令和3年10月19日(火)
鳴海に泊りて
星崎の
星崎の
闇を見よとや
啼千鳥
星崎の闇を見よと勧めるのか。
星崎の闇を見よと勧めるのか。
千鳥が盛んに鳴き立てる、
の意。
貞享四年(1697)の作。
「鳴海」・・・星崎を含む鳴海潟は、
貞享四年(1697)の作。
「鳴海」・・・星崎を含む鳴海潟は、
千鳥の名所。(『類船集』に、「千鳥→鳴海」)。
千鳥は闇夜のものとして詠むことも多く、
「星」と「闇」は類語。
十一月七日、安信亭で巻かれた歌仙
十一月七日、安信亭で巻かれた歌仙
(千鳥掛)の立句で、興じる気分が
軽快な調子になって現れる。
真蹟自画賛には斧斤の名所を
真蹟自画賛には斧斤の名所を
織り込んだ前書きが付される。
◎ 名古屋の鳴海町で、同地の門人知足の
◎ 名古屋の鳴海町で、同地の門人知足の
家に宿泊した。
星崎の闇の空を見よとでも私に言う
つもりか、哀切な鳴き声の千鳥がいた。
まるで闇を見よと誘うような鳴き声
であった。
闇には、古来の叙情とちがって、
闇には、古来の叙情とちがって、
哀切の響きがあって、千鳥に聞き惚れ
天地を包む闇の強い表現力に惹かれる
のであった。
闇の力を詠んだ秀句については
闇の力を詠んだ秀句については
『野ざらし紀行』の外宮の闇について
も述べたけれども、
芭蕉は夜空の星よりも星も見えぬ夜の
闇に寄宿の根源を認め、
闇の美の表現を大事にしている。