過日、Yahooオークションを見ていると、コピーや偽物が氾濫している中でコレはと思われる品が2点出品されていた。2点ともにミャンマー(ビルマ)陶磁であるが、これらを実見したのは、カムラテンコレクション(富山市佐藤記念美術館)、福岡市美術館、町田市立博物館やBKKのバンコク大学付属東南アジア陶磁館、ランプーン国立博物館などで合計120-130点ほどで、錫鉛釉緑彩陶にいたっては30点ほどである。したがって、記述している考察が的外れであるとも考えられる点、あらかじめお断りしておく。
〇錫鉛釉緑彩陶
上掲3点は出品物の写真である。一見、本歌のようにも見えるが、よく見ると違和感満載である。
ミャンマーはマルタバン近郊で念願の窯跡が発見された。本物の約束事(特徴)を以下箇条書きにしておく。
1)盤は轆轤をひき、器形を整えてから静止して、切り離しの糸切は、手前に水平にひいている。そして高台を付け、或る程度乾燥した段階で、轆轤を回し高台に沿って削り整形している。つまり高台内(底)の中央部は静止糸切痕を見、高台は付高台である
2)盤の多くは27cmから31cmの外径で、直径20cm程の大きな付高台である。その高台内とおいうか底は、丸い筒状の焼台に載せて焼成されており、その焼成痕を残しているのが一般的である
3)釉薬の垂流れ防止目的と思われる細工が、高台の外側面に施されている。それは筍の皮を剥いたような輪が削り込まれ、それが段状になっている(溝が削り込まれてはいない)
4)胎土はやや粗く、明るいオレンジ色、赤茶色、それに深い紅色のようにみえるが一定していない
5)生地は素焼きをしているのか、生掛けなのか、あるいは双方存在するのか、明らかになっていない
6)釉薬は失透性で純白ではなく、クリーム色がかっており、その釉薬は厚くかかっている
7)釉薬は高台の畳付きも覆っており、高台内(底)にも釉が刷毛塗されているのが散見される
8)絵付けは釉上彩で、錫鉛釉に銅の緑彩が溶けたものである。釉掛け後の銅絵具の筆彩は、絵具の釉薬への吸収が速く、絵具に伸びがないとされ、筒描きであったろうとの説が定説化している
9)銅絵具は還元焼成で緑色に発色する。従って窯の気密性を要する。また温度が上がりすぎると、銅は炎とともに消えてしまう。よって焼成温度は1000-1100度程と思われ、盤を指で弾いても磁器のような共鳴音はなくニブイ
以上である。
上掲の写真を見ると、釉薬層に厚みはなく、地肌を見る箇所も存在する。錫鉛釉は厚くかかっているのが特徴で、それゆえ緑彩絵の具が吸い取られ、ニジミ現象を引き起こす。したがって写真の緑彩線の細さはあり得ない。
錫鉛釉緑彩陶の口縁に鍔はなく、いわゆる直口縁であるが、出品物は稜花縁である。但しわずかながら鍔縁盤は存在するが、写真の稜花縁は実見していない。尚、器胎は本物かと思われ、いわゆる後絵の可能性がある。
尚、魚文の頭部の描き方はサンカンペーンの魚文形状ににており、このような魚文の本歌は見ていない。尚、代表的魚文の本歌盤を下に掲げておく。
ランプーン国立博物館
〇緑釉盤
高台の立ち上がり面がどうなっているか、写真がなかったのでよくわからない。外側面の鎬は存在するパターンであろう。
中心文様の花文は、ミャンマー陶磁では見られる文様である。気になるのは緑釉の表面にガラス質の光沢が見られないことである。ミャンマーのこの手の緑釉は光沢を見るのが一般的である。真贋については小生の限界を超えており、判断できない。
いずれにしても1万円以下であれば、買い物であろう。例え偽物としても授業料である。
<了>
奥さんはブッソボンという名前でしたね
(よく覚えてんな)
ゴールドラッシュだったのでしょうね、学校の先生までが仕事より採掘だってんで鑑定してもらいにヌン家まで来るんですよ
で、ヌンさんが虫眼鏡でジッと観察して
これは800バーツだね どうする買う?ってこっちに聞くわけですよ笑
懐かしい気分です