貢蕉の瞑想

青梅庵に住む貢蕉の日々のつぶやきです。

ぴいと啼く哀切の句!

2021-09-28 11:38:01 | 日記
令和3年9月28日(火)
 昨日の続き。
ぴいと啼 
   尻声悲し 
     夜ルの鹿 

◎ 同じ年の九月のこと、芭蕉は奈良に泊まる。
八日の月が明るかったので、夜更けて、
猿沢の池を廻って、月を鑑賞する。
 すると、鹿が鳴いた。
 ぴいと細く押し出すような鳴き声が哀切
極まりない。
 それを擬音として掬い採ったのが
この句。
 その鳴き声を注意深く聞きながら、
鹿の夜歩きの寂しさを、己の心として
実感したのである。
 九月六日に、大阪に行くが、
病はだんだんに重くなり、
十月十二日には死去する。
 そう思うと、このぴいと啼くという擬音が
芭蕉の聴いた哀切な音であったと思われて
粛然とする。
 俳諧の天才芭蕉にも弱点があった。寿貞が死んだ時に、彼は自分の落ち度に罪の意識を覚えて、それが彼の死期を早めたともいえる。