演劇書き込み寺

「貧乏な地方劇団のための演劇講座」とか「高橋くんの照明覚書」など、過去に書いたものと雑記を載せてます。

早房希美の謎解き急行

2022年05月14日 07時49分03秒 | 読書

山本巧次は鉄道好きのようで、題名に鉄道がらみな作品が多く見受けられる。この「早房希美の謎解き急行」も架空の大手私鉄・武州急行電鉄に勤める、早房希美の話だ。
話は営業企画課に持ち込まれたり、通勤の途中で巻き込まれた事件を解決していく連作短編推理小説となっている。
収録作品:
遮断機のくぐり抜けは大変危険です / 雨の日は御足元に充分ご注意ください / 危険物の持ち込みはお断りしております / 痴漢は犯罪です / 特急のご乗車には特急券が必要です

この中で面白かったのは「痴漢は犯罪です」だろうか。痴漢で検挙された男が、なぜカニやついていたのが気になって、やがて思いもよらない事件へと発展していく話なのだが、一番推理小説らしい印象を受けた。
「八丁堀のおゆう」がほとんど力業であるのに対して、こちらの方がミステリーの要素が強く感じた。残念ながら、シリーズ化はしていないようだが、2020年刊行なので今後シリーズ化していくかもしれない。
当分この作者で楽しめそうだ。

 


大江戸科学捜査 八丁堀のおゆう

2022年05月13日 08時10分46秒 | 読書

山本巧次のタイムトラベル小説。現在8巻まで刊行されていて、今回読んだのは太字で示した以下の5冊だ。1巻はだいぶ前に読んだし、「千両富くじ根津の夢」も過去に読んだような気がするが、ほとんど忘れていたので楽しめた。
大江戸科学捜査 八丁堀のおゆう(2015年8月 宝島社文庫)
大江戸科学捜査 八丁堀のおゆう 両国橋の御落胤(2016年5月 宝島社文庫)
大江戸科学捜査 八丁堀のおゆう 千両富くじ根津の夢(2016年12月 宝島社文庫)
大江戸科学捜査 八丁堀のおゆう 北斎に聞いてみろ(2017年10月 宝島社文庫)
大江戸科学捜査 八丁堀のおゆう ドローン江戸を翔ぶ(2018年10月 宝島社文庫)
大江戸科学捜査 八丁堀のおゆう 北からの黒船(2019年11月 宝島社文庫)
大江戸科学捜査 八丁堀のおゆう 妖刀は怪盗を招く(2020年10月 宝島社文庫)
大江戸科学捜査 八丁堀のおゆう ステイホームは江戸で(2021年11月 宝島社文庫)

パターン的にはいつも同じような、江戸時代ではできない科学捜査を現代と往復することで解決していくというものだが、どんでん返しが2~3回ある筋立てなので楽しめる。推理そのものは、証拠があまり読者には示されないハンデキャップがあるものなので、推理小説と呼ぶにはどうかなと思うが、捕物としては気楽に楽しめる。
年々調子が上がっているのか「北からの黒船」「妖刀は怪盗を招く」は特に面白く読めた。
残り2冊も楽しみだ。


あなたへ

2022年04月27日 12時43分31秒 | 読書

高倉健の最後の映画「あなたへ」を小説化したものだ。
小説を読んで、知りたかった「なぜ、妻は刑務所の慰問をするようになったのか」は結局分からなかった。
南原慎一がなぜ平戸の漁港の漁師を知っているのかは、小説を読んでよく分かった。
ストーリーは映画で観て分かっているのだが、わき役の描き方が細かく、特にビートたけしが演じていた杉野の過去や主人公の倉島英二とのかかわりなどは小説版の方が書き込まれていて分かりやすい。

しかしまだよく分からないところがあり、もう一度、映画を観たくなった。


ライオンのおやつ

2022年04月26日 10時00分15秒 | 読書

小川糸の小説である。
33歳で癌で余命一年と宣告された女性が「ライオンの家」というホスピスで亡くなるまでと、亡くなってのちの3日間を描いている。
作者の母親が癌になって、「死ぬのが怖い」と会話したことが、書くきっかけとなったと糸通信に書かれている。作者の母親は強権的でしばしば作者とぶつかってきたらしい。ただ、亡くなる直前から変化があったようだ。糸通信には次のように書かれている。

「母に余命が宣告されたことで、わたしの、母に対する立ち位置が変わった。
今まで見ていた方向から反対側に移動して母を見ると、そこには、わたしが全く気づかなかった母の姿があった。
認知症が出始めた母を、わたしは初めて、愛おしいと感じた。
そして、自分が母を本当は好きだったこと、母もわたしを、母なりの愛情を持って接してくれていたことに気づいた。

母が亡くなったことで、わたしはようやく、それまでずっと繋がっていたへその緒が切れたように感じ、そして母が新たに、わたしの胎内に宿ったような気がした。
母が生きている頃より、亡くなってからの方が、ずっと母を身近に感じる。」


強権的な母親という点ではうちの母親も似たようなものだったのかもしれない。ただ、母親は父親とぶつかるほうが多くて、こっちはなるべくかかわりになりたくなかったので、子供のころからあまり家にいないことが多かった。
昨年の7月に亡くなったのだが、身近に感じることもなく、仏壇にもあまり手を合わせない。認知症になり世話が大変で、文句ばかり言っていた妻のほうが、仏壇の世話もかいがいしくしている。
だから、この物語も頭では理解できるけれども、感情としてはどこか冷めた読み方をしているのかもしれない。人間として、どうかなとも思うがそれも頭の中でのことなのだ。


理想のヒモ生活

2022年04月15日 04時24分34秒 | 読書

今のところ14巻まで出ている。コミック版は12巻まで出ているらしい。
WEBの「小説家になろう」に連載されていたのだが、こちらは途中で更新されなくなっており、出版されている版は、途中からWEB版とは話が変わってきている。
異世界から召喚された主人公が、何もしなくていいから子種だけ提供してほしい、と言われ女王の婿になるのだが、いつの間にか活躍しているというお話で、普通の異世界物とはやや異なっている。
物語のテンポはゆっくりしているのだが、登場人物が個性的なこともあって、楽しく読める。
ただ、11巻が元の出版社で重版をしていないらしく、中古でもなかなか売っていなくて、ネットの中古通販を探してやっと見つけた。「あいだにはたち」でも思ったが、電子書籍があるからか、今時はすぐに品切れさせるようだ。


マリアビートル

2022年03月31日 08時42分21秒 | 読書

ハリウッド映画「ブレッド・トレイン」の原作だ。
東北新幹線に、乗っている乗客が殺し屋だらけで、お互い殺しあうという荒唐無稽な話なのだが、登場人物たちが妙な理屈を言うところが面白く、めちゃくちゃな筋立てもハリウッド映画にしたら、似合うかもしれない。

一番気に入ったのが次のセリフだ。
「小説の中で体言止めを多用する作家と、会話の中に『にもかかわらず』って言葉を使うような相手は信用するな、ってな」


これって、自分に当てはまる、って思ってしまった。

面白かったけれど、読むのに手間がかかった小説だった。


この国を壊す者へ

2022年03月23日 07時12分30秒 | 読書

佐藤優がアサヒ芸能に連載していた、「日本有事!」の2010年~2011年8月までをまとめたもので、11年たった今から見ると、民主党の凋落の原因が随所に書かれている。
また、最高裁判所の判事は司法試験に合格していなくてもなれるとか、検察官は一般の公務員の規則が適用されないとか、知らなかったことがママ出てきて面白かった。
頻繁に登場する鈴木宗男については、大変好意的な書き方で一貫している。巻き込まれて、刑に服したのだから当然だろうけれど。
今のロシア情勢を10年後に読みなおしたら、どういう書き方がされていたのか、結果どうなったのか、読むのが怖くもあり楽しみでもある。
地上から人類がいなくなって、読むこともできない、という未来だけはあってほしくないものだが。


神去なあなあ夜話

2022年03月22日 12時23分50秒 | 読書
神去なあなあ夜話は三浦しおんの2012年の作品。
映画で前作の「神去なあなあ日常」部分をみているし、もしかして読んでいる気もするので続編を読んでみた。
主人公が自然豊かな村で林業技師として成長して郁さまが描かれていて読んでいて楽しい。
恋愛に関してはやや奥手な感じがするものの、最後にはうまく憧れの真紀さんとうまくやったようだ。
続編を読みたかったが検索したところ出ていない。残念。

七ツ屋志のぶの宝石匣

2022年03月21日 11時30分32秒 | 読書

早いもので、気が付けばもう16巻だ。
あらすじはウィキベテアから。

 

あらすじ

東京・銀座9丁目商店街。江戸時代から続く老舗の質屋・倉田屋の高校2年生の娘・志のぶは、宝石の「気」を感じる不思議な力を持っている。宝石から地球の雄大さを感じ、真贋を見抜くその天賦の才能を活かして、店でも宝石限定で鑑定を任されている。そんな志のぶには婚約者がいる。

歴史に名を残す名家の跡取りとして生まれた北上顕定は、家の没落・一家離散により、幼少期に倉田屋に質入れされる。当然のことながら、人間の質入れなど受け付けていないが、通常3か月の質草預かり期限を3年とし、それが守られなかった場合は店主の孫娘と婚約させるという契約が成立する。顕定はそのまま倉田家で育ち、質屋の仕事を学びながら鑑定眼を養う。北上家から離散した宝物類の行方を探すため、高級ジュエリー店の外商として、各界のセレブたちとの繋がりを得ていく。

今回は目立った進展はなかったが、志のぶと顕定の距離が近くなって、イライラしている志のぶの話がメインだ。

人物の設定がうまいのと会話が自然で読んでいて違和感がない。読み終わると、次の巻が待ち遠しくなってくる。