貢蕉の瞑想

青梅庵に住む貢蕉の日々のつぶやきです。

崩れて明し 死の直前の句

2021-07-28 11:02:31 | 日記

崩れて明し 死の直前の句

令和3年7月28日(水)

 夜のテレビ観賞は久しぶり。

 野球大好き少年・壮年のわんも

テレビ鑑賞はすっかり影を潜めたが、

昨夜のソフトボールの決勝戦はついつい

血が騒いだ。

 熱戦とチーム一丸の強さで強敵を破る。

 輝くアスリートに祝福と慰労を込める。

 夏の夜の一服!

夏の夜や

  崩れて明し 

     冷し物

   夏の夜は早くも明け、もてなしの

冷やし物も崩れた姿を見せている、

の意。

 元禄七年(1694)の作。

 前書き「今宵(こよいの)賦(ふ) 

野(や)盤(ばん)子(し)支考」

  「今宵(こよいの)賦(ふ)」・・・6月

16日膳所の曲翠(曲水)亭で、

催された連句会の様子を、

後に支考が書いた文章。

 一期一会であること等が記される。

「冷し物」・・・果実・野菜・麺類などを

冷やして盛った料理。

◎ 夏の夜の句会で、

この次何時会えるものかと心許なく、

酒を交わしているうちに時が過ぎ、

話にも疲れてきた。

 短い夏の夜もいつかは明けて来る

頃合いになってきた。

 見れば、特別に作った冷やし物の形が

崩れてきた。

 物事の終わりに近いときには、

人としての親しさもご馳走も何もかも

崩れてくる。

 無論人生もそうであろう。

 この侘しい気持ちが夏の朝にはある。

 付き合いもご馳走も、これで来年までは

お別れだと思うと、寂しくてならない。

 見返せば、なべて人生は、

特に年を取ってきた夏の季節は

その感が強い。

 では、皆さん、これでそろそろお別れ

ですな。

 崩れて開けし冷やし物、とは寂しい表現だ。

 ここには、威勢のいい夏が終わり、

秋の衰えが来て、冬の詩が近づく予感

までが一句に詠み込まれている。

 夏を詠んで冬を予感させる。

 さすが芭蕉である。

 死の直前の作。