山本巧次は鉄道好きのようで、題名に鉄道がらみな作品が多く見受けられる。この「早房希美の謎解き急行」も架空の大手私鉄・武州急行電鉄に勤める、早房希美の話だ。
話は営業企画課に持ち込まれたり、通勤の途中で巻き込まれた事件を解決していく連作短編推理小説となっている。
収録作品:
遮断機のくぐり抜けは大変危険です / 雨の日は御足元に充分ご注意ください / 危険物の持ち込みはお断りしております / 痴漢は犯罪です / 特急のご乗車には特急券が必要です
この中で面白かったのは「痴漢は犯罪です」だろうか。痴漢で検挙された男が、なぜカニやついていたのが気になって、やがて思いもよらない事件へと発展していく話なのだが、一番推理小説らしい印象を受けた。
「八丁堀のおゆう」がほとんど力業であるのに対して、こちらの方がミステリーの要素が強く感じた。残念ながら、シリーズ化はしていないようだが、2020年刊行なので今後シリーズ化していくかもしれない。
当分この作者で楽しめそうだ。