今夜はおでんである。
朝から下ごしらえ。
昨日お肉屋さんでいいすじ肉があったので、買っておいた。
大根は下茹でして冷凍へ、こんにゃくはたたいて下茹でして斜めに切り目を入れだし汁に浸けておく。
厚揚げとか練りものとかをスーパーに買いに行った。
精算が終わり台の上でトートバックに品物を移し変えた。 終わったと同時に、横からさっとて籠がとられた。
一瞬びっくりした。
買い物が終わった婦人が、取上げて自分の籠に重ねたのだ。
「あぁ! すみません!」
「ええよ ええよ」
年齢はひとまわりも違うだろうか、化粧っ気のない地味な婦人だった。
「すみません、私の方がしなきゃいけないですのに。 ごめんなさい、ありがとうございます」
「ええのよ、私な前にこんなとこで働いてて体が勝手に動いてしまうねん」
笑いながら言われた。
「いいことですね」
「いい?」 初めてニコっとされた。 余り表情のない方と思っていたから笑うといいお顔だ。
出たときにまた会ったので「有難うございました」また言ったら、笑顔、やはり笑顔は気持ちがいいなぁ。
自転車に荷物を積んで婦人は・・と見ると、歩いてもうはるか向こうの交差点にいた。
(歩くの早! すごいなぁ、 負けたわ!) 俄然足が丈夫なのだ。 私、大負け。
自転車の帰り道、私は笑顔になっている自分が分かった。。
田舎育ちゆえに自転車を漕ぐことに自信があったのに、最近若い人に追い越されること多くなり老いを感じていたが。
婦人はご年配である。 ひと周りは違う方。
負けたなぁ・・籠にも歩くことにも。 依然お仕事で身についた婦人の行動、分かる気がする。
なんか1人で婦人の元気や自分の老い、色んな事柄に笑えた。 と言うか、私とっても笑顔。
たったひとつの婦人の行為で交わした言葉、笑顔。
婦人の行為がなかったら、私普通に買い物を済ませ帰っていた。 ただ黙々と。
会った事でこんなにも気持ちが和んで軽い。
おでんが程よく煮えていい匂いが漂う。
今夜のおでんは格別美味しいよ、格別な笑顔の隠し味が・・入っているんですもの。