ダムの訪問記

全国のダムと溜池の訪問記です。
主としてダムや溜池の由来や建設の経緯、目的について記述しています。

花の山池

2022-04-10 13:00:00 | 香川県
2017年12月22日 花の山池
2022年 3月29日
 
花の山池は香川県さぬき市寒川町石田西の鴨部川水系地蔵川右支流(河川名未確認)にある灌漑目的のアースフィルダムです。
旧寒川町の地蔵川流域は丘陵地帯のため畑作が中心でしたが、稲作農家に比べて収入が乏しく水田への転換が悲願となっていました。
そこで流域農家は溜池築造のために石田西耕地整理組合を結成し、1915年(大正4年)に地蔵川右支流を締め切り花の山池が完成しました。
しかしこの支流だけでは十分な集水ができないため、池築造に合わせて地蔵川からの水路トンネルも建設し地蔵川からから集水を行っています。
ダム便覧の竣工年度は1979年(昭和54年)になっていますが、これは県の事業による大規模改修の竣工年度かと思われます。
現在は花の山池水利組合が管理を行い、約26ヘクタールの農地に灌漑用水を供給しています。
 
2017年(平成29年)12月訪問時は県営の耐震補強工事が行われていたため満足な見学ができず、2022年(令和4年)3月に再訪しました。
日時の記載のない写真はすべて再訪時のものです。

堤体を道路が斜行して登ります。


右岸の石碑
摩耗が激しく判読不能。


耐震補強工事で刷新された斜樋。


天端から
底樋管の先に分水ゲートがあります。


底樋管。(2017年12月22日)
 
底樋管の先の分水ゲート
灌漑期のみゲートを下ろし、左手の用水路に水を送ります。
(2017年12月22日)
 
総貯水容量20万立米の貯水池
水の大半は地蔵川からの導水に依ります。


上流面はコンクリートで護岸。


下流面。


左岸の横越流式洪水吐。


逆アングルから。


こちらは改修工事中の写真
堤体には手を着けず、池底の強化や取水設備、底樋の改修が行われています。
(2017年12月22日)
 
手前が従来の斜樋。奥に新しい斜樋が設置されています。
(2017年12月22日)
 
2152 花の山池(1216)
ため池コード372060090 
香川県さぬき市寒川町石田西
鴨部川水系地蔵川右支流
21.5メートル(ため池データベース 19.2メートル)
75メートル
200千㎥/200千㎥
花の山池水利組合
1915年築造
1979年(ダム便覧)

椛川ダム

2022-04-10 00:00:00 | 香川県
2017年12月21日 椛川ダム
2022年 3月29日

椛川(かばかわ)ダムは香川県高松市塩江町安原上東の香東川水系椛川上流部にある香川県土木部が管理する多目的重力式コンクリートダムです。
香東川水系では1952年(昭和27年)に内場ダムが建設されますが、その後も台風による二度の洪水が発生、一方香川用水の補給開始後も1994年(平成6年)の平成大渇水の際には高松市で一ヶ月にわたる給水制限が行われるなどさらなる治水・利水対策が迫られました。
1994年の渇水を受け香川県は内場ダム東方約3キロの香東川左支流糀川への多目的ダム建設事業を採択しますがバブル崩壊以降の経済・社会情勢も変化もあり国交省による検討対象ダムとなります。
その後県による全体計画変更が行われ2012年(平成24年)に事業継続が決定、2014年(平成26年)に本体工事が着手され2021年(令和3年)に椛川ダムは竣工しました。
少雨地帯のため試験湛水に時間を要し運用開始は2023年(令和5年)頃の予定ですが、運用開始のあかつきには内場ダムと連携した香東川の洪水調節、安定した河川流量の維持と不特定灌漑用水への補給、渇水時の緊急補給、高松市への上水道用水の供給を目的とする予定です。
注目すべきは全国でも3例目となる渇水対策容量が確保された点でしょう。

椛川ダムには2017年(平成29年)のダム建設中に訪問、試験湛水中の2022年(令和4年)3月に再訪しました。
ダム下から
堤高88.5メートルは香川県のダム最高。
クレスト自由越流頂4門、自然調節式オリフィス1門のほか利水放流設備を備えています。
減勢工にはエンドシルが2基あり1基目の下流面はカスケードになっています。
最終的にはダム下に園地が整備される予定ですが今はまだ立入禁止。


右岸から俯瞰
天端道路は開放されています。

上流面
洪水吐は堤体の左岸に偏っています。


取水設備は直線多段式ゲートを採用
通常時と異常渇水時では取水量が異なるため上下で幅が異なる2列のゲート配置
また試験湛水中のためオリフィスには止水ゲートが嵌め込まれています。




右岸から下流面
右岸フーチング階段は運用開始後に遊歩道として開放される予定。


天端から見下ろす減勢工
1枚目の写真は写真上部の橋から撮ったものです。
堤体導流壁が細い。


オリフィスに嵌め込まれた止水ゲート
試験湛水中のみ見られる眺め。

左岸から減勢工。


左岸から下流面
左岸側で堤体がわずかに屈曲しています。


左岸の山留にはずいぶん苦労したようで、アンカーがブロッコリー畑のように並んでいます。
対岸高台に管理事務所があります。


上流から
ここから見ても右岸側の山留の苦労のほどが推察できます。
総貯水容量1056万立米も香川県土木部所管ダムとしては最大。


ここから先は2017年訪問時のものです。
堤体のコンクリート打設3か月目。
 
堤体上流にあるコンクリート製造装置及び骨材貯蔵設備。

3238 椛川ダム(1204)
香川県高松市塩江町安原上東
香東川水系椛川
FNW
88.5メートル
265.5メートル
10560千㎥/10290千㎥
香川県土木部
2021年