4番は(1)の不等式の評価がすべて。
(1)「0<f(x)<1を示すためにf'(x)を調べ、0<x<1においてf(x)の増減からf(x)の最小値が0より大きく、最大値が1より小さい」ことを示そうとすると、ドツボにはまります。
ここは、冷静に不等式の評価を条件式から行うことを実行することです。
(2)nに関する命題の証明は、「数学的帰納法ですよね。」
「挟みうちの原理」以外、何があるでしょうか?
(3)(1),(2)を踏まえて、0<x<1内でf(c)=cとなる∃cが存在することを示すのです。
「F(x)=f(x)-xとして、0<x<1において、F(0)=0,F(1)<0,F''(x)<0」を示します。
これによりF(x)は上に凸となり、グラフより0<x<1内でF(c)=0となるcの存在が示せ、f(c)=cが示せます。
以上。
これでも嘗てのハードな2010年の理系数学の難しさに及びません。東大入試ではやっと標準といえます。
続く5番は後回しにします。(失礼)
最後の6番に行きます。
典型的な東大数学の問題です。これは出来ねばなりません。設定も分かり易い問題です。直線PQの存在条件を数式化することがポイントです。要は、(2)が目的です。
図示する場合は、「境界線を表す式を明示すること」を忘れないことです。
これも、東大入試における典型問題といえます。標準よりやや易しいレベルです。
5番を除き、これまでのところを整理すると、
1番、易問 2番、易問 3番、標準よりやや易 4番、標準 6番、標準よりやや易
となります。
例年の東京出版の月刊誌「大学への数学」によるも問題レベルに沿って評価をすると。
1番、A 2番、A 3番、B 4番、C 6番、B となります。
まだ講評しておりません5番はCレベルですので、A問題2題、B問題2題、C問題2題の構成となります。
例年より易しい問題が多いので、理一理二レベルでも「完答2+α=4題相当」が合格に必要なレベルとなり、正解率67%を必要とします。(例年は50%前後であることを考えると今年は得点率がかなりアップしそうです。)
では、理三合格レベルはどの程度でしょうか。これまでのところの問題をほぼ取りこぼさず、5題完答+5番の出来次第と、かなりのハイレベルでの争いになりそうです。逆に言えば、理三では数学でほとんど差がつかず、他教科(理科)の出来・不出来で合否が左右されるでしょう。難しめの問題でハイスコアをたたき出せ人が、合格に達したことでしょう。ズバリ、今年の理三の合格者は数学5題完答が必要となります。(例年より+1題必要です。)
そこから見えてきますのは、理三の合格者比率の大きな変動です。
トップ校の灘、開成、筑波大附属駒場、は合格者を減らすでしょう。代わりに、地方の私立、公立の有力校が席を獲得するケースが考えられます。比較的易しめの問題で、高得点をたたき出せる、地方の有力校からの合格者が増加するのでないでしょうか。参考になるのが、慶應義塾大学医学部の合格者数と東大理三のそれとの比較です。慶應医学部は比較的標準的な問題を出題しますが、正解率が高く、合格者の平均点が高いところに特徴があります。
また、そのようになる背景として、文部科学省が推進してきた、SSH(スーパー・サイエンス・ハイスクール)事業の成果が徐々に出つつあることです。ここ愛知県でもSSH校の指定を受けている学校は9校あります。8校が国公立高校(名古屋大学附属高校、岡崎高校、明和高校、一宮高校、刈谷高校、豊田西高校、時習館高校、半田高校)私立は名城大学附属高校の1校のみです。特に、岡崎高校はSSH研究拠点校の指定をうけています。近年、地方公立高校の大学進学実績の急伸の背景には、このSSHが背景になっていると思われます。
「SSH事業と大学進学実績との相関」は面白いテーマです。
私立学校でもSSHを検討する時期にあると思うのは私だけでしょか。
なにせ、SSHの指定校になれば、国からの補助が年額2,000万円から3,000万円得られるのですから、導入しない手はないと思うのですが。特に理科の実験設備等の整備にはもってこいではないでしょうか。
話が、横道にそれました。
今年に限って言えば、
1.「東大理科三類と慶應義塾大学医学部の合格者分布は酷似する。」
2.「例年のトップ常連校は理科三類の合格者数を減らし、地方有力校が合格者の席を獲得する。」
ことが予想されます。
東大入試の合格発表が待たれます。
2010年ハードな理系数学問題に対して、教え子が果敢に挑戦し115点(120満点中)たたき出したという、伝説のマリオ先生による2014年度大学入試東大理系数学の講評でした。