ダムの訪問記

全国のダムと溜池の訪問記です。
主としてダムや溜池の由来や建設の経緯、目的について記述しています。

小山ヶ沢溜池

2023-10-05 17:00:01 | 山形県
2016年9月 3日 小山ヶ沢溜池
2023年7月26日
 
小山ヶ沢溜池は山形県北村山郡大石田町田沢の一級河川最上川水系田沢川にある灌漑目的のアースフィルダムです。
大石田町の最上川左岸地域では河岸段丘上に開拓可能な広大な平坦地が広がりますが、揚水技術のない時代は支流の小河川や小規模溜池を水源にせざるを得ず、慢性的な用水不足に悩まされてきました。
旧横山村も例にもれず、溜池記念碑によれば昭和17年~18年の干ばつを契機に農業用貯水池築造機運が高まり、1944年(昭和19年)に村営事業として小山ヶ沢溜池建設が着手され1951年(昭和26年)に竣工しました。
その後1992年(平成4年)に県営ため池等整備事業による大規模改修が着手され2000年(平成12年)に竣工、ダム便覧ではこれを竣工年度としています。
当初の管理は横山土地改良区が、その後の土地改良区の統合により現在は富並川伊蔵堰土地改良区が管理を引き継ぎ、約60ヘクタールの水田に灌漑用水を供給しています。
小山ヶ沢溜池には2016年(平成28年)9月に初訪、2023年(令和5年)7月に再訪しました。
掲載写真にはそれぞれ撮影日時を記載しています。
(2023年7月26日)
 
下流から
堤高17.5メートル、堤頂長157.3メートルの横長堤体。
溜池のすぐ下に社があります。
(2023年7月26日)

 
赤い鳥居とセットで。
(2016年9月3日)

 
左岸から下流面
奇麗に草が刈られ、今も貴重な水源であることが伺えます。
(2023年7月26日) 

 
池下の底樋桝。
2000年(平成12年)の改修で設けられました。
(2023年7月26日) 

 
天端は車両の通行可能で、道はそのまま林道として奥に伸びてゆきます。
(2023年7月26日) 

 
池には2基の石碑がありこちらは1951年(昭和26年)の竣工碑。
旱魃被害から池築造に至る経緯が記されています。
(2023年7月26日) 

 
こちらは2000年(平成12年)の県営ため池等整備事業の竣工記念碑。
裏には池の諸元等が刻されています。
池の型式は『前刃金型』つまり傾斜コア型フィルダムになります。
(2023年7月26日) 

 
左岸の横越流式洪水吐。
(2023年7月26日) 

 
洪水吐導流部は傾斜が緩く長く伸び、このまま田沢川として約5キロ下流で最上川に合流します。
(2023年7月26日) 


天端から下流の眺め
ここからは受益農地は見えません。
改修工事で残土が盛られたようで、池の下流側はもっこりとしています。
(2023年7月26日) 


総貯水容量32万5000立米の貯水池。
約60ヘクタールの水田に灌漑用水を供給します。
(2023年7月26日) 

 
右岸の斜樋。
斜樋の周りは布製型枠で護岸。
(2016年9月3日)

 
右岸から下流面。
(2023年7月26日) 

 
上流面はコンクリートブロックで護岸。
(2023年7月26日) 

 
斜樋のシャフトは2本。
(2023年7月26日) 

 
0417 小山ヶ沢溜池(0530)
ため池コード
山形県北村山郡大石田町田沢
最上川水系田沢川
17.5メートル
157.3メートル
325千㎥/325千㎥
富並川伊蔵堰土地改良区
1951年竣工
2000年ため池等整備事業竣工

一の沢ダム

2023-10-04 17:00:17 | 山形県
2016年7月10日 一の沢ダム
2023年7月25日
 
一の沢ダムは山形県東根市東根の最上川水系日塔川にある灌漑目的のロックフィルダムです。
現地竣工記念碑には『東根土地改良区338ヘクタールの水田を旱魃から守るための補給用水源として山形県営一の澤用水改良事業により1965年(昭和40年)に完成』と刻され名称は『一の澤溜池』となっています。
一方ダム便覧の竣工年度は1998年(平成10年)ですが、これは県営の老朽化ため池等整備事業の竣工年度で、これにより堤体はロックフィルとなり併せて取水設備や洪水吐なども大きく刷新され、名称も一の澤溜池から一の沢ダムに変更されました。
当初の管理者は東根土地改良区でしたが、その後の土地改良区合併により現在は村山東根土地改良区が管理を引き継いでいます。
一の沢ダムには2016年(平成28年)7月に初訪、その後取水設備や底樋の改修が終わったとの情報を得て、て2023年(令和5年)7月に再訪しました。
掲載写真にはそれぞれ撮影日時を記載しています。

東根市中心部から日塔川に沿って市道を東進、最終集落を抜けるとダートになりますが構わず進むと一の沢ダムに到着します。 
ダム便覧には下流からダム全体を写した写真が掲載されていますが、今は草が茂り洪水吐や放流設備を切り取るだけ。
1998年(平成10年)の改修工事で建設された洪水吐斜水路と底樋門が並びます。
訪問直前の梅雨前線による大雨で水位が上昇し洪水吐からは越流しています。
(2023年7月25日)


道路は堤体下流面を斜行して登り、中段には竣工記念碑が建ちます。
(2023年7月25日)

 
一の澤溜池完成の翌年、1966年(昭和41年)に建立され、池建設の仔細が刻されています。
(2023年7月25日)

 
洪水吐斜水路と減勢工を見下ろす。
これらの設備は1998年(平成10年)の改修によるものです。
(2023年7月25日)

 
下流から。
(2023年7月25日)

 
初回訪問時の横越流式洪水吐
奥に取水塔が見えます。
実はこの時点ですでにこの取水塔は廃止され左岸に斜樋が新設されていました。
(2016年7月10日)

再訪時、ほぼ同じアングルで
取水塔が撤去されています。
(2023年7月25日)

 
上流からの洪水吐。
5枚目写真はこの隧道出口から撮ったものです。
(2023年7月25日)

 
左岸の斜樋
もともと既設の取水塔の老朽化を受けて左岸に設けられ、2021年(令和3年)の改修で刷新されました。
(2023年7月25日)

洪水吐手前の円形の張り出しが特徴的。
(2016年7月10日)


総貯水容量32万立米の貯水池。
(2023年7月25日)


初回訪問時、新旧取水設備並び建ち。
取水塔はフローティング式表面取水型。
どうやらこれが壊れたため急遽斜樋が設置されたようで、当時の斜樋はいかにも急ぎ仕事で設置されたといった風。
(2016年7月10日)

2021年(令和3年)の改修で刷新された斜樋。
(2023年7月25日)

天端は広いコンクリート。
灌漑用のフィルダムで天端がコンクリート舗装は珍しい。
(2023年7月25日)

 
上流面。
(2023年7月25日)


0431 一の沢ダム(0474)
ため池コード
山形県東根市東根
最上川水系日塔川
26.5メートル
128メートル
320千㎥/320千㎥
村山東根土地改良区
1965年 一の澤溜池竣工
1998年 一の沢ダム竣工(老朽化ため池等整備事業)

三又ダム

2023-10-02 17:00:30 | 山形県
2016年9月 4日 三又ダム
2023年7月25日
 
三又ダムは山形県鶴岡市羽黒町川代の一級河川最上川水系京田川にある灌漑目的のアースフィルダムです。
月山北麓の標高100~400メートル地帯は開拓可能な緩やかな丘陵地が続きますが水利に乏しく、戦前はその大半は牧草地として活用されるほかは零細な農業経営に留まっていました。
1968年(昭和43年)に月山山麓の新規農地造成および灌漑設備の整備を目的とした農林省(現農水省)による国営月山山麓開拓建設事業が着手され、その灌漑用水源として1977年(昭和52年)に竣工したのが三又ダムです。
国営事業全体も同年完了し、ダムの管理は羽黒町(現在は市町村合併により鶴岡市)が受託し新規開発された約650ヘクタールの農地に灌漑用水を供給しています。
開発された農地ではタバコや野菜生産のほか、柿やブルーベリーなど園芸農業も盛んにおこなわ、特に柿は『庄内柿』として全国的なブランド力を誇る特産品となっています。
三又ダムには2016年(平成28年)9月に初訪、2023年(令和5年)7月に再訪しました。
掲載写真にはそれぞれ撮影日時を記載しています。

羽黒から水芭蕉の丘広域農道を南下、月山ハーモニーパークを目指すと三又ダムに到着します。
すぐ下流の橋から三又ダムを見下ろすことができます。
初訪時は地質調査中。
(2016年9月4日)

 
同じアングルで再訪時
美しいアース堤体と長い洪水吐斜水路が特徴です。
直前の梅雨前線による大雨で水位が上昇し洪水吐から越流しています。
(2023年7月25日)

 
洪水吐をズームアップ
左奥に斜樋が見えます。
(2023年7月25日)

 
アングルを変えて
減勢工の下で川は直角に折れます。
(2023年7月25日)

 
写真右下が底樋管からの水路
ダムで放流された水は下流の水吞沢頭首工で取水され受益農地に供給されます。
(2023年7月25日)


天端入り口にはロープが張られ立ち入りは微妙
巡回に来た職員さんの許可を得て立ち入りました。
(2023年7月25日)

 
左岸の横越流式洪水吐。
満水で越流しています。
(2023年7月25日)

 
洪水吐導流部
この下で長い斜水路に続きます。
1~3枚目写真は前方の橋から撮りました。
(2023年7月25日)

 
下流面
堤体はきれいに刈り込まれ芝生のようです。
(2023年7月25日)


総貯水容量14万2000立米の貯水池
対岸に斜樋が伸びます。
(2023年7月25日)

 
ダムサイトに建つ事業説明板。
(2023年7月25日)

 
水神の石碑。
(2023年7月25日)

 
左岸から俯瞰。
(2023年7月25日)

左岸の斜樋。
(2016年9月4日)


美しいアース堤体と長く伸びる特徴的な洪水吐
個人的には東北で一番美しいアースフィルダムという称号を贈りたいと思います。

(追記)
三又ダムは洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行う予備放流容量が配分されました。
 
3348 三又ダム(0540)
山形県鶴岡市羽黒町川代
最上川水系京田川
24メートル
97メートル
142千㎥/93千㎥
鶴岡市
1977年
◎治水協定が締結されたダム