ダムの訪問記

全国のダムと溜池の訪問記です。
主としてダムや溜池の由来や建設の経緯、目的について記述しています。

松尾川ダム

2022-04-07 08:00:00 | 徳島県
2022年3月28日 松尾川ダム 
 
松尾川ダムは左岸が徳島県三好市西祖谷山村坂瀬、右岸が同村小祖谷の吉野川水系松尾川源流部にある四国電力(株)が管理する発電目的の重力式コンクリートダムです。
1951年(昭和26年)の電気事業再編令で誕生した四国電力は戦後の電力不足に対応するため各所で新たな電源開発を進めます。
1953年(昭和28年)に完成した松尾川ダムもそんな発電施設の一つで、ここで取水された水は松尾川第一ダム(最大出力2万800キロワット)及び松尾川第二ダム(最大出力2万1400キロワット)に送られダム水路式発電に供されます。
当ダム集水面積103平方キロのうち自己流域は26平方キロにとどまり、その大半は祖谷川からの導水に依っており、取水ダムと言うよりは調整池と呼ぶ方が妥当です。
また1961年(昭和36年)に集水の大半を占める祖谷川取水堰直上に名頃ダムが完成したことで取水量の季節変動が平準化され松尾川発電所の発電効率が大きく向上しました。
 
今回は三繩ダムから松尾川沿いの県道139号線を使って松尾川ダムに至りましたが、県道とは名ばかりの酷道で至る所に落石、木の枝が散乱し22キロの距離を移動するのに1時間以上かかってしまいました。
下流からダムとすっきり正対できる場所はなく、下流面が撮れるのはこのアングルだけ。
余計な構造物を排したシンプルな造形。
クレストにはラジアルゲートを2門装備しています。


ダムサイトの水利使用標識。


上流面
堤頂長は195メートルで対岸に祖谷川からの導水路流入口があります。


円筒形の取水口。


取水ゲート。

 
関電か?と思わせる黒いゲート
昭和20年代のダムらしくゲート部分が高くなっています。


天端はフェンスのドアで閉じられていますが施錠されていません。
連絡先に確認したら立ち入り可能
見た目、堤体や導流壁のコンクリは何となく粗い作りのような気が?
後付けの河川維持放流用パイプが伸びています。


ダム湖は総貯水容量1430万立米
山は低く、源流感の強い眺め。


祖谷川はじめ支川からの導水路流入口
ダムの集水の7割超がこの導水路に依ります。


天端から
右手は管理事務所、左手はかつて職員が常駐していた時代の宿舎。


導水路流入口を直上から
発電所の使用水量から推察すると毎秒4立米以上の水が流れ込んでいると思われます。

 
帰路はダム東方を走る県道44号線を使いましたが、こちらの方が断然道がいい。
四国電力の巡回もこちらを使っているようで…

(追記)
松尾川ダムは洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行う予備放流容量が配分されました。

2121 松尾川ダム(1787)
左岸 徳島県三好市西祖谷山村坂瀬
右岸          同村小祖谷
吉野川水系松尾川
67メートル
195メートル
14300千㎥/12600千㎥
四国電力(株)
1953年
◎治水協定が締結されたダム