令和3年9月3日(金)
春雨や
蜂の巣つたふ
屋ねの漏(もり)
降り続く春雨に、屋根から漏れた雫が
蜂の巣を伝って落ちてくる、
の意。
元禄七年以前(1694)の作。
春雨の小止みなく降り続く伝統的なイメージを、
卑近な景の中に捉え、しかも、詩情を盛ることに
成功した佳吟。
◎ こちらの春雨は静かに降っている。
元禄七年の作。
この年の十月十二日に、芭蕉は死去するから、
この句は、故郷の伊賀上野に旅立つ前、深川で、
春を迎えて時の句であろう。
春雨に降り込められて所在なく外を眺めていると、
春雨に降り込められて所在なく外を眺めていると、
藁屋根の端に濡れてしょぼくれた蜂の巣があり、
屋根から雨雫が滴り落ちてくる。
この音なしの春雨は、どこか寂しい。
雨音も、川の波音も単調な繰り返しで、
雨音も、川の波音も単調な繰り返しで、
薄ら寒い、死の予感に満ちた句である。
これで、春の句はおしまいに!