話が古いが2013年6月8日、バッチャンへ行ってきた。ハノイの南南東12kmで紅河を渡り、その左岸の土手を南下40分で到着した。陶磁器販売店はほどほどにして、窯場を見学した。写真はその一コマである。
何箇所かの窯場を見たが、多くは轆轤を使わず、石膏製の型への原料泥漿の流し込み成形であった。燃料は石炭の粉末に水を加えて練り上げ、団子状にして窯壁や塀に貼り付けて乾燥させたもので、いわゆる練炭を用いる昇焔式窯である。最近ではガス窯が普及し、この練炭窯が見れなくなるのは、早々遅くはなさそうである。
写真は龍の貼花文で装飾した造形物で壺であろうか、口縁に円周上に溝がめぐっているので、蓋がくるのであろうか?・・・陶工に質問していないので、よく分からない。場合によっては香炉か燭台であるかもしれない。この貼花文も型への流し込みでつくられており、昔ながらの陶工の手で一つずつ作られてはいない。
窯場を見た全体的な印象は、手作りとは遠く、伊万里や波座見の窯場を見ている印象で、大量生産向きの造形方法であった。
そのバッチャンとは一転して、昔ながらの紐作りの土器成形である。ハノイ女性博物館で目にした光景である。写真の動画が流されていた。場所は旧チャンパ王国の故地である、ベトナム南部のビン・トゥアン(Binh Thuan)省と、その北側(山側)に接するラム・ドン(Lam Dong)省でのことである。
展示パネルの説明は以下の通りである。ラム・ドンのチュル(Churu)族女性やビン・トゥアンのチャム(Cham)族の女性は、伝統的な方法で素焼土器を作っている。
粘土を捏ねて筒状の粘土塊を準備する。そして最終的な形状に合わせて、更に縄状に細くしながら紐作りする。造形にあたり、女性の陶工たちは、写真のように可動式の轆轤は使用せず、腰より少し低い台付きスタンドを用いる。
そして使う道具はシンプルで、造形物を整形するのに棒や竹製の輪を用い、粘土を伸ばすために濡れた布を、成型後の表面を磨くために果物の種や小石をそれぞれ使う。
チャム族は造形物を飾るために、貝を使って文様を付ける。そのご乾燥させ、外で野焼き焼成する。造形物は板状の木材の上に、大きいものから小さいものの順に積み重ね、その上にも木材を載せる。それらは割木や枝、、稲わらで囲まれ数時間燃焼させて作る。チャム族やチュル族の作る陶磁は、自家用や販売目的で壺、湯沸し(薬缶)、瓶や焜炉である。
以上が展示パネルの説明である。現在の急速な経済発展の中、これらの土器作りは廃れて無くなるものと思われる。ベトナム北部の黒タイや白タイ、あるいはムオン族の陶磁生産はどうなっているであろうか。
<了>