すことができるという。
この鉧から取り出した良質の玉鋼(たまはがね)から、安来市の古墳から出土した鉄刀が復元されており、それが展示されている。
(金銅装双龍環頭太刀 6世紀後半 高広横穴墓出土)
(素環頭太刀 4世紀 大成古墳)
出雲の玉鋼なくして全国の刀匠は成り立たなかった。その系統を受け継ぐ日立金属安来工場、いわゆるヤスキハガネを日立製作所は手放すという。特殊鋼に未来はないのか? 日立製作所はより一層選択と集中を推進する意志の表れと受け取りたい。
<了>