令和3年9月28日(火)
昨日の続き。
ぴいと啼
尻声悲し
夜ルの鹿
◎ 同じ年の九月のこと、芭蕉は奈良に泊まる。
◎ 同じ年の九月のこと、芭蕉は奈良に泊まる。
八日の月が明るかったので、夜更けて、
猿沢の池を廻って、月を鑑賞する。
すると、鹿が鳴いた。
ぴいと細く押し出すような鳴き声が哀切
極まりない。
それを擬音として掬い採ったのが
この句。
その鳴き声を注意深く聞きながら、
その鳴き声を注意深く聞きながら、
鹿の夜歩きの寂しさを、己の心として
実感したのである。
九月六日に、大阪に行くが、
九月六日に、大阪に行くが、
病はだんだんに重くなり、
十月十二日には死去する。
そう思うと、このぴいと啼くという擬音が
そう思うと、このぴいと啼くという擬音が
芭蕉の聴いた哀切な音であったと思われて
粛然とする。
俳諧の天才芭蕉にも弱点があった。寿貞が死んだ時に、彼は自分の落ち度に罪の意識を覚えて、それが彼の死期を早めたともいえる。
俳諧の天才芭蕉にも弱点があった。寿貞が死んだ時に、彼は自分の落ち度に罪の意識を覚えて、それが彼の死期を早めたともいえる。