ダムの訪問記

全国のダムと溜池の訪問記です。
主としてダムや溜池の由来や建設の経緯、目的について記述しています。

岩知志ダム

2021-08-17 12:38:55 | 北海道
2021年7月20日 岩知志ダム
 
岩知志ダムは北海道沙流郡日高町三岩の一級河川沙流川本流にある北海道電力(株)が管理する発電目的の重力式コンクリートダムです。。
1951年(昭和26年)の電気事業再編令で誕生した北海道電力(株)は戦後の電力不足に対処するため各所で電源開発を進めます。
1958年(昭和33年)に完成した岩知志ダムもその一つで、ここで取水された水は岩知志発電所に導水され最大1万3500キロワットのダム水路式発電を行っています。
 
ダム直下に国道237号景勝橋が架かりダムと正対できます。
ラジアルゲート3門を装備したいかにも発電ダムと言った体。
 
ゲートは紫に近い朱色。
 
ゲート部分をズームアップ
左岸(向かって右)1門だけゲート形状や色が異なります。
一方右岸2門はゲート上部に切れ込みがあります。
 
右岸ダムサイトからも見学できます。
左岸の取水口。
 
上流面
かつてはピアは被覆されていたようですが、今は巻き上げ機がむき出し。
 
 
ダム直下の左岸が大きく崩落しています。
2019年(平成31年)の胆振東部地震によるものと思われますが、大丈夫なんでしょうか?
 
水利使用標識。
 
(追記)
岩知志ダムは洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行う予備放流容量が配分されました。

0051 岩知志ダム(1687)
北海道沙流郡日高町三岩
沙流川水系沙流川
33メートル
92.2メートル
5040千㎥/560千㎥
北海道電力(株)
1958年
◎治水協定が締結されたダム

美生ダム

2021-08-17 12:30:30 | 北海道
2021年7月20日 美生ダム
 
美生(びせい)ダムは北海道河西郡芽室町伏見の十勝川水系美生川にある灌漑目的の重力式コンクリート・フィル複合(フィルコンバインド)ダムです。
十勝平野中央部に位置する芽室地区は大規模な畑作・酪農が展開されていますが、灌漑期の降水量が少ない上にかんがい施設も未整備で、用水不足が恒常化していました。
1981年(昭和56年)に北海道開発局農水部による国営かんがい排水事業芽室地区が着手されその灌漑用水源として1999年(平成11年)に竣工したのが美生ダムです。
運用開始後は芽室町が管理を受託、かんがい排水事業全体も2007年(平成19年)に竣工し、約1万2000ヘクタールの畑地に灌漑用水を供給しています。
ダムは地質上の理由によりフィルコンバインド型式が採用され、右岸がセンターコアロックフィルダム、左岸が重力式コンクリートダムとなっています。
 
芽室町上美生から美生川沿いの林道を約10キロ西進すると美生ダムに到着します。
ダム下への管理道路は進入禁止、ダムも右岸入り口にゲートがあり立ち入りできません。
 
ただし、右岸高台からダムや管理事務所、ダム湖などを見ることができます。
堤体は右岸側がロックフィル、左岸が重力式コンクリートのフィルコンバインドダムで堤頂長は350メートル。
 
堤体をズームアップ。
万一の堤体越流に備え、フィル部分の決壊防止のため重力式コンクリート部分の堤高が低くなっています。
 
洒落たデザインの管理事務所。
 
コンクリート部はクレスト自由越流頂6門を備え堤高は47.2メートル
ゲート右岸側に取水設備があります。
 
 
左手の建屋は艇庫でダム湖側にインクラインがあるようです。
 
美生ダムの説明板
文字が剥げて全く読めません。
 
山中深くにありますが総貯水容量は940万立米とかなりのスケールで1万ヘクタールを超える広大な畑地の水源となっています。

0137 美生ダム(1686)
北海道河西郡芽室町伏見
十勝川水系美生川
GF
47.2メートル
350メートル
9400千㎥/6000千㎥
芽室町
1999年

幕別ダム

2021-08-17 12:01:51 | 北海道
2021年7月20日 幕別ダム
 
幕別ダムは北海道中川郡幕別町日進の十勝川水系稲士別川にある灌漑目的のアースフィルダムです。
十勝川右岸の低平地に位置する幕別地区では広く畑作が展開されていますが、灌漑期の降水量が少ない上に灌漑施設の老朽化が進み用水不足が恒常化していました。 
1983年(昭和58年)に北海道開発局農水部による国営かんがい排水事業幕別地区が着手され、その灌漑用水源として2004年(平成16年)に竣工したのが幕別ダムです。
運用開始後は幕別町が管理を受託、かんがい排水事業全体も2009年(平成21年)に竣工し、現在は約1000ヘクタールの畑地へ灌漑用水が供給されています。
 
ダム下は立ち入り禁止
堤高26.9メートル、堤頂長335メートルと北海道らしい横長ダムです。
 
貯水池左岸に斜樋があり、そこからの水路が伸びています。
 
堤体左岸中段のこの建物は放流設備と思われます。
 
天端も立ち入り禁止。
ダムはここから遠望するのみ。
 
左岸に艇庫と取水設備を兼ねた建屋がありインクラインと斜樋が並んでいます。
 
こちらは右岸の管理事務所
隣に国営幕別かんがい排水事業の説明板がありますが、さすがに文字は読み取れません。
 
グーグルの空撮写真を見るとなかなかきれいなアースダムですが、これだけガードが堅いと手も足も出ません。

0150 幕別ダム(1685)
北海道中川郡幕別町日進
十勝川水系稲士別川
26.9メートル
335メートル
2300千㎥/2000千㎥
幕別町
2004年

西札内ダム

2021-08-17 11:51:28 | 北海道
2021年7月19日 西札内ダム
 
西札内ダムは北海道河西郡中札内村新札内南の十勝川水系札内川左支流ヌプカクショナイ川にある農地防災目的のアースフィルダムです。
ヌプカクシュナイ川と札内川合流地点下流域では融雪期や豪雨時に洪水被害が多発し流域の農地に多大な被害をもたらしてきました。
そこで北海道は1979年(昭和54年)に農水省の補助を受けた防災ダム事業に着手、1994年(平成6年)に竣工したのが西札内ダムです。
 
ダム建設に合わせて周辺の環境整備が進められ、ダム下は桜公園として開放されています。
堤高21メートル、堤頂長184メートルの横長ダムで、クレスト自由越流頂3門、自然調節式オリフィス1門を擁しています。
 
芝が刈られたばかりのダム下は開放感たっぷり。
時間に余裕があればお弁当でも広げてのんびりくつろぎたいところです。
 
ダム下に建つアイヌ人サツナイ族の祖の銅像。
 
ダム周辺の案内板。
 
下流面。
 
かなり木が邪魔する上流面の眺め
赤いゲージはオリフィスゲート。
 
天端からの眺め
減勢工には副ダムが設置されています。
小さな公園ですがきれいに整備され気持ちのいいスペース。
 
総貯水容量94万6000立米の貯水池。
ダムの目的は農地防災のFだけなのでこれでダム最低水位。溜まっている水は堆砂容量分となります。
 
オリフィスの操作バルブ。
 
下流面。
 
天端と管理事務所
管理事務所の屋上は展望台になっていますが、木が茂り眺めはよくありません。
 
ダム北側の山頂には一本木展望タワーがありますが、ここからも木が茂りダムを見ることはできません。

0160 西札内ダム (1684)
北海道河西郡中札内村新札内南
十勝川水系ヌプカクショナイ川
21メートル
184メートル
946千㎥/773千㎥
中札内村
1994年

札内川ダム

2021-08-17 11:40:31 | 北海道
2021年7月19日 札内川ダム 
 
札内川ダムは北海道河西郡中札内村南札内の十勝川水系札内川にある多目的重力式コンクリートダムです。
札内川は十勝川の主要支流で十勝平野を南北に縦断し農業王国十勝を支える重要河川ですが、渇水や洪水被害が多く抜本的洪水対策や利水対策が望まれていました。
1981年に当地への多目的ダム建設が決定し、1988年(平成元)より本体工事が着手され1998年(平成10年)に札内川ダムが竣工しました。
ダム建設地点が日高山脈襟裳国定公園内に位置することから、建設工事は自然改変を抑制し自然環境の保全に配慮した形で行われました。
また積雪により当期の工事が抑制されることから、工期の短縮が可能なRCD工法が採用されました。
札内川ダムは国交省北海道開発局建設部が直轄管理する特定多目的ダムで、札内川の洪水調節、安定した河川流量の維持と不特定灌漑用水(既得灌漑用水)への補給、札内川沿岸農地約2万ヘクタールへの灌漑用水の供給、十勝中部広域水道企業団を通じ1市4町2村の人口約33万人への上水道用水の供給、電源開発(株)札内川ダム発電所での最大8000キロワットのダム式水力発電を目的としています。
 
中札内中心部から札内川沿いに道道111号線を西進すると札内川ダムに到着します。
国交省直轄ダムらしく、ダム下は『ダム下流公園』として整備されています。
下流から正対
クレスト自由越流頂6門、自然調節式オリフィスは非洪水期ゲート2門、洪水期ゲート1門
ゲートレスダムですがオリフィス部分が凝ったデザインになっており大量生産ダムとは一線を隔しています。
 
オリフィスをズームアップ
上段2門は非洪水期ゲート、下段1門は洪水期ゲートですが、穴が三つでシュミラクラ現象により顔にも見えちゃいます。
一方操作室は円形の前面に窓が配置されこちらはロボットの頭にも見えます。
 
 
右岸から
堤高114メートル、堤頂長300メートルと横長ダムの多い北海道の中では数少ない高さを感じられるダムです。
 
 
上流面。
 
天端から
ダム下はダム下流公園として開放されていますが、最近はクマの出没が増え常にクマ避けの放送が流されています。
右岸ダム下の建屋は放流設備と電源開発札内川発電所。
 
手前は放流設備、奥が札内川発電所。
 
とかちリュウタン湖と命名されたダム湖は総貯水容量5400万立米。
空撮すると竜のように見えることからこの名がつけられました。
上流には日高の名峰カムイエクウチカウシが控えますがダムから見ることはできません。
 
左岸に管理事務所と資料館があり、管理事務所からインクラインが伸びます。
天端は車両通行可能。
 
ダム湖畔に道路がないため上流面はこれが精いっぱい。
 
 
(追記)
札内川ダムには洪水調節容量が配分されていますが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行うための予備放流容量が配分されました。

0173 札内川ダム(1683)
北海道河西郡中札内村南札内
十勝川水系札内川
FNAWP
114メートル
300メートル
54000千㎥/42000千㎥
国土交通省北海道開発局
1998年
◎治水協定が締結されたダム

佐幌ダム(元)

2021-08-17 11:17:34 | 北海道
2021年7月19日 佐幌ダム(元)
 
佐幌ダム(元)は北海道上川郡新得町新内の十勝川水系佐幌川にある北海道建設部が管理する治水目的の重力式コンクリートダムです。
1962年(昭和37年)8月の台風9号による甚大な洪水被害を契機に佐幌川の河川整備が進められ、治水対策をより盤石とするために当地への治水専用ダム建設が決定しました。
佐幌ダム(元)は建設省(現国交省)の補助を受けて建設された補助治水ダムで、佐幌川の洪水調節を目的として1984年(昭和59年)に竣工しました。
また河川維持放流を利用して管理用発電を行っています。
 
2016年の平成28年8月豪雨により佐幌川流域では多大な洪水被害が発生しました。
これを受け2019年(令和元年)に『佐幌ダム再生事業』が採択され、当ダムの再開発が決定しました。
具体的には堤高を2.9メートル嵩上げして49.5メートルとし、総貯水容量は1200万立米(+160万立米)、有効貯水容量は960万立米(+160万立米)とすることで、治水能力の増強を図ることを目的として2032年(令和14年)の竣工を目指しています。
 
ダム下から
クレスト自由越流頂は6門
自由越流頂と自然調節式オリフィスが横に並ぶ珍しい形状です。
 
オリフィスゲートをズームアップ。
ゲート上部に操作建屋を配置した縦長構造。
下には低水放流設備であるジェットフローゲートがあります。
 
上流面。
 
右岸の竣工記念碑。
 
ダムの説明板。
 
天端は車両通行可。
 
クレスト自由越流頂とオリフィスが横並になっているため減勢工も独特の形状
手前の草付きはクレスト自由越流頂の減勢工。
 
ダム下には管理用発電所を挟み二本の洪水吐導流部が伸びます。
右手はクレスト自由越流頂及び河川維持放流を利用した管理用発電所からの放流路
左手はオリフィス及びジェットフローゲートの減勢工。
 
貯水池はサホロ湖で総貯水容量1040万立米。
治水専用ダムですが、堆砂容量240万立米分が貯留されています。
 
左岸から
訪問時、再開発に向けた堤体の強度調査工事が行われていました。

0111 佐幌ダム(元)(1682)
北海道上川郡新得町新内
十勝川水系佐幌川
46.6メートル
255メートル
10400千㎥/8000千㎥
北海道建設部
1984年
------------
3709 佐幌ダム(再)
北海道上川郡新得町新内
十勝川水系佐幌川
49.5メートル
292メートル
12000千㎥/9600千㎥
北海道建設部
2019年~

十勝ダム

2021-08-17 11:04:11 | 北海道
2021年7月19日 十勝ダム 
 
十勝ダムは北海道上川郡新得町屈足の一級河川十勝川本流上流部にある多目的ロックフィルダムです。
十勝川は十勝平野全域に本支流を毛細血管のように張り巡らし農業王国十勝を支える重要河川ですが、洪水被害も多くその治水・利水対策は十勝の長年の悲願でもありました。
1962年(昭和37年)8月の台風9号による甚大な被害を契機に『十勝川水系工事実施基本計画』が採択され当地へのダム建設事業が着手され1984年(昭和59年)に十勝ダムが竣工しました。
十勝ダムは国交省北海道開発局建設部が直轄管理する特定多目的ダムで、十勝川の洪水調節(最大毎秒1450立米の洪水カット)、北海道電力十勝発電所での最大4万キロワットのダム式発電を目的としています。

ダム下は十勝ダムキャンプ場できれいな芝生の広場になっていますが、トイレや水道施設が貧弱でキャンパーの利用はあまりなさそう。
木が伸びて堤体を一望することはできません。
 
左岸ダム下の常用洪水吐からの放流口。
 
右岸の非常用洪水吐はラジアルゲート2門を装備
ここから見上げると堤高84.3メートルの高さを実感できます。
 
 
北海道電力十勝発電所と放流路
最大4万キロワットのダム式水力発電を行います。
 
右岸から下流面
北海道のロックフィルダムはリップラップに芝が張られたものが多いのですが、ここはロック材がむき出し。
 
洪水吐から
バップルピアと背の高いエンドシルを装備
上から3枚目の写真は下流の橋から撮りました。
 
ラッパのように大きく開いた洪水吐の導流堤
奥は十勝発電所の取水塔。
 
堤頂長は443メートルあり、天端は道道718号が通ります。
 
東大雪湖と命名されたダム湖は総貯水容量1億1200万立米
ダム右岸(手前)に十勝発電所の取水塔、左岸(奥)に常用洪水吐の取水塔があります。
 
ロックフィルの断面を模した記念碑。
 
左岸の常用洪水吐とインクライン。
 
(追記)
十勝ダムには洪水調節容量が配分されていますが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行うための予備放流容量が配分されました。

0112 十勝ダム(1681)
北海道上川郡新得町屈足
十勝川水系十勝川
FP
84.3メートル
443メートル
112000千㎥/88000千㎥
国交省北海道開発局
1984年
◎治水協定が締結されたダム

元小屋ダム

2021-08-17 10:54:40 | 北海道
2021年7月19日 元小屋ダム
 
元小屋ダムは北海道河東郡上士幌町黒石平の十勝川水系音更川にある電源開発(株)が管理する発電目的の重力式コンクリートダムです。
1951年(昭和26年)の電気事業再編令により新たに北海道電力が誕生しますが、包蔵電力豊富な北海道の電源開発を同社のみで行うのは不可能で、公営発電である北海道企業局や半官半民の電源開発(株)による電源開発が併せて進められました。
電源開発(株)は十勝川支流の音更川や利別川での電源開発に注力、1956年(昭和31年)に音更川上流部に糠平ダム・発電所(最大出力4万2000キロワット)を完成させます。
そして4年後の1960年(昭和35年)に糠平ダム下流5キロ地点に建設されたのが元小屋ダムです。
元小屋ダムは糠平発電所の出力調整に伴う水位変動を緩和するための逆調整池に加え、ここで取水された十勝川水系美里別川にある芽登第1・第2発電所に導水され計5万5500キロワットのダム水力発電に供されます。
元小屋ダムの完成により糠平ダムの2億立米弱の巨大な貯水池のより効率的運用が可能となりました。
 
残念ながら元小屋ダムは一般開放されておらず、その姿を目にすることはできません。
国道273号線沿いの元小屋ダムへの管理道路入り口に立つダムの看板。
 
元小屋へ通じる道路の厳重なゲート。
 
(追記)
元小屋ダムは洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行う予備放流容量が配分されました。

0056 元小屋ダム
北海道河東郡上士幌町黒石平
十勝川水系音更川
32メートル
86メートル
2610千㎥/798千㎥
電源開発(株)
1960年
◎治水協定が締結されたダム