夏草と蛇・・隠れ句!
令和3年7月23日(金)
夏艸に
富貴を餝れ
蛇の衣
茂みに見える蛇の抜け殻で、
夏草を豪華に飾るがよい、
の意。
元禄三年(1690)の作。
4月16日付けの書簡に見える句で、
不満ゆえ他に漏らさないよう釘を
刺している。
幻住庵に入った直後、草庵で
蛇の抜け殻を見ての吟らしく、
殺風景ゆえこれを飾りに見立てよう
という意とも、夏草や蛇に対する
憎らしさを皮肉調で言ったものとも
解されるけど、
確かに一句としての完成度に問題がある。
◎ 蛇の脱ぎ捨てた皮がびっしりと
地面を覆った夏草の上にのっている。
たぶん、木の枝から落ちたものであろう。
夏草もこのようにびっしりと生えて
他の植物を寄せ付けないないという
傲慢で嫌味である。
それも美しくもない蛇の抜け殻を
のせるとなると、装飾過剰で、
ちっとも美しくない。
この句は、元禄三年に友人酒堂への
手紙にあった隠し句である。
よほどムシャクシャしていたと
思える芭蕉の即興句である。
芭蕉は俳句としての出来栄えを
気にしている。
夏草とへびとも呪いながらも俳句の
出来栄えが気になるのだ。
同じ手紙にもう一句入れて、
優劣など隠し句であるのだから
どうでもいいようだが、そうはいかず、
もう一句とも同封して優劣を競わせ
ている。
近郷近在、夏草が覆い被さっていく
そのすさまじさは、息をのむ。
傲然とした感じも否めない。